恥辱とカタルシス -23ページ目

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

ミステリーを読んでみたいと思いますよー。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

新たな短編を書くべく、中編から短編を読んでいきたいと思いますよ。主にミステリー。人が死なないミステリーみたいなのが書きたいなと思ってます。ですのでミステリーを。短編集がいいなと思って図書館を眺めていたんですが、適当なものがなくて手にしたのがこの本。

 

この間「エンターテイメントの作り方」を読んだ貴志祐介さんの「雀蜂」です。作中でご自身の著書を色々引用されてたんですが、どれもとても面白そうだったんですね。だから読んでみたいなとは思ってたんですが、どれもこれも長い。

 

一番短かったのがこの「雀蜂」。この作品を書くために、時間をかけて雀蜂の生態を取材したと書かれていました。うんうん、そりゃ読んでみようかな。中編というにはだいぶ長い作品ですが、「黒い家」も「悪の教典」も「天使の囀り」も長すぎるんだもん。

 

というわけで「雀蜂」なんですが、途中までは手に汗握りましたが、最終的などんでん返しがちょっと「……?」だったかな。

 

 

 

主人公は安斎という作家。彼が所有する雪深い山荘が舞台です。目覚めると安斎はワインがこぼれたバスローブを着て、山荘にひとりぼっちになっていました。共に滞在しているはずの妻の夢子がいない。

 

そして冬だというのに山荘にはスズメバチがぶんぶん飛び回っているのです。安斎はスズメバチの毒にアレルギーをもっています。過去に刺されて死にかけて、次刺されたら絶対に死ぬと思い込んでいる。

 

外部への連絡手段は絶たれ、密室と化した山荘。この山荘にスズメバチをけしかけたのは誰だ。そして襲い来るスズメバチから安斎は身を守ることが出来るのか……!

 

 

 

……というミステリーなんですね。角川ホラー文庫から出てるけど別にホラーじゃないです。半分以上はスズメバチとの攻防戦です。バルサン焚いたり。ヘアスプレーふりかけたり。焼酎とカルピスで罠仕掛けたり。なんかコメディタッチですらあって、ちょっと笑いながら読んじゃいました。

 

いや、命がかかってて必死なのは伝わってくるんですがね。私、田舎育ちなものでハチとか見慣れてるんですよね。母もハチのアレルギー持ってますが平気でハチ殺しますしね。この山荘のハチたちはものすごい数ですし、複数刺されたら命が危ないことは分かるんですが、なんか妙に可笑しかった。でもその違和感こそがトリックに繋がっていたんです。

 

安斎は、妻の夢子が不倫相手である昆虫学者と共謀して自分を殺害しようとしているのだと考えていました。だからなんとしても生き延びて妻と不倫相手に復讐してやろうとするんです。

 

あの手この手でスズメバチ相手に手を尽くす安斎さん。山荘に自分の死を確認するためにやってきたふたりを、オオスズメバチの巣窟である地下室に閉じ込めちゃう。ああよかったと思ってるとなんか指の先がちかっとする。見ると自分が叩き殺したスズメバチのお尻に手が当たってた。やっべ―俺死ぬじゃん!と思ったところでネタばらし。

 

 

 

このあたりから「ん?」ですよね。「ハチアレルギーの安斎という作家」が主人公だったはずなんですが、一人称で読者がずっと追っていた男は安斎じゃなかったんです。安斎に憧れ、焦がれるあまりに自分は安斎の分身だと思い込んでしまった男。山荘まで押しかけ安斎を殺しちゃってその辺の雪の下に埋めます。で、殺したとたんに自分を安斎だと思い込んじゃう。……ええー……。んなアホな。どんでん返しって言ってたけどそういう根本をひっくり返すアレって禁じ手ちゃうん?アリ?なんか騙された気分。

 

黒幕だと思っていた夢子さんが実はハチアレルギー。面白いネタだと思った安斎が、自分の話としてエッセイで発表したんですね。それを読んでたから犯人は「安斎はハチアレルギー」だと思い込んでいた。実際この山荘にハチのわなを仕掛けたのは安斎。安斎は夢子さんを殺して保険金をゲットしようと思っていたんですね。

 

安斎を殺して何食わぬ顔でリビングに戻ってきた犯人に、夢子は睡眠薬入りのワインを飲ませ、逃亡します。追っかけてこないように、電話線を切って車のカギをすべて手にして。犯人が地下室に押し込んだと思っていた夢子さんは全くの別人で出版社の人間でした。その人もここまで全然出てきてないし。

 

最終的に犯人は死んじゃってハッピーエンド。……なのか?なんかどうなの?読者が置いてけぼりにされた感じがします。あんまりすっきりしないなあ。

 

 

 

そんなわけで若干微妙だった「雀蜂」。ちょっと悔しいので機会を見て他の長編も読んでみたいと思います。貴志祐介さん、評判がいい作家さんだし。

 

大ファンだという方の記事も何回か読んだんですよね。すごく熱心だし。それだけのものがあるのなら、ぜひ読んでみたい。

 

というわけで次はミステリーの短編集を読みたいと思います。楽しみだわ。

 

ではでは、よい週末をー!

