監督:大友啓史
キャスト
妻夫木聡(グスク)
広瀬すず(ヤマコ)
窪田正孝(レイ)
永山瑛太(オン)
瀧内公美(チバナ)
栄莉弥(ウタ)
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戦後の沖縄を舞台に時代に抗う若者たちの姿を描き、第160回直木賞を受賞した真藤順丈の小説「宝島」を映画化。妻夫木聡が主演を務め、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら豪華キャストが共演。「るろうに剣心」シリーズの大友啓史監督がメガホンをとった。
1952年、米軍統治下の沖縄。米軍基地を襲撃して物資を奪い、困窮する住民らに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちがいた。そんな戦果アギヤーとして、いつか「でっかい戦果」をあげることを夢見るグスク、ヤマコ、レイの幼なじみの若者3人と、彼らにとって英雄的存在であるリーダー格のオン。しかしある夜の襲撃で“予定外の戦果”を手に入れたオンは、そのまま消息を絶ってしまう。残された3人はオンの影を追いながら生き、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、それぞれの道を歩んでいくが、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境で、思い通りにならない現実にやり場のない怒りを募らせていく。そして、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出す。
親友であるオンの痕跡を追う主人公グスクを妻夫木聡が演じ、恋人だったオンの帰りを信じて待ち続けるヤマコ役を広瀬すず、オンの弟であり消えた兄の影を追い求めてヤクザになるレイ役を窪田正孝が担当。そんな彼らの英雄的存在であるオン役を永山瑛太が務めた。(「映画.com」より)
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前回の記事で感想を書いた『ブラックバッグ』と同様、アマゾン・プライムで視聴するのに追加料金が必要だった本作が4月末に無料視聴できるようになったので早速鑑賞した。
今回は以前『ノマドランド』の感想で試みたことのある飛行機雲(「飛」と表記)と架空の対談相手(Aと表記)の対話形式で書いてみた。
A) 昨年劇場公開されて空前の大ヒットになった『国宝』なんだけど、観た?
飛)いや、観てないんだけど、機会があれば観たいとは思っている。でも、制作費に25億円をかけた大作『宝島』は最近配信で観たよ。
A) 『宝島』ね。ボクも観たよ。
飛)感想は?
A)メッセージはそれなりに分かるんだけど、理解し難いところもあって、イマイチだったな。キミは?
飛)文句なしの名作だね。
A)そうなんだ。その辺り聞かせてくれる?
飛)ウン。この映画、1952年から1970年のコザ騒動に至るまでの沖縄を描いた作品なんだけど、どうして1952年から始まっているか、分かる?
A)ウ~ン、そこは考えたことがなかったな。どうして?
飛)その前年に日本が連合国諸国とサンフランシスコ講和条約を締結したことは知ってるよね。
A)ウン。
飛)その結果何が起こった?
A)日本が主権を回復して独立した。
飛)そうだよね。でも、沖縄は日本から切り離されてアメリカの施政権下に置かれ日本国憲法の適用範囲外になったんだよね。
A)そうだね
飛)その条約が発効したのが1952年なんだ。そこで映画に戻ると、その1952年に何が起こったとされている?
A)オンの失踪。
飛)そうだよね。そこでこの映画についてのボクの解釈になるんだけど、オンは実は沖縄の人たちにとっての「希望」の象徴として描かれていると思うんだ。そのオンが突如として消えた。つまり沖縄にとっての希望の光の消滅だ。この映画が1952年から始まっていることの意味はそこにあるようにボクには思える。
A)なるほど。
飛)だからグスク、ヤマコ、レイは全く何の手がかりもないオンを探し続けるのさ。あれは単に行方不明になった人間を探しているのではない。自分たち沖縄の人間の希望の光を探しているんだ。
A)ネットを見ていると「全く手がかりもないのに何十年も探し続けることなどできるのだろうか。リアリティに欠けるのではないか?」という感想を書いている人もいたけど、そういうことではないんだね?
飛)ウン。その辺りの象徴性を読むかどうかでこの映画に対する評価が全く違ってくるように思う。
A)すると、終盤のオンの消息が判明したあとの解釈も違ってくるよね。
飛)そうだね。オンの失踪をサスペンス風に捉えると終盤の展開はグダグダに見えるだろうけど、その評価はボクには当たっていないように思う。
A) そうか。そう考えるとウタの存在を大きく扱っている意味もはっきりするね。
飛)ウン。ウタは希望の光としてのオンを継ぐ存在なのだ。そして、結局オンもウタも…。
A)でも、エンディングでグスクが海岸に座っていてオンの幻を見るよね。そこでオンが「さあ起きれ。そろそろ本当に生きるときがきた」というシーンはよかったよね。
飛)ウン。この映画は1970年のコザ騒動で終わっているが、沖縄はその2年後に日本国に返還される。でも、状況は現在でもあまり変わっていない。オンのあのセリフは沖縄の人たちだけじゃなく現在の我々ヤマトンチュに向けた監督のメッセージかもしれないね。
A)この映画の象徴的な部分は分かったけど、史実に即して描かれている言わば表の部分についてはどうなの?
飛)とてもよかった。沖縄の戦後の歴史については一応知識としては知っているけど、このように映画として描かれることによってそこに暮らしている人たちの苦悩とか怒りとかどうしようもない気持ちが現実感をもって伝わってくるよね。
A)印象に残っているシーンはある?
飛)いろいろあるけど、ヤマコたちが沖縄の本土復帰運動をしている現場にヤクザになったレイがやってきて次のように言うんだ。「デモで声あげるのが民主主義の基本だって?この島にそんなもんねぇよ。本物の民主主義はヤマトゥの奴らが独り占めしてこっちには回ってきてない」
A)あのシーンね、ボクも覚えているよ。窪田正孝の演技、よかったよね。
飛)ウン、窪田正孝だけじゃなくて、妻夫木聡や広瀬すずもこの映画にかける本気度が伝わってきたよ。俳優陣の熱演には感謝したいね。あと、ファンだから言っとくけど脇役で基地の町で暮らしていかざるをえない人の複雑な心境を表現していた瀧内公美の演技もね。