今年もダービーの季節がやってきた。私は年に2回、ダービーと有馬記念だけは馬券を買うことにしているが、今年のダービーはどのような結果になるだろうか。先週のオークスは今村聖奈騎手がジュウリョクピエロに騎乗し、JRA所属の女性騎手として、日本競馬史上初のGⅠ制覇およびクラシックレース初騎乗・初制覇という歴史的な大快挙を達成したが、ダービーでも何か驚くような結果が待っているのだろうか。

 

 さて、予想だが、現在(31日12時22分)の単勝オッズを5番人気まで見ると,以下のようである。

1. ⑰ロブチェン(3.0)   

2. ⑪リアライズシリウス(5.3)

3. ⑭ゴーイントゥスカイ(6.9)    

4. ⑬パントルナイーフ(9.7)     

5. ⑥コンジェスタス(11.5)

 

 出走馬18頭のうち10頭が前走「皐月賞」出走馬であり,上位人気馬を見ても3頭が「皐月賞」上位入線馬である。したがって,まず「皐月賞」の検討から始めるべきである。「皐月賞」の全着順は以下の通りである。★印のついている馬がダービー出走馬である。

  

皐月賞  中山競馬場 芝2000メートル

        馬名         タイム     通過順位     上がり   人気

1着     ★ロブチェン                1.56.5   1 1 1 1       34.2     1

2着  ★リアライズシリウス     1.56.7          2 2 2 2              34.4           4

3着  ★ライヒスアドラー         1.56.8         10 9 9 8             33.8           9

4着  ★アスクエジンバラ        1.56.8           5 5 3 3              34.2         12

5着  ★フォルテアンジェロ    1.57.0          17 16 15 13     33.4         10

6着  サウンドムーブ           1.57.0  8 6 7 6     34.1     17

7着  ★グリーンエナジー      1.57.0     13 14 13 10     33.6      2

8着  ラージアンサンブル  1.57.1  6 6 7 8     34.2     18

9着  サノノグレーター      1.57.3  13 13 13 10   33.9        14

10着 ★マテンロウゲイル       1.57.5         15 17 17 13      33.8         5

11着 ★バステール                     1.57.5        18 18 18 17      33.6         6

12着  ゾロアストロ                1.57.5         15 14 15 15      34.0      11

13着  カヴァレリッツォ       1.57.6          3 3 3 3               35.0       3

14着 ★パントルナイーフ       1.57.8         12 12 11 17       34.5      8

15着  アドマイヤクワッズ   1.57.9          3 3 3 3               35.4      7

16着  アクロフェイズ            1.58.0         6 6 6 6               35.2      16

17着  ロードフィレール       1.58.0          8 9 11 10         34.8      15

18着 ★アルトラムス                 1.58.8         10 9 9 15         35.8      13

 

【皐月賞回顧】

     前が有利な馬場で道中1、2番手を進んだ2頭が1,2着。1着のロブチェンは直線入り口辺りでリアライズシリウスに交わされそうになるも差しかえして3/4馬身差で1着。2着のリアライズシリウスも道中2番手からそのまま2着でゴール。1番人気と4番人気の決着になったが、ほぼ順当な結果であろう。3着のライヒスアドラーは中団から上がり3F33.8秒の足で追い上げての3着入線は前残りの競馬だっただけに立派。4着のアスクエジンバラは好位追走ながら3F34.2秒は馬場状態を考えれば平凡。5着のフォルテアンジェロだが、スタートで出遅れ、道中は後方からの競馬になる。上がり3F33.4秒はメンバー中最速で、直線では最内を通り、前の馬を捌くのにやや手間取りながら前が有利な馬場状態で5着に追い上げたのは評価できる。スタートでの出遅れが最後まで響いたと思われる。

 以上、1~5着の馬について見たが、1、2着のロブチェン、リアライズシリウスの能力が上位であることは認めつつも、馬場状態、展開に恵まれたことも考慮するべきだろう。その点を考えると、5着のフォルテアンジェロはスタートの不利をカバーして最速の上がりで5着に食い込んだことは大いに評価できるであろう。3着のライヒスアドラーもそういう意味では評価できるが、道中の位置取りを考えると、0.2秒の差はあるもののフォルテアンジェロを上位にとりたい。

