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希望が未来への力

どうしても自分を変えたい!

でも、変わらないんです……

どうしたらよいのか???

そんな方々にぴったりのブログです!!

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第13話 「二重の裏切り」

 

赤の広場地下の迷路のような通路を、三人は駆け抜けた。
背後からは黒狼派の銃声と叫び。
マヤの脇腹はズキズキと痛み、足がもつれそうになる。

男──セルゲイと名乗った──は、曲がり角ごとに迷いなく進み、やがて地下鉄の廃駅にたどり着く。
壁は剥がれ、古い線路の上に錆びた貨車が放置されている。

「ここなら一時的に安全だ。」
セルゲイはそう言ってケースを置き、息を整えた。

アレックスが問い詰める。
「“国家レベルの指令”ってどういう意味だ?これはただのマフィアの仕事じゃないのか?」
セルゲイは薄く笑う。
「マフィアは道具だ。本当の依頼人は──」

その瞬間、照明が一斉に落ちた。
闇の中で、マヤの首筋に冷たい感触。
「動くな。」背後からロシア語。

ライトが再び点くと、そこに立っていたのは、アレックスのかつての情報提供者、オルガだった。
しかしその手には拳銃、銃口はマヤのこめかみに当てられている。

「悪いわね、アレックス。あなたを泳がせてここまで導くのが任務だったの。」
マヤが息を呑む。
「あなた…最初から黒幕の一派だったの?」
オルガは首を横に振る。
「違う。私は二重スパイよ。だけど今は、雇い主に従うしかない。」

セルゲイが小さく舌打ち。
「雇い主?まさか──」
オルガの背後、暗闇から現れた影。
冷たい瞳、ゆっくりと歩み寄る巨漢の男。
その胸ポケットには、ロシア連邦保安庁(FSB)の徽章。

「君たち、やっと揃ったな。」
低く響く声。
「FlightControl:Ghostは我々が管理する。これ以上の介入は許さない。」

マヤはその瞬間、理解した。
──これは単なるマフィアの取引ではない。
国家機関が直接関与する、もっと巨大な作戦の一部だ。

廃駅の空気が、一気に張り詰める。
そして、次の瞬間。
銃声。

第12話 「赤の広場の地下で」

 

赤の広場の夜は、雪と観光客の少ない静けさに包まれていた。
聖ワシリイ大聖堂の前に立ったマヤは、負傷した脇腹を押さえながら、地下への隠し通路の位置をアレックスに示した。

「ヴォロジンが言ってた“本物”って、たぶんあそこよ。」
彼女が指差したのは、旧ソ連時代に使われていた地下物資搬入口。今は使われていないはずの鉄扉だ。

アレックスは工具で錠をこじ開け、二人は暗闇の階段を降りていく。
コンクリートの壁には古いプロパガンダのポスター、奥からは冷たい空気とわずかな油の匂いが漂っていた。

階段を降りきった瞬間、乾いた金属音が響く。
マヤの耳がピクリと動く。
「静かに…誰かいる。」

薄暗い通路の先、照明の下に立つ男──灰色の瞳。
港で逃げた“あの男”だ。
彼の背後には、古びた金属ケースとノートPCが置かれている。

男はゆっくりと口を開いた。
「君たちは遠くまで来たな。だが、そのUSBは“偽物”だ。」
アレックスが一歩前に出る。
「じゃあ、本物は?」
「ここだ。」

男がケースを開けると、中には“FlightControl:Ghost”と刻まれた小型の軍用チップが収められていた。
それは航空機の自動操縦を完全に乗っ取れる違法モジュールだった。

マヤが鋭く問い詰める。
「これが、ユナイテッドのシステムをダウンさせた原因?」
男は薄く笑い、首を横に振る。
「原因の一部だ。だが、もっと深い──国家レベルの指令が関わっている。」

その瞬間、背後の通路からロシア語の怒声と足音。
黒狼派の武装部隊がなだれ込んできた。
男は銃を抜きながら言う。
「今は殺し合う時じゃない。お前たちも撃たれたくなければ、俺について来い。」

一時的な共闘。
赤の広場の地下を駆け抜ける三人。
しかしマヤは、走りながらこう思っていた──この男こそ黒幕の一部かもしれない

第11話 「赤の広場の影」

 

氷点下のモスクワ、夜の街は凍りついた沈黙に包まれていた。
聖ワシリイ大聖堂のカラフルな屋根も、雪に覆われて鈍い光を放つ。
アレックスとマヤは、偽造パスポートでロシアに入国し、情報屋の案内で旧KGBの隠しビルへ向かっていた。

「こんな場所、Googleマップにも出てこないわね。」
マヤは肩をすくめながら、吐く息を白くさせた。

ビルの地下二階、窓もない部屋。
そこには、港で逃げたあの灰色の瞳の男の写真と、数名のロシア人高官の名前が壁一面に貼られていた。
中央の地図には、モスクワからウラジオストクまでの空港ネットワークの線が描かれている。

情報屋のヴォロジンが低い声で言う。
「VoryNetは二つの派閥がある。お前たちが追っているのは“白狼”の派閥だが、奴らの背後にはもう一つ、“黒狼”がいる。」

アレックスが眉をひそめる。
「両方がプーチンと繋がっている?」
「いや…片方は利用されているだけだ。もう片方は──信頼を得ている。」

会話の最中、外から雪を踏む重い足音が響く。
ヴォロジンが窓のないドアに目をやり、小声で呟く。
「もう嗅ぎつけられたか。」

銃声が部屋を裂き、壁の地図に穴が空く。
マヤは机を蹴飛ばし、即席の遮蔽物を作りながら叫んだ。
「データを持って逃げるのよ!」

ヴォロジンがUSBと地図をアレックスに投げ渡し、叫んだ。
「赤の広場の地下に、まだ“本物”が隠れている!」

その言葉を最後に、彼はドアの向こうからの銃弾を受け、崩れ落ちた。
アレックスとマヤは、凍える夜のモスクワの路地へ飛び出し、赤の広場の方向へ走る──。