3分読書、読んで頂き、ありがとうございます。

これまで書いた作品も、読んで頂ければと思います。

地球の選択 - 二つの未来 

では、「真紅の花」を読んでみてください。

爆 笑爆笑爆笑


春の訪れと共に、一際異彩を放つ赤い桜の木がある村がありました。この桜は数年に一度、通常の桜の花とは異なる真紅の花を咲かせることで知られています。しかし、その美しさに隠された恐ろしい真実を、村の大人たちは知っていました。それは、桜が赤く染まる年には、必ず村から誰かがいなくなるということです。



村に住む少年、涼太はその桜の木に強い憧れを抱いていました。彼は桜が咲くたびに、その美しさに魅了されていましたが、大人たちからはその桜の下へ近づくなと厳しく言われ続けていました。それでも涼太は、赤く染まる桜の木に秘められた謎を解き明かしたいという好奇心を抑えることができませんでした。


ある年の春、桜が再び赤く染まる時が来ました。村は静かな緊張感に包まれていました。涼太は、自分が何かを見落としているのではないかという不安に駆られながらも、桜の木の下へと向かいました。月明かりの下、真紅に染まる桜の木は、幻想的な美しさを放っていました。


涼太が桜の木の下に立った瞬間、不思議な気配を感じ取りました。まるで桜の木が彼に何かを伝えようとしているようでした。涼太は恐る恐る手を伸ばし、一輪の花びらを手に取りました。その花びらが触れた瞬間、彼の頭の中に古い村の記憶が鮮明によみがえりました。それは、数年に一度、村の誰かが神への供物として選ばれるという禁断の儀式に関する記憶でした。



その記憶が蘇った瞬間、涼太の心は恐怖で凍りつきました。過去に村から消えた人々は、実はこの神事のために犠牲にされていたのです。赤く染まる桜の木は、その犠牲者たちの魂を宿しており、彼らの血によって花は真紅に染まるのだということを、涼太は理解しました。


涼太は逃げようとしましたが、足が地面に根付いて動けないことに気がつきました。その時、長老たちの声が聞こえてきました。

「選ばれし者よ、お前が次なる供物だ。」

村の長老たちが涼太の周りに現れ、彼を囲み始めました。彼らの目は、赤く染まる桜の木と同じ色で輝いていました。


恐怖と絶望の中、涼太は最後の力を振り絞り、叫び声を上げました。その声が桜の木に届いた瞬間、不思議なことが起こりました。桜の木から放たれる光が涼太を包み込み、彼を守るように長老たちを押し返しました。そして、桜の木は静かに涼太に語りかけました。

「恐れるな、君は選ばれし者ではない。君の心の純粋さが、私たちを解放する鍵だったのだ。」


その言葉と共に、涼太の周りの世界は変わり始めました。桜の木は美しい白い花を咲かせ、長らく村を苦しめていた神事の呪縛が解けたのです。長老たちは消え、村には平和が戻りました。涼太は、真実を知り、そしてそれを乗り越える勇気を持ったことで、村の新たな伝説となりました。


桜の木の下で、涼太は深く息を吸い込みました。そして、失われた命への感謝と共に、新たな春を迎える準備を始めたのでした。