やると言ったらすぐやるよ。

こんばんは、渋谷です。



前回のオール讀物新人賞の受賞作を読んだよー。図書館でバックナンバー借りた。

したら池袋ウエストゲートパークの短編が載ってた。まだやってるんだ……。アイフォンとかSNSとか言ってた。1作目ではピッチ使ってたのに、人気シリーズってすごいねえ。てかマコト今いくつなの?

いや、時を超えて続くってすごいことですね。ですがここでは「母喰鳥」です。榛原浩さん。私の大好きなドロドロの女の生き様もので、すっごく面白かった!

 

 

 

この「母喰鳥」は時代小説で、「たか」という名前の大店の次女が主人公です。「母喰鳥」とはフクロウの別名。母親を殺して食べちゃうんだって。知らなかった。たかを妊娠している間、そんなフクロウの鳴き声が始終聞こえていたという母親。たかは美しい姉と比較されあまり可愛がられず育ちます。そして見合い話がまとまった時には好きな男の子供を身ごもっていました。男の名は佐吉。

 

たかは佐吉との子を、田舎に引っ込んでこっそり産んでから輿入れする話になっていたんですね。でもそこで運命のいたずら。その田舎には、たかの夫となる男が手を付けた女中も同じようにして身をひそめていました。妊婦二人。同じ日に子供を産んだ二人。たかは産み落としたその子を抱いて女中さとのもとへ忍ぶ。そして自分の子とさとが産んだ子を取り換えてしまうのです。あー、昼メロでこんなん見たっ。

 

連れ帰ったさとが産んだ子はさっそく死んじゃいます。でもさとは子の取り違えを知らず、たかと佐吉の子を我が子として育てます。名前は定吉。そして夫とたかの間には子ができなかったもんだから、定吉はたかの元に引き取られる。これ、たかの計算通りなんですね。

 

愛する佐吉との子を自分の手元で育てるために。いいねっ。この欲望まみれの感じ大好き!で、定吉はたかに似て情緒に問題がある少年に育ちます。動物虐待したり。なにかと刃物振り回したり。でも定吉に情が湧いちゃって仕方ないおたかさん、最終的にはどえらいラストが待ち受けているのです……!

 

 

 

はー、小説として面白かった「母喰鳥」。私の大好物。筆致も美しかった。なるほど受賞作。納得でした。

 

でもね、オール讀物本誌では選評も読めるんですね。候補5作のすべての選評。読んで……うーん、なるほど厳しい。私はとても面白いと感じたこの「母喰鳥」も、選者の皆さんからすると足りないところがあるのですねえ。

 

いわく、「タイトルで結末がもろバレ」「ネーミングセンスが安易」「主人公にリアリティがない」「進行が荒すぎる」などなどなど……。

 

んー、そっか。そうなのか。でもまあ文句をつけようと思えば何かしらはつくわな。2000篇の頂点に立った作品ですらそうなんだ。新人賞というのは、かくも厳しいものなのですねえ。

 

でもまあ応募しますが。まだどんな話にするか決まっていません。一応考えているテーマはあるのですが、本当にこれでいいのか。悩み中。ゆっくり考えてプロットを作りたいと思います。時間はまだあるもんね。

 

というわけで傾向と対策してみました。

 

ではまた!

今さら読んでみました。

こんにちは、渋谷です。



一世を風靡した石田衣良さんの「池袋ウェストゲートパーク」。ドラマが流行りましたねー。私は長瀬くんと同い年なのでよく覚えてます。って言っても1回も見た覚えはありません。多分その時間帯、仕事してたんだよね。

なぜ今この本を読んでみたかと言うと、オール讀物新人賞の受賞作なんですよね。この頃はオール讀物にも推理部門があったそうで、そちらの受賞作だそうです。

貴志さんに言われた通りに、過去受賞作を探したんだけど……原稿用紙100枚までの短編を対象にした賞だからか、本に纏まってるのがなかなか見つからなくて。この「池袋ウェストゲートパーク」は受賞作を1作目にした短編連作集なんですね。有名だし。てことは面白いんだろうと思って。

あと受賞作はオール讀物本誌のバックナンバーで探そうかな。で、「池袋ウェストゲートパーク」。受賞作である1話目は、めちゃめちゃ面白かった!