 次に2番人気で7着に敗れたグリーンエナジーだが、4角では後方から外を回って差してくるもフォルテアンジェロほどの足は使えなかったということを考えれば後者を上位にとりたい。

 現在4番人気に支持されているパントルナイーフだが、手許の競馬新聞の評価を見ると、3~4角で下がってきた馬を捌けずに後退、直線も進路がなかったとのことだが、レースビデオを見ると3~4角では少し下がっているが、直線で進路がなかったと言ってもほぼ上位が確定した時点で後方にいて前に馬がいただけなのでそれは考慮外。順調に走っていても掲示板に載ることはなかったと判断したい。

 以上、皐月賞からはロブチェン、リアライズシリウスに加え、フォルテアンジェロの3頭を同等に評価、それよりも少し下位にライヒスアドラーを評価したい。

 

 現在3番人気のゴーイントゥスカイだが、1着になった前走「青葉賞」(東京 芝2400メートル)のレース結果は以下の通り。

タイム    通過順位     上がり   人気

2. 23.0           10 8 8 7        33.4         4         

 

 レースでは中団追走で直線で伸びるというパターン。レースぶりを見ると強そうだが、3/4馬身差2着のタイダルロックは「弥生賞」でダービー出走馬のバステール、ライヒスアドラーの後塵を拝しての4着(1着のバステールと0.3秒差)だったことを考えると、「青葉賞」のレースレベルに疑問がつく。データ上も「青葉賞」勝ち馬のダービーでの過去20年の成績は[0 3 1 14]なので馬券的には切ってもよいだろう。

 

 現在5番人気で3戦3勝、無敗でダービー挑戦のコンジェスタスだが、1着でゴールインした前走「京都新聞杯(京都 2200メートル)」のレース結果は以下の通り。

タイム    通過順位     上がり   人気 

2.09.9            6 7 9 7              35.3            6         

 

 普通に強い競馬。「共同通信杯」2着のベレシートを破ったところに価値がある。その「共同通信杯(東京 1800メートル)」だが、レース結果は以下の通り。

                  馬名             タイム    通過順位     上がり   人気

1着  リアライズシリウス           1.45.5     1 2 2              34.1             2      

2着  ベレシート                                1.45.5               8 8 8               33.0            4      

3着  ロブチェン                                1.45.5               4 4 4               33.4            3

 1着のリアライズシリウスと3着のロブチェンの間にベレシートが入線しているところを見ると、このレースのレベルの高さが分かる。ここから考えると、そのベレシートを破ったコンジェスタスの強さが推測される。「皐月賞」組以外ではこの馬を選びたい。ただ、「京都新聞杯」から中2週というレース間隔にはやや疑問も残るが…。

 

【結論】

 以上より、「皐月賞」組から⑰ロブチェン、⑪リアライズシリウス、⑮フォルテアンジェロ、「京都新聞杯」から⑥コンジェスタス、それに押さえとして①ライヒスアドラーをピックアップしたい。

 ただ、以上の馬にも懸念点はある。⑪リアライズシリウスは津村騎手が昨日のレースで落馬負傷したものの本日は騎乗するらしいが、怪我の程度がどの程度なのかが分からないという点。⑮フォルテアンジェロは前走後方からいい足を使ったが直線の長い東京競馬場でどの程度その足を発揮できるかという点。⑥コンジェスタスは上にも書いたように中2週というローテーション。①ライヒスアドラーは最内枠をどう乗り切るか。すると、比較的不安の少ないのは⑰ロブチェンになるが…。

 レースは大方の予想通り⑪リアライズシリウスが逃げて、それを2番手から⑰ロブチェンが追走する展開になると思うが、ペースはそれほど速くならないだろう。⑮フォルテアンジェロ、⑥コンジェスタスも好位で競馬を進めるだろう。直線の攻防は⑰ロブチェンと⑪リアライズシリウスのデッドヒートになったところを⑮フォルテアンジェロが強襲、遅れて⑥コンジェスタスも馬群を捌いて上がってくることになるのではないだろうか。1着⑮フォルテアンジェロ、2着⑰ロブチェン or ⑥コンジェスタス、3着⑪リアライズシリウス。①ライヒスアドラーはどこまで食い込めるか。

