タイトル:ドリアン・グレイの肖像

著者:オスカー・ワイルド

訳者:福田恆存

発行:角川文庫

発行日:1962年4月30日

 

 

 

 

 

 

 

▼まさかの映画がある!!(アマプラ会員は是非!)

 

 

 

 

あらすじ 

「いつまでも若さを失わずにいるのがぼく自身で、老いこんでいくのがこの絵だったなら!」
ドリアン・グレイは、今の美しい外見が年老いて失われていくことに恐怖し、友人の描いた美しい自身の肖像画を前に思わずそう願いを口にした――――。
ドリアン・グレイを中心に巻き起こる、ドラマチックなホラーサスペンス物語。
翻弄される画家のバジル・ホールウォードに、ドリアンを堕落させるように振舞う快楽主義者のヘンリー卿。
ドリアン前に現れた美しい舞台女優との情熱的な恋とその悲劇的結末。
そしてその裏で、生身のドリアンの代わりに醜悪に変貌していく不思議な肖像画は一体――――。

今尚人気の高い、オスカー・ワイルド唯一の長編小説。

 

 

 

著者、オスカー・ワイルドといえば、多くの名言を残した有名な劇作家で、

本書の他に『サロメ』という戯曲が代表作として並べられる。

『楽観主義者はドーナツを見、悲観主義者はドーナツの穴を見る』という名言を語ったのも本書の著者だ。

 

本書はワイルドの唯一の長編小説で、1945年にアメリカで映画化もされている。

上で紹介したAmazonビデオもあるし、YouTubeでも検索すれば別物の映画も出てくる。

(YouTubeの方は、色々懸念があったため引用は控える)

いくつか種類があるようだ。

熱心なファンが多く、これまたYouTubeで検索していただければわかるが、

本書の解説動画もいくつか公開されており、今尚人気の高さを窺い知ることができる。

 

 

 

 

文体は非常に美しくロマンチック。まるでお芝居。

三人称視点で書かれているものの、ほとんどが主人公のドリアンに焦点を当てているため、他の登場人物の心理などを知ることは難しい。

そして作者はおそらく意図的に、主要人物以外の情報を削っている。

 

…正直な感想、人によって好みがはっきり分かれそうだなぁ、と思った。

あまりにロマンチックすぎる言い回しや、くどい美意識に関する論説。

本書前半まではストーリーのテンポ感もイマイチに感じた。

 

 

 

P149

「ぼくはいかなることに関しても、賛成、不賛成はきめない主義だ。

人生にたいしてそういうはっきりした態度を執るのはばかげている。

自分の道徳的偏見を吹聴するためにこの世に送られてきたわけでもあるまいし。

ぼくは俗人の言うことはぜんぜん意にも介しない、魅力的な人間のすることには嘴をいれない。

いちどこっちが惚れこんだ人間なら、その人間がどんな行為で自己を表現しようと、すべてぼくには好ましいのだ(省略)」

 

快楽主義者のヘンリー卿の言葉である。

1ページ、改行もなく丸々彼が話し続けることも多い。

ほとんどが尤もらしく話すだけで、屁理屈屋だなぁ、と思うのだが、ここの文は気に入った。

これほど潔い人生であれば、なかなか判断に困ることも少ないだろう。

惚れこむまでが大変だが。

 

私もどちらかといえば、このヘンリー卿の言葉に近い思想を持っている。

私が部下や友人に「任せる」と言ったからには、

任せるという判断に至った過程があり、信頼があり、

私は私自身の判断力を疑いたくはないので、けして文句は言わない。

尊敬する人が思わぬ判断に舵を切ったとて、きっと何かやむにやまれぬ事情があったのだろう、と思うしね……。

 

 

 

 

 

P339

「あなたは再婚するにはあまりに幸福だった。

女性が再婚するのは最初の夫が嫌いだったからであり、男性が再婚するのは最初の妻が大好きだったからにほかならない。

女性は運だめしをし、男性はすでに得た運を賭けるというわけだ」

(省略)

「女性は欠点ゆえに男を愛すのです。

男に欠点が十分あれば、男のどんなことでも女は許す――――(省略)」

 

こちらもヘンリー卿の言葉だが、なかなかに名言ではございませんか?

そんな気がする。

時代も国も違うのに、とても納得感があるのがすごい。

 

 

 

 

 

P358

ドリアン・グレイはそぼ降る雨のなかを波止場に沿っていそぐ。

かれの心はアドリアン・シングルトンと出遭ったことで奇妙なほど動かされていた。

いったい、あの男の若い命の破滅は、バジル・ホールウォードがひどい侮蔑をこめて言ったようにこのおれの責任なのだろうか。こう思いながらかれは脣を噛んだ。

しばらくのあいだ、かれの眼は悲しげな色をたたえた。

だが、つまるところ、それが自分にとってなんだというのだ?

