3分読書、読んで頂き、ありがとうございます。

これまで書いた作品も、読んで頂ければと思います。

地球の選択 - 二つの未来 

では、「失敗魔法の恋文効果」を読んでみてください。

爆 笑爆笑爆笑


春風が窓を通り抜ける、魔法事務所の一角。新米魔法使いのソラは、重要な文書を整理している最中、禁断の魔法書から目を離せずにいました。その日、彼が試みたのは、文書の整理を効率化するためのシンプルな魔法だったのですが、緊張のあまり呪文を間違えてしまいます。「ピュアリフィケーショーノ!」本来ならば「整理整頓!」と唱えるべきところを、彼は恋の魔法を誤って唱えたのでした。




瞬間、事務所に積み上げられていた書類たちは一様に光り輝き始め、ソラが手に取った一枚一枚がラブレターへと変わっていきます。彼が恐る恐る開いた書類には、「君の瞳は星空のようだ」と書かれ、その下には赤いハートがちりばめられていました。


ソラはこれが何を意味するのか理解に苦しむ間もなく、上司のミラが書類の山に気づき部屋に入ってきます。彼女がランダムに一枚を手に取り、目を通した瞬間、その頬は朝焼けのように赤く染まりました。


ミラは顔を赤くしたままソラに問いかけました。「これは一体どういうこと?」声には戸惑いが混じり、手にしたラブレターを振りかざします。ソラは必死で言い訳を試みましたが、事態は予想外の方向へと転がり始めていました。




「す、すみません!呪文を間違えてしまって…」ソラが弁解する間にも、事務所の他のスタッフが次々と書類の異変に気づき始めます。普段は厳しい顔をしている会計士のタクミは、手にしたラブレターを読み上げながら、思わずニヤリと笑みを浮かべました。「これは…なかなかロマンチックじゃないか。」


すると、事務所は次第に笑い声に包まれ、緊張していた空気が一変。スタッフ一人ひとりが手にした「書類」から、不意打ちでの愛の言葉に心温まるような雰囲気に変わっていきました。書類の整理をしていたはずが、いつの間にかお互いの意外な一面を知る機会となり、職場には新たな交流の芽が生まれていました。


ソラは自分の失敗が予想外の効果をもたらしたことに安堵し、同時に職場に新しい風を吹き込んだことを少し誇りに思い始めていました。しかし、この魔法の効果がどれほど続くのか、彼にはまだ分かりませんでした。


魔法の効果は一晩中続き、翌朝、ソラが緊張して事務所に足を踏み入れると、意外な光景が彼を待っていました。スタッフたちはいつもと変わらぬ姿で業務に取り組んでおり、昨夜の騒動が嘘のように平穏な雰囲気が漂っていました。


しかし、何事もなかったかのように見える中で、ひとつだけ変わったことがありました。それは、スタッフ同士の間に生まれた親しみやすさと、時折交わされるやさしい笑顔です。魔法が解けたとはいえ、その魔法がもたらした絆はしっかりと残っていたのです。




ソラは、ミラに呼ばれて彼女のオフィスに向かいました。ドアを開けると、ミラはいつもの厳しい表情で彼を迎え入れました。「昨日は一体何だったのか、説明してもらおうか。」彼女の声には少しの怒りも交じっていましたが、目の端には笑みが浮かんでいました。


ソラは深く息を吸い込んでから、正直にすべてを話しました。魔法の失敗、事務所が一変したこと、そしてそれが意外なほどポジティブな変化をもたらしたことを。話を聞いたミラは一瞬ためらいましたが、最後には笑って許しを与え、ソラにもう一度チャンスを与えることを決めました。


「でも、次からはその呪文、控えておいてね。」とミラが付け加えると、ソラは安堵の笑顔を浮かべました。そして、事務所に戻ると、彼は新たな日常に笑顔で挑む決心を固めていました。間違いから生まれた一夜の魔法は、意外な形で彼の職場をより良い場所に変えてくれたのです。