 

馬券は以下の通り。

●馬連

 6-15 (100.2)

    11-15 (52.4)

    15-17 (21.2)

●三連複

 1, 6, 11, 15, 17のボックス。

 

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【ダービーのレース結果】

1着~5着は以下の通り。

1着  ⑰ロブチェン

2着  ⑬パントルナイーフ

3着  ⑤バステール

4着  ⑭ゴーイントゥスカイ

5着  ②マテンロウゲイ

 

  予想で挙げた馬のなかで掲示板に載った馬は⑰ロブチェンのみで、予想した馬の成績は以下の通り。

7着  ⑪リアライズシリウス

8着  ①ライヒスアドラー

9着  ⑥コンジェスタス

12着      ⑮フォルテアンジェロ

 

  完敗です。

 昨日(5月27日)の朝日新聞夕刊に「100年前の『円本』ブーム その光と影」と題する記事が掲載された。署名入りの記事で書いたのは編集委員の柏崎歓氏である。

 

 「円本」とは1冊1円の全集だが、記事によると、現在、東京都目黒区にある日本近代文学館で「『円本』から読む日本近代文学」という特別展が開かれているようである。記事に即して円本が刊行された経緯を紹介すると、1923年に発生した関東大震災によって市中の本のかなりの部分が焼けてしまい、本の価格が急上昇したために本が手に入りにくくなった。そこで、1926年12月に出版社の「改造社」が『現代日本文学全集』の刊行を開始したのだが、それが円本の始まりで、他社も安価な全集で追随して激しい販売競争が始まり、大量注文に対応するための高性能の印刷機の導入など、出版業界に大きな変革がもたらされたとのことである。もっとも、この状況を批判するジャーナリストや出版人たちもいて、それが岩波文庫の創刊(1927年)につながったとのことである。

 

 

 円本ブームについては2025年の新書大賞に輝いた三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)のなかでも触れられていたので、それを参考にもう少し敷衍しておこう。

 朝日新聞の記事にあるように初の円本は『現代日本文学全集』だが、三宅によればこれは全巻一括予約制で、予約読者は23万人を越え、最終的には40~50万の予約に至ったとのことである。なぜこれほど売れたのかというと、当時の単行本の価格相場は2円~2円50銭で、『現代日本文学全集』には通常の単行本の4~5冊分が収録されていたそうなので、実質的には10分の1ほどの価格になる。確かに安い。

 次にどのような人たちが円本を買っていたかというと、おもに都市のサラリーマン層、つまり新中間層=学歴エリート階層で、主な購入動機は書斎のインテリアとして置いておくことであったようだ。三宅の言葉を借りれば「日本で最初の『積読(つんどく)』本」である。(笑) しかし、『現代日本文学全集』は結果的に全62巻、別冊1巻になったとのことで、当時の1円は現代の2000円ほどなので、全巻買うと現代の貨幣価値に換算して126,000円になる。これだけを見ると高い気もするが、なぜ当時のサラリーマンが円本全集を買おうという気になったかというと現代のサブスク、つまり月額払いだったらしく、このことが大きなカギで月給制の彼らは毎月の給料(ほぼ100円)から1円を支払っていたのである。

 

 朝日新聞の記事に戻ると、上に紹介したように、円本ブームには批判もあって、それが岩波文庫の創刊(1927年)につながったのであるが、記事によるとその経緯については岩波文庫の巻末にある「読書子に寄す 岩波文庫発刊に際して」に述べられているそうである。これは昭和2年(1927年)7月に岩波茂雄によって書かれたものだが、私はこの巻末文を読んだことがない。その理由は文字が小さすぎるということである。しかし、今回このブログ記事を書くに当たって手近にあった岩波文庫(E. H.カー『危機の二十年』)の巻末文を虫眼鏡を使って読んでみたので、その一部を引用すると以下のようである。

 

 「近時大量生産予約出版の流行を見る。その広告宣伝の狂態はしばらくおくも、後代にのこすと誇称する全集がその編集に万全の用意をなしたるか。千古の典籍の翻訳企図に敬虔の態度を欠かざりしか。さらに分売を許さず読者を緊縛して数十冊を強うるがごとき、はたしてその揚言する学芸解放のゆえんなりや。吾人は天下の名士の声に和してこれを推挙するに躊躇するものである。」

