ミステリーを読んでみたいと思いますよー。
こんばんは、渋谷です。
新たな短編を書くべく、中編から短編を読んでいきたいと思いますよ。主にミステリー。人が死なないミステリーみたいなのが書きたいなと思ってます。ですのでミステリーを。短編集がいいなと思って図書館を眺めていたんですが、適当なものがなくて手にしたのがこの本。
この間「エンターテイメントの作り方」を読んだ貴志祐介さんの「雀蜂」です。作中でご自身の著書を色々引用されてたんですが、どれもとても面白そうだったんですね。だから読んでみたいなとは思ってたんですが、どれもこれも長い。
一番短かったのがこの「雀蜂」。この作品を書くために、時間をかけて雀蜂の生態を取材したと書かれていました。うんうん、そりゃ読んでみようかな。中編というにはだいぶ長い作品ですが、「黒い家」も「悪の教典」も「天使の囀り」も長すぎるんだもん。
というわけで「雀蜂」なんですが、途中までは手に汗握りましたが、最終的などんでん返しがちょっと「……?」だったかな。
主人公は安斎という作家。彼が所有する雪深い山荘が舞台です。目覚めると安斎はワインがこぼれたバスローブを着て、山荘にひとりぼっちになっていました。共に滞在しているはずの妻の夢子がいない。
そして冬だというのに山荘にはスズメバチがぶんぶん飛び回っているのです。安斎はスズメバチの毒にアレルギーをもっています。過去に刺されて死にかけて、次刺されたら絶対に死ぬと思い込んでいる。
外部への連絡手段は絶たれ、密室と化した山荘。この山荘にスズメバチをけしかけたのは誰だ。そして襲い来るスズメバチから安斎は身を守ることが出来るのか……!
……というミステリーなんですね。角川ホラー文庫から出てるけど別にホラーじゃないです。半分以上はスズメバチとの攻防戦です。バルサン焚いたり。ヘアスプレーふりかけたり。焼酎とカルピスで罠仕掛けたり。なんかコメディタッチですらあって、ちょっと笑いながら読んじゃいました。
いや、命がかかってて必死なのは伝わってくるんですがね。私、田舎育ちなものでハチとか見慣れてるんですよね。母もハチのアレルギー持ってますが平気でハチ殺しますしね。この山荘のハチたちはものすごい数ですし、複数刺されたら命が危ないことは分かるんですが、なんか妙に可笑しかった。でもその違和感こそがトリックに繋がっていたんです。
安斎は、妻の夢子が不倫相手である昆虫学者と共謀して自分を殺害しようとしているのだと考えていました。だからなんとしても生き延びて妻と不倫相手に復讐してやろうとするんです。
あの手この手でスズメバチ相手に手を尽くす安斎さん。山荘に自分の死を確認するためにやってきたふたりを、オオスズメバチの巣窟である地下室に閉じ込めちゃう。ああよかったと思ってるとなんか指の先がちかっとする。見ると自分が叩き殺したスズメバチのお尻に手が当たってた。やっべ―俺死ぬじゃん!と思ったところでネタばらし。
このあたりから「ん?」ですよね。「ハチアレルギーの安斎という作家」が主人公だったはずなんですが、一人称で読者がずっと追っていた男は安斎じゃなかったんです。安斎に憧れ、焦がれるあまりに自分は安斎の分身だと思い込んでしまった男。山荘まで押しかけ安斎を殺しちゃってその辺の雪の下に埋めます。で、殺したとたんに自分を安斎だと思い込んじゃう。……ええー……。んなアホな。どんでん返しって言ってたけどそういう根本をひっくり返すアレって禁じ手ちゃうん?アリ?なんか騙された気分。
黒幕だと思っていた夢子さんが実はハチアレルギー。面白いネタだと思った安斎が、自分の話としてエッセイで発表したんですね。それを読んでたから犯人は「安斎はハチアレルギー」だと思い込んでいた。実際この山荘にハチのわなを仕掛けたのは安斎。安斎は夢子さんを殺して保険金をゲットしようと思っていたんですね。
安斎を殺して何食わぬ顔でリビングに戻ってきた犯人に、夢子は睡眠薬入りのワインを飲ませ、逃亡します。追っかけてこないように、電話線を切って車のカギをすべて手にして。犯人が地下室に押し込んだと思っていた夢子さんは全くの別人で出版社の人間でした。その人もここまで全然出てきてないし。
最終的に犯人は死んじゃってハッピーエンド。……なのか?なんかどうなの?読者が置いてけぼりにされた感じがします。あんまりすっきりしないなあ。
そんなわけで若干微妙だった「雀蜂」。ちょっと悔しいので機会を見て他の長編も読んでみたいと思います。貴志祐介さん、評判がいい作家さんだし。
大ファンだという方の記事も何回か読んだんですよね。すごく熱心だし。それだけのものがあるのなら、ぜひ読んでみたい。
というわけで次はミステリーの短編集を読みたいと思います。楽しみだわ。
ではでは、よい週末をー!