もう私がいちいち説明するまでもないのでしょうが、ざっくり言うとマコトという池袋の果物屋の息子が、ストリートで起こるいざこざをありとあらゆる手を使って収める話です。策略を巡らせたり盗聴器をしかけたりヤクザと渡り合ったり。

中でも1話目は、上質な中身の濃い青春ミステリーを、簡潔な文体を使ってぎゅっと短編に収めた傑作だと思います。ほんとーに面白かった。売春に暴力に虐待に暴れる変態に暗躍するヤクザ。暴くためにマコトが仕掛ける策略。私がこないだ書いた話とキーワードは丸かぶりですわ。中身は全然違いますけど。

とにかく私の好きなバイオレンス青春もの。面白かった。長編の中身を短編に圧縮してた。技術がいるんだろうなー。これぐらいやらなきゃ受賞出来ないのね。分かりました。頑張ります。しかし、しかーし。

2話目からはかなり退屈だったー。同じ風味のミステリーなんですけどね。面白くない訳じゃないんだけど退屈。なぜかと考えてみて、納得。

こないだ読んだ本で大沢在昌さんが言ってたんですよね。

「その時代の流行を書いた話は、熱を生むけど飽きられやすい。だから時代物は強い。古くなることがないから」

ははー……。なるほどねえ。そういうことなのか。「池袋ウェストゲートパーク」はもう20年ぐらいまえの話だもんねえ。PHSもカラーギャングもごりごりのヤクザももういない。ストリートにたむろするボーイズ、とかはっきり言ってダサい。今時の子はケンカなんかもせんだろうし。

だから話自体は面白いんだけど、なんか退屈なんだよね。シリーズは続いてますが、この先はもういいかな。1話目の熱を感じられたので満足です。あの熱が必要なんですね。うんうん。頑張るよ。他の受賞作も読もう。

というわけで初石田衣良さんでした!

ではまたー。

また読んだ。簡単に感想を書いときまーす。

 

こんばんは、渋谷です。眠いので短めで。

 

 

 

短編を書くので短編読まなきゃ、ということで、町田康さんの「権現の踊り子」を読みましたよ。収録作が

 

鶴の壺

矢細君のストーン

工夫の減さん

権現の踊り子

ふくみ笑い

逆水戸

 

となっております。

 

 

 

町田康さんは芥川賞をとった作家さんですが、もとはバンドやってた方なんですって。処女作で色々賞をとって作家デビュー。映画にもなった「パンク侍、切られて候」という作品だけは耳に残ってました。あとは全然知らない。

 

でも、川上未映子さんが面白くて、川上さんも元音楽やってて純文学作家になった方なんですね。だからこの方はどうかなと思って読んでみた町田さん。

 

いやー、もうロック。パンク。読者の理解なんか超えたところで炸裂するエネルギー。特に川端康成文学賞をとった「権現の踊り子」は無茶苦茶でした。「伊豆の踊子」みたいな題名に騙された。中身はダメ男がダメを加速させて狂った世界でおかしくなっていっちゃうような話です。「ふくみ笑い」も字面を読んだら意味の分からん狂人の大騒ぎ。感じるのは強大なエネルギー。読むのは面白いし一気で読めちゃうけど、これ書いてる方どういう気持ちで書いてるんだろ。

 

夜中に実際ちょっと狂いながら書いてんじゃないかと思う。純文学にはよく狂っちゃった主人公の視点で書かれる話がありますが、作家さんてほんと精神的に大丈夫なんですかねえ。金原ひとみさんとか。ちなみに嫌いじゃなくてまた一冊借りてきたから読みますけど。うん、あのエネルギーはマジですごい。マネできん。

 

「矢細君のストーン」「逆水戸」なんかはコメディです。矢細君という友達が自慢するのは「おじいちゃんがくれた」というどこにでもありそうな石。その名を「さざれ石」という。この石はすごいんだと熱弁をふるう矢細君ですが、さざれ石って「小さい石」って意味やからね。ひいきのボクサーの試合をテレビで応援しながら、「このさざれ石のパワーで、どうか勝利を!」とかやるんだけど、そんなもんにご利益があるはずもなく矢細君は「ばかあ!」っつって石を庭にぶん投げる。こう書くと何が面白いんだかわからないかと思いますが、私は読みながら結構お腹を抱えた。「逆水戸」もそう。

