ツリース フィールド -2ページ目

伝える

伝える事は容易じゃない。
伝わらない事は悪じゃない。
何もかも分かってしまったら、私は言葉を生み出す努力をしなくなり
ただののっぺらぼうな愛になってしまうから。

なにか

目で見えない何かが伝われば
あなたは私を知るだろう。
耳で聞こえない何かが伝われば
世界は丸くなるだろう。
丸くなった世界に立てるのは心も丸い人。

四角い人は滑り落ちる。

私は丸い世界の上で丸くなり

東にも西にも転がっていたい。

重力が縛るものは私でもなく、あなたでもない。

概念を超えれば愛は語れるさ。

何もいらない人は何でも知っている。

何でも知っているから何もいらないのさ。

枠の中に絵を描くのではない。

絵を描いてから枠を決めればいいさ。

春はまだ遠いから眠っていなよ。

それがいいよ。

この門の先は空です。
重い鋼鉄の扉を押し開けたら空です。
門をくぐるとあなたも空になります。
指先、爪先から徐々にあなたはあなたから遠退き
息は忘れ、目は見ることをせず、とっくのとうに音は消えているでしょう。
そして一切を残さずあなたは空になります。

ひと時の恋は道路に落ちている蝉。
夕暮れが澄んだ美しさを持つようになる頃に私は独りだろう。
街のシャープな輪郭の隙間からわずかな冬がこちらを見ている。
無言で。

細い目つきで冷ややかに。
時計の針はいつもより4分先に進み、時の流れは静かに遅れをとる。
空腹は早まる。
想いは薄まる。

影が伸びたら私の心は涙であふれるが

夜はなにごとも無かったかのように優しい。

朝になると時計の針はさらに4分進み、私は遅刻しそうになる。

伝えたい事

君に伝えたい事はたくさんあって、
本当はなにも無かった。
そう気づいた時に君はもういなかった。
だから君に伝えたかった事はずっと伝わらない侭、
僕はなにを伝えたかったのか分からない侭だ。
そしてもし君に会えたとしても
言葉を持たない草木よりも静かに
地面を破った黒い岩よりも頑なに

僕は何も伝えないだろう。

もし美しいと

もし美しいものを美しいと言えないならば
あなたの事を表現する言葉はこの世から消えてしまうだろう。
空は広さしか誇示できず、
山は険しさに他ならず、
花はその香りしか残らない。
気温の変化だけで四季が決まり、
愛は紙の上の嘘になってしまう。
ましてや文字は点の集まりになり、
人の体は蛋白質になり、
心はフワリと溶けてなくなるので
私はもう苦しまないだろう。
美しい故に

ドビッシーの秋

雨は小さく降っている。
秋の虫も鳴いてる。
ステレオからはClaude Debussyのピアノが響く。
波のたたない程の風が街を揺らす。
太陽が昇る時、車は動き出す。
人も動き出す。
ピアノは走り出す。
目が覚めたように朝がやってくる。

言葉と花

わたしの心の地に埋れた新芽はあなたの隣で花に育ち、それはあなたへ捧げる言葉となるでしょう。

浸透圧

わたしの体の浸透圧を通り過ぎて行った幾つかの愛は過去の水溜りになります。
そこで溺れるのは今のわたし。
息ができないほど苦しくはなく、
何も見えないほど濁ってはおらず、
冷たくはなく生ぬるい思い出に浸かり

ただ呆然と。

ego

取り残された世界にわたしはいる。
もう何も起きない。
何の変化も求められない。
そんな世界にいる。
明日は来るのか、昨日はあったのか。
一日の境目が曖昧だから時の流れすら現実のものと思えない。
太陽が昇ってもまぶしいだけ。
太陽が沈んだら夜が来るだけ。
花は短く死に茶色いかすになるが
美しかった姿は誰かを喜ばせる。
再びわたしに誰かを喜ばせる事ができるだろうか。
自我を持たずに。