12月28日付けのブログの内容の続きです。
⑪三島由紀夫『ぼくの映画をみる尺度』(潮出版社)
*当ブログ2024年12月1日に取りあげた書物。
⑫ヴォルフガング・シュトレーク『時間かせぎの資本主義』(鈴木直訳 みすず書房)
*著者の主張は比較的明解である。第2次世界大戦終了から1970年頃までの資本主義の発展を資本主義と民主主義のハネムーン時代と位置づけ,それがニクソンショックによって資本主義は自らの延命策を講じなければならなくなったとする。それがタイトルにある「時間かせぎ」ということであるが,「時間かせぎ」なのでやがてほころびが出てきて次の「時間かせぎ」に移行していくという経過をたどらざるをえなかった。具体的には70年代のインフレ政策,80年代の国債発行と金融市場の自由化,90年代におけるサブプライムローンに見られるような国家債務の家計債務への付けかえという3段階をたどったのであるが,この最後の「時間かせぎ」がリーマンショックに至ったのは記憶に新しいところである。その他,ヨーロッパの通貨同盟の問題点にも言及していて読み応えはあるのだが,肝心の「時間かせぎ」をしなければならない資本主義の根本的な問題が何かということには触れておらず,その点に疑問は残った。
⑬大木毅『独ソ戦』(岩波新書)
*当ブログ2024年2月12日に取りあげた書物。
⑭佐伯啓思『経済学の犯罪』(講談社現代新書)
*本書のタイトルにある「経済学」とは,新自由主義的な考えに基づく経済学であり,この経済学を批判するという点に本書の大きなテーマの一つがある。著者も述べていることだが,私が経済学部の学生であった1970年前後,経済学にはさまざまな潮流があった。大きく分ければ新古典派経済学とマルクス経済学であり,前者は「新古典派総合(アメリカケインジアン)」と「シカゴ学派」に分かれ,それ以外にも「制度学派」(アメリカ),「ケンブリッジ学派」(イギリス)などがあった。ところが,1970年代になると社会主義の矛盾の露呈とともにマルクス学派が衰退し,1980年頃にはケインズ学派の限界が指摘されることによって「シカゴ学派」,つまり現在の新自由主義的な思想に基づく経済学の一人勝ちになったのであるが,この学派の根本的な問題点を指摘しながら新たな方向性を模索しているのが本書である。前回の当ブログでも取りあげたが,保守派の論客であるこの著者の考え方にはとても惹きつけられるところがあり,当分追いかけることにした。
⑮平野啓一郎『日蝕・一月物語』(新潮文庫)
*芥川賞を受賞した『日蝕』は当時「文藝春秋」で読み始めたのだが,何となく難しくて途中で放棄した記憶がある。しかし,今回はなぜかかなり面白く読むことができた。最近,錬金術に少し関心があることがその原因かもしれないし,難しい漢字にルビが振ってあるのもとてもよい。
⑯舛添要一『プーチンの復讐と第三次世界大戦序曲』(インターナショナル新書)
*ウクライナ戦争の行方は予断を許さない状況にあるが,本書はウクライナ戦争を,プーチンという人物,ロシア史,ウクライナ戦争の流れという3つの観点から考察した書物である。著者は最後に「残念ながら,第三次世界大戦への扉が開かれつつあるように思う」と述べているが,この予言が実現しないことを望みたい。
⑰栗本慎一郎『経済人類学』(講談社学術文庫)
*1980年に出版された本の文庫版であるが,直すところがなかったと著者が言うように,古いところがまったく感じられない。逆に言えば,この分野の研究がほとんど進捗していないということにもなるだろう。そもそも,「経済とはなにか?」,「貨幣とはなにか?」について,商品経済だけを見ていても解明できるとは思われないのだ。
⑱桐野夏生『OUT 上・下』(講談社文庫)
*上下巻合わせると800ページ弱だが,ほぼ一気読み。とても面白かったが,ラストの展開はちょっとね…。
⑲チームK『私たちは売りたくない』(方丈社)
*10月1日からコロナワクチンの秋の定期接種が始まったが,レプリコンワクチンを巡っては様々な噂が飛び交ったようで「接種した人の入店お断り」などといった事態まで起きたようだ。この本はレプリコンワクチンを製造したMeiji Seikaファルマの現役社員(たち?)によるその危険性についての警告本であり,売れ筋の書ということもあって,とりあえず読んでみた。で,感想は? ウ~ンよく分からない。(笑) 著者はレプリコンワクチンだけではなく,mRNAワクチンそのものが有害だと述べており,そのポイントは,①mRNAを囲っているLNP(脂質ナノ粒子)が全身の器官で炎症を引きおこす,②mRNAワクチンが細胞内で産生させるスパイクタンパクに強い毒性がある,③人間の免疫システムがスパイクタンパクを作る自分の細胞をウィルスに感染した細胞と見なして攻撃する,の三点である。レプリコンワクチンは体内で自己増殖するのでさらに危険だということらしいのだが,結局,私のような素人にとっては「信じるか,信じないか」の選択にしかならないので,「ウ~ン」となるわけだが…。
⑳中野剛志『世界インフレと戦争』(幻冬舎新書)
渡辺努『世界インフレの謎』(講談社新書)
*我が国だけではなく世界的にも喫緊の経済問題はインフレ対策であろう。そのためにはその原因を明らかにすることが重要だが,それが論者によって様々であるところに問題の難しさが表れていると言えるだろう。中野はインフレにはディマンドプル・インフレとコストプッシュ・インフレという二種類があり,現在のインフレは後者であり,供給の減少にその原因があるとし,「恒久戦時経済」にその打開策を探る。渡辺の場合は新型コロナウィルスの出現に対する人々の行動変容にインフレの原因を求め,その行動変容を手がかりとして社会と経済をよりよい方向に変えていく変革の原動力にすべきだと主張する。両者の間に共通点はないが,私の理解では,中央銀行の金利操作に解決の糸口を求めていないという点は共通しているように思われる。


