3分読書、読んで頂き、ありがとうございます。

これまで書いた作品も、読んで頂ければと思います。

地球の選択 - 二つの未来 

では、「逆さの日常」を読んでみてください。

爆 笑爆笑爆笑


深夜、閑散とした部屋で目を覚ました主人公、柊は一瞬で異変に気づいた。彼の世界は完全に逆さまになっていた。ベッドは天井に張り付き、ランプは床からぶら下がっている。一瞬、目が覚めたばかりの混乱かと思ったが、室内のすべてが逆さまになっているのだ。



最初は恐怖と混乱の中で身動き一つ取れなかった柊だが、やがて彼は新しい世界のルールに適応し始める。逆さまの日常では、柊は最初、日常の簡単な動作さえも一苦労だった。例えば、朝食を食べるとき、スプーンを持つ手と口が逆の位置にあるため、食べ物を口まで運ぶたびに奇妙な体勢を取らなければならなかった。また、外に出ると、人々が空中に浮かぶように天井を歩いている光景に最初は目を疑った。彼らはまるで宙に浮かんだ蜘蛛のように、自在に移動していた。


雨が上に落ちていく様子も不思議な光景の一つだった。雨滴が地面から雲へと吸い上げられるように上昇していく。晴れた日には、公園で逆さまの木から落ちる花びらが空へと舞い上がるのを見ることができた。それはまるで別の世界の幻想的な絵画のようだった。



逆さまの世界では、交通も全く異なっていた。車やバスは天井に設置された道を走り、交差点では上下左右から来る車両が絶え間なく交錯していた。最初はその交通システムに戸惑いながらも、柊は徐々に慣れていった。


ショッピングモールでは、店舗が天井に吊り下げられており、買い物客は空中を舞いながら商品を手に取る。柊はこの新しい買い物の仕方に魅了され、逆さまの世界の日常に少しずつ馴染んでいく。しかし、このすべてが柊にとっては一種の冒険であり、新しい発見の連続だった。


しかし、柊の心の奥底には常に、元の世界への憧れが残っていた。この逆さまの世界がいかに魅力的であっても、彼にとっては自分の居場所ではなかった。柊は元の世界へ戻る方法を模索し始める。図書館で古い書物を調べ、街の賢者と言われる人物に会いに行く。彼らは皆、異なる意見を持っていたが、柊はそれぞれの言葉からヒントを見つけ出そうとした。


そしてある日、柊は逆さまの世界の中心にあるという神秘的な場所にたどり着く。柊がその神秘的な場所へ足を踏み入れた瞬間、彼の周囲は突然、眩い光に包まれた。まるで時間と空間が歪むかのような不思議な感覚に襲われる。彼は目を閉じ、その場に立ち尽くした。光が徐々に弱まり、静寂が戻ってきたとき、柊は恐る恐る目を開けた。


目の前に広がっていたのは、彼がかつて知っていた世界、正しい向きの世界だった。道路には車が地面を走り、人々は足元の地面を歩いていた。雨は上ではなく、天から地へと落ちていく。柊は自分が立っている地面を見下ろし、自分の足がしっかりと地についていることを確認した。


彼は周囲を見渡し、自分がいる場所を認識しようとした。見慣れた建物、通り、公園が目に入ってくる。すべてが懐かしく、そして心地よかった。逆さまの世界で感じていた違和感や不安が、この瞬間、すべて消え去ったように感じられた。


しかし、柊の心には新たな感情が湧き上がってきた。逆さまの世界での経験が彼に大きな影響を与え、彼の価値観や考え方を変えてしまったのだ。彼は自分の世界に戻ってきた喜びを感じつつも、逆さまの世界で出会った人々や体験した冒険に心を引かれる。


柊は深く息を吸い込み、前を向いた。彼は元の世界に戻ってきたことを感謝しながらも、逆さまの世界で学んだことを生かして、これからの人生を歩んでいく決意を固めた。逆さまの世界が彼に与えたものは、決して忘れられない宝物となったのだった。