他人のあやまちの重荷をわが肩に背負うには、人生はあまりに短すぎるのだ。

ひとはおのおの自分だけの人生を生き、みずからその代価を支払うのではないか。

 

バジルに「君の親しい友人は皆破滅していく。君が快楽に対する欲望を植え付けつけたからだ」(意訳)と言われ、

そして実際に昔親しかった友人と阿片窟で出遭ってしまったがために、やや落ち込み気味のドリアン。

 

P149のヘンリー卿ではないけども、

他人の甘言のせいで堕落したっていうのもどうなのよ?と思うけどね……。

「この白い粉やろうよ、へへへ、楽しい気分になれるぜ、へへへ」とか言われてやっちゃうような判断力しか持たなかったら、どのみちいずれ道を踏み外していたと思うけれど。

自己責任で生きようや……。

 

 

 

 

 

 

 

本当はサスペンスホラーらしく、刺激的な描写部分を引用したかったのだが、

そんなことをしたら初読の衝撃を味わい損ねるだろう。

ミステリー小説でトリックを明かすのはネタバレの中でも最上級に最悪だと思うのだが、

それと同じである。

最後に、オスカー・ワイルドのロマンチックな文をひとつ。

 

 

P11

アトリエの中には薔薇のゆたかな香りが満ち溢れ、かすかな夏の風が庭の木立を吹きぬけて、開けはなしの戸口から、ライラックの淀んだ匂いや、ピンク色に咲き誇るさんざしのひとしお細やかな香りを運んでくる。

ペルシャ製の鞍囊サドル・バッグでできた寝椅子に横たわったまま、いつものようにたて続けに何本もの巻煙草をふかしているヘンリー・ウォットン卿の眼には、蜂蜜の甘さと彩りとをもったきんぐさりの花のきらめきだけが映っていた。

 

めちゃくちゃ好き。なんてロマンチックで映像美な文を書くのだろう!

 

 

追記。

画家のバジル、ヘンリー卿、ドリアンの3人の関係性が面白い。

バジルは随分とドリアンにご執心で、

そのドリアンといえば、自分とは全く異なる悪ぶっているヘンリー卿に魅了され、

ヘンリー卿はずっとバジルとドリアンの友人であった。

著者オスカー・ワイルドは同性愛者だったらしく、

バジルの「ドリアンがヘンリー卿に取られた!」みたいな嫉妬がよく滲み出ていて(具体的な描写はなかったはずだが、そう思う何かはあった)非常に良かった。

 

 

 

TOP画は以下からお借りしました。

王室の部屋 - No: 207545|写真素材なら「写真AC」無料(フリー)ダウンロードOK (photo-ac.com)

物語の中でしか知らないけれど、貴族とか王族ってやっぱり人間関係大変そう。

 

 

 

後日の作品考察

結局、誰が魔法使いだったのか。 | 秋風の読書ブログ (ameblo.jp)

 

 

 

本書を気に入った方には以下もおすすめ!

 

まるで一つの舞台を見ているような、そんな表現が好きな人に。

【53】ロミオとジューリエット(ウィリアム・シェイクスピア)(訳:平井正穂) | 秋風の読書ブログ (ameblo.jp)

 

ロマンチックな文体が読みたいなら以下をおすすめ!

【98】ティファニーで朝食を(トルーマン・カポーティ)(訳:村上春樹) | 秋風の読書ブログ (ameblo.jp)

 

 

他にもおすすめの本があればコメントで教えてくださいね!

では素敵な読書ライフを!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、ここから大きく脱線だ!!

 

 

 

 

全然関係のない話、

画家つながりでおすすめしたいホラーゲームがあります!

とりあえず以下のPV見てください!

って思ったけどイマイチこのゲームの私が好きな部分が伝わらなさそうなので、

代わりにサントラ置いておきます。

音楽が、めちゃくちゃいいのよ!!

(27) Layers Of Fear - Official Soundtrack - YouTube

 

 

▼Steam

Steam:Layers of Fear (2016) (steampowered.com)

 

▼任天堂スイッチ(任天堂で出てるよ!!)

Layers of Fear: Legacy (レイヤーズ・オブ・フィアー:レガシー) ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)

 

 

自分でやるのはちょっと怖い・・・という人には、まずはゲーム実況見ていただきたい。

(で、やっぱりそのあとプレイしてほしい)

以下の方の実況がおすすめ!(勝手に宣伝すみません)

 

▼癒しのあいろん雑学ゲーム実況

(27) #1【PC日本語版】Layers of Fear:レイヤーズオブフィアー癒され実況プレイ【悪夢の家を徹底解説&考察】 - YouTube

他のゲームもそうだけど、いつも丁寧な解説&考察されている方です。

 

 

 

とてもとても好きなホラーゲームでね!

ラストの演出はイマイチだったけれど、こう・・・じわじわくるタイプの不気味さの表現が逸材。

シューティングに舵を切ったバイオハザードや、

突然の音や映像にびっくりさせるホラーゲームとは一線を画するじわじわ系ホラー!!

たまらんですね!!

そしてやっぱりサントラが最高にいい!!

是非プレイしてみてくださいね!!