 

 明らかに円本に対する痛烈な批判であり、この一節に続いて岩波文庫創刊の決意が次のように述べられる。「このときにあたって、岩波書店は自己の責務のいよいよ重大なるを思い、従来の方針の徹底を期するため、すでに十数年以前より志して来た計画を慎重審議この際断然実行することにした。」

 この志については一定の敬意を払うものの、円本について上の引用に見られるほどの批判をする必要はないような気はするが…。また、「価格の低きを最主とする」という文言も見られるが、私の場合、最近の文庫本の価格の高さについてはもう少しなんとかならないだろうかという思いは強くある。因みに、上で参照した2011年初版発行の翻訳本E. H.カー『危機の二十年』の価格は「本体1400円+税」である。ウ~ン…。

 「木下貴司・瑠古堂書店」のYouTubeチャンネルが2日前に更新されて松本清張『高台の家』の紹介をしていたのだが、この小説も先日図書館で借りた『松本清張全集 39』に掲載されているので早速読んでみた。話の内容は松本清張の作品にしてはイマイチ面白くなかったのだが、この小説の中で人類学者のシロコゴロフの書いた『北方ツングースの社会構成』という書物の日本語翻訳からの引用があり、その引用部分に「支那音楽が少しづつ満州のツングースに浸透して来てゐる。」という記述があって「エッ!」と思ったのである。シロコゴロフという人類学者は実在の人物であり、『北方ツングースの社会構成』という書物も存在するのだが、私はその書物もシロコゴロフという人類学者もまったく知らなかった。私が「エッ!」と思ったのはそのことではなく、また上に引用した部分に「支那」という現在では差別語とされている表記が用いられていることについてでもなく、上に引用した部分に表記されている「少しづつ」という言葉遣いについてである。通常、一定量の事物について、それを均等に割り当てたりその分量だけを繰り返し行うことを表す場合には、例えば「一人ずつ」のように「ずつ」と表記するべきであって、「づつ」は誤表記ではないかと思ったからである。したがって、ここでも「少しずつ」と書くべきではないかと思って国語辞典を引いてみると「ずつ」は掲載されているものの「づつ」は不掲載である。

 

 

 ところが、全集でもその点についての注釈はまったくないので、AIに聞いてみたところAIの答えは以下のようであった。

 

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🎯結論:現代仮名遣いでは「ずつ」が正しい。

文化庁『公用文作成の要領』および『現代仮名遣い』では、 「ずつ」を用いると明記されています。

・一人ずつ 

・少しずつ 

・10個ずつ配る 

いずれも「ずつ」 が正しい。

 

🧭なぜ「ずつ」なのか(歴史的背景)

● もともとは「づつ」だった。 

歴史的仮名遣いでは「づつ」と書かれていました。 

語源は「つつ(接続助詞)」が濁音化したものとされます。

 

● しかし現代仮名遣いでは「ず」と「づ」を区別しない。

現代仮名遣いでは、 

・「ず」(/zu/) 

・「づ」(/dzu/) 

の音の区別が失われたため、原則として「ず」に統一されました。

そのため、歴史的には「づつ」でも、現代では「ずつ」に一本化されています。

 

📌 例外はあるのか?

  ありません。

  「ずつ」は例外なく「ずつ」です。

 

「つづく/つづける」など語源的に「つ+づ」が残る語とは異なり、「ずつ」は語源的理由による例外扱いにはなっていません。 (copilotより)

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 ネットで調べたところ、『北方ツングースの社会構成』の翻訳の刊行年は1941年なので、「支那」という言葉を使っているのは不思議ではないし、「ゐる」という表記からも分かるように、歴史的仮名遣いを用いていたために「づつ」と表記されているということであろう。

 最近、「木下貴司・瑠古堂書店」というタイトルのYouTubeチャンネルを時々視聴している。チャンネル登録者数はそれほど多くはないが、12分前後で松本清張の作品を紹介してくれるチャンネルで、私にとってはなかなか面白い。松本清張の作品なので推理小説が多く、当然のことだがネタバレはいっさいなし。先日も松本清張の『表象詩人』が紹介されていたので興味深く聞かせてもらったのだが、面白そうな小説だったので早速それが掲載されている『松本清張全集 39』を図書館に予約すると、ラッキーなことに翌日貸し出し可能の通知が来た。

