花火
あの夜の花火
偽るの難しくなって
それでも押し込めた気持ちを
どうするか迷いながら
頑張ったお化粧とか
はしゃいでみせたこと
ほめてくれた浴衣
写真のふたりは身長差でなんとかおさまっててぎりぎり
友達らしく振舞えるように笑顔で
かなしい花火
あなたと見た最初で最後
今はもうそんな切ない痛みも伴わずに
しあわせに見上げていられるけど
あたしはどうして
今でも思い出してしまうんだろう
忘れてしまえないんだろう
すこしずつ秋
秋が歩いてくる
風のにおいでわかるの
秋は 好き
せつないから
春のせつなさには未来という前提があるけど
秋はただたださみしいだけ
胸がきゅうんとする
そして
あなたを決まって思い出すんだ
ひとりごと
つよがりを言おうとしたつもりはない
守りたいものがあの時のあたしにはあったんだ
今は言える
かなしかった
行かないで
と
言えたらよかったのかもしれない
でもそれで変わったかな
かきむしりたいくらいの胸のうちを
どこにも吐けなかった
とにかく何とか自分を丸め込んで
そうやってやり過ごそうとしてた
まるで嘘の笑顔を
いくつもいくつも塗り重ねてあたしは
あなたを見ていた
「どうして」
あなたにもあたしにも何度も思ったこと
いつもそばにいたのはあたしじゃない
でもあなたの中にあたしがいないのを
もうずいぶん前に気づいてしまったのも事実
もうちがうんだ
あたしたちはもう
離れた今もあなたを忘れてはいないけど
いつかは思い出さなくもなるんだろう
これでよかったと
言い聞かせるまでもないほどに
