ツリース フィールド -3ページ目

nothing in my mind

ただ枯れた心には一筋の雨が降り落ちても潤わない。

もう心は何も吸い取らない。

風景は微動だにせずわたしを見ている。

わたしは雲を見ていたが、いつの間にか何を見ていたのか忘れ

わずかに残されていた思い出さえ心から消えてしまった。

すると静かな風は静かに砂を飛ばしはじめ

波は音を出して動き出し

世界は再び私と一つになる。

車窓

通り過ぎる電車の窓から見かけた昔の恋人は
忘れてしまいたい過去と共に座っている。
街に紛れた他人に過ぎず
ただ悲しいだけの存在で
わたしは誰も知らぬ荒海の果てに立ち
誰にも知られずわたしの中の誰かと戦う。
誰のためでもなく。


貫通

もしも突き抜ける光を遮っていたら
わたしの葉は葉脈を残し半透明に薄くなり
幹は空を忘れてグニャグニャと伸びる。
それに合わせて人も歪んでしまう。
歪んだ大工が歪んだ街を作り、
道はおろか、眼に映る全てが歪む。
やがて人の視線も歪み、何が正しいのか分からなくなり、
最終的には歪んだものこそが正しいとされる。
ふたたび光が差し込んだ頃には
もう誰も見向きしないだろう。

裏切りや悲しみや

裏切りや悲しみや
その他の夜の電灯をにじませるものが
私の両眼を埋めたて、心の洪水はとどめられた。
裂けたわたしの心からはきっとあなたの匂いがしてる。
だってわたしはあなただったわ。
でももうあなたはあなたではない。
わたしだけがあなた

苦しさ

苦しい。
誰かの吸って吐いた空気に魂が希釈される。
私の喉はつまっている。
砂糖のような甘い便利と、それに群れる蟻のようなのは人間。

(もはや便利は不便より不便である。)
水たまりの中に薄く浮かんだ曇り空。
足を浸けると黒く消えた。

山の木々が波打つ。
音のない風によって。
様々な鳥の言葉は曇り高き空に反響し、わたしの耳元で囀っている。
静かなるあなたは何も言わない。
何も変わらない。
何も生まれない。
ただゆっくりと消えた。

酔い

あなたになんか酔ってない。
わたしはわたし。
わたしはわたしに酔っていたい。
意識と記憶の間に覚えているのはずっと昔のおとぎ話。

裸足で駆け回った砂漠の上の恋。
月明かりはいつも同じ。

わたしはこうも変わり果てた。
だから月のない夜は酔っていたいのよ。

くやしさ

わたしは悔しい、悔しいのよ。
なぜなの?
分からない。
でもいいのよ、これで。
仕方ないのよ、すべて。
わたしはみじめ。
流れる時間にさえとり残されてしまったわ。
だから一緒に泣いてちょうだい。
それで気がすむわ。

発射台

ヘルメットはいいですか?
シートベルトは着けましたか?
雨は降りません。
嵐の囀りさえ聞こえません。
発射台は角度を下げていきます。
空の暗い方、暗い方へと向いていきます。
誰かに言い残した言葉はありますか?
あるとしたら200字以内にまとまりますか?
言いたいことを数えだしたらキリがありません。
しかし伝え無くてもどうという事はありません。
体の中身が臍の下に落ちます。
乾いた涎が唇の先へ流れていきます。
カウントダウンは10からでいいですか?
それともすぐに発射しますか?
今日は体調が良くありません。
気分も優れません。
とりあえず家に帰ります。
そしたらまた考えます。

ふくろうの詩

泣かないんじゃない。
喋らないんじゃない。
もう動かないからって、失われないわけじゃない。
わたしがあなたを知っていても。