 

あの予定調和の水戸黄門から正義とルーティンを取り去っちゃった。わかる、この発想。なんでプリキュアがあんなに時間かけて変身してるのに敵はぼんやり待ってるんだ。そういう謎を取っ払って水戸黄門を1話書いてみましたよ、というお話です。町田さんは時代小説も書かれるんですね。もちろん、一筋縄ではない、独特な世界観の時代小説ですが。

 

 

 

そんなわけで暴力的なまでのエネルギーをまき散らしていった町田康さん。もうちょっと別の話も読んでみよ。まあ私にはここまで独特な世界は築けませんが。純文学ってホントに自由なんですねえ。

 

そういう世界もたくさん知りたい。というわけで寝よ。明日も本読もう。

 

というわけで、おやすみなさいー。

桜が咲いてますねー。

 

こんにちは、渋谷です。

 

 

子供連れて児童館行って、ついでに図書館寄って本借りてきました。で、またこれを書いている次第。「本を読むよ」と言ったら読んでしまう私の悪い癖。「熱しやすく冷めやすい、冷めたら一瞥だにしない」と言ったのは夫でした。おっしゃる通り、さすが私のこと、よくわかってるなあ。

 

新しいの書く前に、小説指南書が読んでおきたいなと思って、貴志祐介さんの「エンタテインメントの作り方」を借りてきました。「悪の教典」が恐ろしかった貴志さん。本は読んでないんですよね。映画で見たんだったと思う。伊藤英明さんでしたね。

 

びっくりするようなテクニックなんかは書いてません。書いてませんが、エンタメを書く上での心構えや下準備を事細かに教えて下さっています。以下、私のために記すエンタメを書くための心得。

 

 

 

 

1 アイデアは降ってこない。「もし○○が××だったら」という視点を忘れず心に浮かべばすぐにメモをとれ。

 

2 メモをとっただけで満足しない。定期的にまとめ直して「ネタ帳」の形にしておく。でないと振り返った時に何が何だか分からなくなる。

 

3 社会経験は必須。社会に出ずにリアルな職業描写はできない。

 

4 プロットは厳密でなくてもいいが、冒頭、クライマックス、結末は決めること。その際そこかしこに「補助ブースター」を仕込むこと。小さな謎、ということですね。

 

5 リアリティを放棄するな。現実とかけ離れすぎると読者は置いてきぼりを食う。論理がなければただの妄想。

 

6 キャラクターは作りこめ。声のイメージも重要。弱点のない登場人物の魅力は薄い。

 

7 とにかく「読みやすさ」を追求すること。漢字も多用すればいいってもんじゃない。改行も適切に。

 

8 そのネタは短編向きか長編向きか。よく吟味してからプロットを組み立てないと間延びする。プロットづくりに時間をかけろ。

 

9 推敲は必須。第一稿は下書きに近い。油絵のように塗り重ねていく、もしくはばっさり切り捨てることで小説としての形を成していく。

 

10 作中作の使い方。強い印象を残すことができる。でも使い過ぎも読者の視線を散逸させる。注意しつつもうまく使うべき。

 

11 読書をすること。映画を見たりマンガを読んだりエンタメに触れること。読まない、見ない人が書いた作品には深みがない。

 

12 新人賞を目指すなら過去受賞作は要チェック。過去問を解くようなもの。

 

 

 

……とのことでした。うーん、はい。わかりました。おっしゃる通りに。言われた通りにやりますよ。まあ今から仕事しにはいきませんけど。それ以外はよく頭に叩き込んで実践します。夫の映画鑑賞にも付き合います。

 

ほんと自分で言うのも何なんですが、私とっても素直なんですよ。自分がやりたいのにできないことをやってる人が教えてくれたら、全部まるごと実践するんです。たまに教えてくれる人がとんちんかんなこと言ってる場合もあるんですが、まるごと信じちゃう。妙なマルチにも騙されたことありますしねえ。変な男も近寄ってきますしねえ。騙されやすそうなんでしょうねえ。見た目はにこにこしてるタイプじゃないんですが、なんか騙しやすそうなオーラが出てるんだろうな。

 

いや、貴志さんは決して私を騙そうとしてるんじゃないんだが。そんなわけなので(どんなわけだ)、今回もがっつり信用して頑張ります!

 

まずは読書だ。さあ次は何読もうかなー。

 

ではまたっ!