 

 私はよく知らなかったのだが、もともと1972年に『週刊朝日』に連載されていた小説だそうである。40年の時を隔てて殺人事件の真相が解明されていく心理戦を中心とした物語なのだが、ストーリーの進展もさることながら、小説の中で外函付きの本が推理のポイントになっており、「そう言えば、最近外函の付いた本など見たことがないな~」と思って自分の書棚を見渡したところほんの何冊かしかその類の本がなかった。20年ほど前に若い頃に買ってずっと所蔵していた本の大半を古書店に売ったことがあって、そのときに外函付きの本も処分していたのである。

 

 

 アップした画像は大阪市立大学経済研究所編『経済学辞典』(岩波書店)で、大学の経済学部に入学して最初に買った本である。そういう経緯もあったので20年前に売らなかったのだろうが、その後この辞典を開いた記憶はない。奥付を見ると、「1965年9月21日初版」となっているが、現在ではこの辞典に掲載されている項目のほとんどはウィキペディアで検索すれば分かることだと思われるし、そもそも情報そのものも古くなっている項目も多いことだろう。その後、中央公論社から刊行された『世界の名著』シリーズも何冊か買った記憶があるが、あのシリーズも外函に入っていた。もっとも、読んだのは「アダム・スミス」だけだったが…。そういえば大阪市立大学もいつの間にか大阪府立大学と統合して大阪公立大学という名称になっているのだった。私は受験しなかったが、(今もそうだと思うが)当時は関西の受験生の間ではかなり人気のある大学だった。

 

 話が別の方向にそれたが、以前と比べて本の体裁は相当変化した。ハードカバーの本などほとんど見かけないし、まして外函付きの本など最近は見たこともない。本が売れないこの時代にそんなことをしたら本の製作にコストがかかりすぎるということがその理由だろうが、本を読むという行為そのものにそれほど価値を見いだすことができない人が激増しているのだろう。本以外にいろいろな情報源が存在する今の時代にコスパとかタイパとかを考えたらあまり効率のよい行為とは言えないが、読書は情報を得るためだけにあるのではなく、ゆっくりとしたペースで物を考えながら文字を追うという行為もなかなか楽しい「娯楽」だと思えるのだが…。

 

監督:中平康

キャスト

 桂木洋子(宮原紀久子)

 宮口精二(宮原雄一郎)

 伊藤孝雄(川島郁夫)

 

(物語)

 大学教授である宮原雄一郎の14歳年下の妻・紀久子は夫の教え子である大学生の川島郁夫と不倫関係にある。ある夜、紀久子は自宅の近くの林の中で郁夫の激しい抱擁に身をまかせていたのだが、そのとき二人はタクシー強盗事件を目撃する。被害者の運転手は無残な姿で殺害されるのだが、犯人が去ったあと二人は現場から逃げる。翌日、事件は大きく報道されるのだが、目撃者として警察に届ければ二人の不倫の恋も明るみに出てしまう…。

 

 吉村昭原作の短編を中平康監督で製作されたサスペンス映画で、殺人事件そのものではなく、それを目撃した二人の男女の苦悩を中心に展開される。ラストは「そうくるか」という感じだが、71分という短尺のせいもあって、やや単調な印象が拭えない。そこに至るまでのプロセスをもう少し丁寧に描くとか、あるいは郁夫の妹の英子の役回りがイマイチ活かされていないようにも思われるので、ラストの展開からさらにもう一つの展開があってもよかったのではないかとも思われる。その点サスペンスとしての物足りなさは残るが、不倫に踏み込んでしまった女の不安や情念をよく演じていた桂木洋子の演技はなかなかよかったと思う。

 

 1959年の日活のモノクロ映画で、宮口精二や伊藤孝雄は覚えているものの、桂木洋子はよく知らない女優なのだが、ネットで検索すると黛敏郎夫人で映画にも多数出演されていて『喜びも悲しみも幾年月』にも出演されている。ウ~ン、記憶にない…。