顧問CFO川井隆史のブログ -57ページ目

アマゾン課税の強烈な副作用




日本をはじめ44カ国が合意した国際課税新ルールの中にいわ


ゆる「アマゾン課税」があります。たとえばアマゾンは日本で事業


をしていますが注文を受けているのは実は国外であり(サーバー


は米国内にある)、したがって原則取引の利益に対する税金は日本


で納めていません。理由は恒久的施設(PE)としてアマゾンが持っ


ている倉庫は当たらないので課税されないというのがざっくりと


した理由です。一回国税庁はアマゾンの倉庫はPEに当たるという


ことで140億円の追徴課税をしましたが日米相互協議で敗れて取


り消しにしています。


今回、国際課税新ルールでは倉庫もPEに当たるというルールを適用


しようとしており、アマゾンなどのインターネット業者をターゲットにし


ているといわれています。ところが今朝の日経でも伝えられている


ように単なる部品倉庫も単純に解釈すると課税対象になります。


やはり怖いのは新興国でその中でも中国はリスクが高いです。


中国の税制ですが自分の感覚だと地方政府により運用が異


なり、極論を言えばかなり恣意的な運用が目立ちます。


自分の経験だと以前PEの認定で中国は建設PEで突然元請だけ


でなく、下請けにもPEを適用し始めました。加えて下請けがPEに


対する法人税を納めない場合、元請に課税するなど、とても法治


国家とは思えないことをある地方政府がやりだして困ったことが


ありました。


国際課税ルールで課税逃れをしている企業に対する徴税を強化


するというのは理解できますが、一方で恣意的な課税で苦しむ


企業を助ける視点というのはないでしょうか?日本企業は良くい


えばあまり課税逃れをしていない、悪くいうと国際課税戦略がない


企業が多いので、このあたりの対策が脆弱と思われます。


なんとか日本政府にそのあたりがんばって欲しいものです。

企業統治指針 -東証が実施状況を発表




1月20日東証が企業統治指針の対応状況を発表しました。


これは指針に基づく報告書を昨年末までに提出した東証


1,2部の会社が対象になっています。日経などには全項目


実施している企業が12%と書いてありました。1年目としては


まずまずとは思いますが元資料を読むと1部上場企業は14%


完全実施ですが2部上場企業だとわずか1.8%になってしまい


ます。簡単に言うとやはり超大手以外の企業はそろりと導入と


いったあたりが見えます。 また、指針の原則に従わず説明を


加えている項目としては取締役会の実効性に対する分析、


評価、結果の開示でわずか36%の会社しか従っていません


でした。分析して取締役会の実効性が欠けているなどと開示


はできませんから、想像するにそれだけ形骸化している取締


役会が多いのではないかと思ってしまいます。意地悪く東芝


の企業統治報告書を見ましたが「9月30日の新体制発足から


半年後を目途に取締役会の実効性について分析評価いた


します」とのことでした。今は評価難しいですよね。


 次に低かったのが株主の電子議決権行使と招集通知の英


訳で44%のみ実施のようです。招集通知の英訳は外国人


投資家比率が低く、かつ会社側も興味がなければやらない


かもしれません。たとえば旭松食品などは以下のような理由


を上げていました「当社の株主構成では、外国人投資家は


極めて少なく、今のところ必要性は少ないと考えております。


今後、外国人投資家の構成が増加し重要となった場合は


検討を行ってまいります。」一方注目の社外取締役2人以上


は58%が導入すみでした。意外に進んでいる気がします。


  この報告書は簡単な分析ですが業界ごとにまとめてみると


面白いかもしれません。日本企業の横並び志向で、ある業界の


ある項目だけ実施がやたらと低かったりするかもしれません。


やや意地悪な見方かもしれませんが・・・

クックパッドの内紛に思う




クックパッドで創業者の佐野陽光氏が取締役の刷新を求める


株主提案をだし、経営の内紛とニュースになっていました。佐野


氏は自らの社長就任と新しい事業プランを求める提案を出して


いましたが、経営陣側は社外取締役を中心に特別委員会を開催


し佐野氏の提案を却下したため今回の事態になったようです。


㈱みんなのウェディングの買収など現経営陣は多角化を図って


いますが、佐野氏側は料理事業を中心として海外展開に注力


するべきだという意見を持っているようです。また、この特別委


員会の結論についても「公正中立を装った」と非難しています。


やや感情的に見える今回の措置です。


IFRSの新規適用などで単純比較はできませんが前期比で第3


四半期まで売上、営業利益ともに40%の増益で順調に推移し


ているように見えます。一方確かに度重なる買収で約250億の


総資産で約75億ののれんとバランスは悪くなっています。


今回のIFRSの新規適用ものれんの償却を計上しないためとい


う意図はミエミエかもしれません。ただし、ほぼ無借金で自己


資本比率は86%、財務状況を考えない無理な買収ではあり


ません。


単に財務数値を見ただけでは特に現行の経営陣の方針が悪い


と明らかに言える材料はありません。㈱みんなのウェディングの


買収にしても口コミサイトということで本業と関係のない事業の


多角化にとはいえないでしょう。ただ、「毎日の料理を楽しみに


することで、心からの笑顔を増やす」という企業理念からは違


った方向に進んでいるのは確かです。利益を上げることが至上


課題の上場企業であっても企業理念は大切にしていかなけれ


ばならないと個人的には思います。このあたりが崩れると短期


的には業績はよくなっても中長期的に企業は少しずつ衰退して


いく気がするのです