NHK子会社社員の着服 -会社の責任は?
NHKの子会社で発注をペーパーカンパニーに行い2億円を社員
が着服する事件が起きました。発覚は税務調査だったようです。
会社のコメントは「社員の不正行為が明らかになったのは極めて
遺憾、厳正に対処する」ということですが、それだけの問題ではな
い気がします。
普通調達先についてはアカウント登録の際、担当者ではない第三
者が信用調査をすることになっています。実体のない会社かどう
かはそのあたりで本来は判明するはずです。工事にしても発注
自体は発注担当者かもしれませんが、完了の報告など現場担当
者やその上長の確認、承認がなければ請求書だけで自動的に支払
いをしてしまうような仕組みには大企業及びその子会社レベルで
あれば普通はなっていません。いわゆる内部統制が全然働いてい
ないずさんな組織体制がこのような不良社員をはびこらせる一つ
の原因だったはずです。したがって本来は「内部管理体制の見直
しを厳正に行うという」コメントがあってもおかしくないと思われます。
あと、この請求額は架空の費用ですので税務調査ですべて否認さ
れてこのNHK子会社には追徴課税なされるはずです。会社にとって
はダブルパンチなわけです。ただ、これは我々の受信料ですから
複雑な感じではあります。刑事告訴も大事ですがとりあえず民事
でできる限り回収することの方が大切ではないでしょうか?
味の素のアニュアルレポートを読んでみました
味の素が今年の日本IR協会から「IR大賞」ということで表彰され
ました。授賞理由としては「2015年に就任した西井孝明社長が積極
的なIRを継続し、投資家との対話を経営に活かしている点や、IR部
門の説明や資料が理解しやすいと定評がある点が挙げられる。企業
価値の源泉である概念「ASV(=Ajinomoto Group Shared Value)」と
経営戦略に一貫性を持たせた説明を行った点が評価された。」
ということです。
さっそくアニュアルレポートを拝見させていただきました。どこが通常
の企業のアニュアルレポートと違うかを考えてみると、いくつかポイン
トがありますが大きな違いは業績や将来展望の羅列ではなくストーリ
ー性があることだと思いました。企業の理念(存在理由、価値観)と
ビジョンを明確に定めそこから経営方針、戦略と一気通貫で非常に理解
しやすい形で書かれています。ESG(環境、社会的責任、ガバナンス)に
ついても羅列的でなく統合した形で記載されており、統合報告の流れ
に乗っているというのが良い点だと思われます。
往々にしてこの手の資料はIR室や経営企画部などが割り振りをし
て各部署に投げてまとめるといった手法をとっているという企業が
多いかと思います。おそらく味の素の場合は単にまとめたのではな
く、各部署の方が集まり経営陣も含めて侃々諤々の議論をおこなっ
たということが読んで感じられます。きちんと企業の魂がこもって
いるかどうかは意外に読み手はわかるものです。
北越紀州製紙の不思議な訴訟
北越紀州製紙が大王製紙の佐光社長ら13人の取締役に対し
88億円の損害賠償請求訴訟を起こしたようです。特に私は法律
の専門家ではないのですが、不思議な感じのする訴訟です。民法
709条の不法行為による損害賠償ですがその要件としては故意
または過失、損害の発生、行為と損害の因果関係、違法性が求
められるはずです。ここではっきりしているのは損害の発生だけ
で北越紀州は88億~126億の損害が株価下落によって生じた
と第3者評価機関から出ています。ただし、時期的にはCBの
発行が原因と推定できると思いますが、明確な因果関係がある
といえるのでしょうか。また、故意・過失並びに違法性の主張とし
てはいわゆる取締役の善管注意義務違反(会社法330条、民法6
44条)を主張しているようですが、今一つどこに違法性があるのか
はっきりしません。株価の下落で取締役が善管注意義務違反
とされるのであれば上場会社の取締役のなり手はいなくなります。
今までCBの有利発行による差し止め請求は見たことがありますが、
CB発行を巡る株価下落による損害賠償請求は見た覚えがありま
せん。この訴訟で何かしら勝つ見込みがあるのか不思議ですし、
何かしら隠れた戦術的意図があるのでしょうか?かなり大王製紙
や北越紀州製紙の株主総会でもお互い非難合戦を繰り広げている
ようですから単なる感情のもつれによる腹いせでないことを祈り
たいと思います。その場合は利益を得るのは弁護士の方だけで
すよね。


