待ちびと
すうすう
と
寝息
いま
あたしが愛そうと思うひと
こうしていることほんとうにふしぎ
ちょっと前までしらない人だったのにね
やさしいあなた
あたし怯えた犬みたいだった
さびしくて死にそうだったのに
あったかい手を誰よりのぞんでたのに
はじめのころはずいぶんかみついてしまった
でも今思える
泣き虫でいられるのはあなたのおかげ
目がとけそうになるくらい泣くのもしょっちゅうなのに
我慢してわらってきたけど
ずっとひとりぼっちだった
わざと歩幅遅くしたり
うつむいてみせても
かならずあたしの顔をのぞきこむのがうれしいの
おねがい もっと時間がたって
慣れてしまっても変わらずいて
ほんとうはまだすこしこわい
だけど思うんだ
もしかしたらって
あなたかもしれないって
いますうすうと寝息をたてる
あなたをだいじにしたい
とおい
あたしの左目にはその右腕がいつもうつっていて
うんと背の高いあなたを見上げるのはいつものこと
気にもとめないこと
この前
ほんとうに久しぶりにそばで話をしたね
あたしたちこんなにも身長差があったなんてなあって
あらためて思ったんだ
言葉をかわさない瞬間さえ心地よかった昔がうそみたい
おねがい 何か言ってくれないと
沈黙に耐えられないで
すぐに別れたけど
ちっちゃいねってからかうときの笑顔がすきだった
ふくれてみせるのも心たのしかったの
ふたりでいることが自然であたりまえだった
いつのまにかそれはぎこちなくなっていて
あえてそこにふれずにいるあなたよりもうんと先に気づいていて
あたしは
どうすればいいかわからなかった
いまのあたしたちを
きっと友達とはよべないんだろうね
こうなることがわかってれば
もっと別のかたちえらべたかもしれない
そんなふうにおなじように思ってくれてるかどうかすら
もう
わからないくらいにとおい
傷といまとシアワセ
ずっと、ずっと前には
決してかなわないと思っていたこと
いとしいと、その手で言ってくれる
かわいいと、ことばにしてくれる
ただあたしを好きだと
向かってきてくれた人がここにいる
熱くあつい手
のぞめばいつまでも抱きしめていてくれる腕
黒く塗りつぶして
隅に追いやってればその存在を感じることも無いと
思い込んでた傷は
実はずっとあたしを縛っていて
化膿したり完治しないまま痛んでたこと気づいたんだ
あなたがいれば
ここにいてくれれば
傷にだって目を向けられそうだよ
怖くてたまらなかったけど
今なら向き合えそうだよ