タイトル:ティファニーで朝食を

著者:トルーマン・カポーティ

訳者:村上春樹

発行:新潮文庫

発行日:2008年12月1日

 

 

 

 

1958年に発表された本作は、今でも名を残す名作となった。

ただ―――皆さんは『ティファニーで朝食を』と聞いて、原作の小説を思い浮かべるだろうか?

それともオードリー・ヘップバーンが主演を務めた映画を思い浮かべるだろうか?

 

 

原作と映画は全然違うのね・・・

もちろん映画も古き良き時代のニューヨークの雰囲気があり、主演も主演だけに大変な名作であることは間違いない。

この頃がハリウッド映画の黄金期と呼ばれるだけあって、現代映画とはまた違った魅力を持つ作品も多い。

 

ただ小説版では、映画とは違う切り口で『名作』だな、と。

語り手の『僕』を通してみたホリー・ゴライトリー像は、やはりどうしても映像化では正しく表現しきれない。

『僕』が彼女に対して感じている一種の憧れは、映画で表現されたような『愛』なんてわかりやすいものではない。

もっと複雑で、神聖な感情だったと思う。信仰心に近いような。

そんな複雑な感情を、訳者である村上春樹氏が解説してくれて、腑に落ちた。

 

 

P276(解説)

主人公の「僕」がもう一度ホリーに会いたいと思いながら、そのことにもうひとつ積極的になれないのは、イノセンスの翼を失ってしまった彼女の姿を見ることを恐怖するからだし、おそらくそうなっているのではないかという予感があるからだ。

彼はおとぎ話の一部としてのホリーの姿を、永遠に脳裏に留めておきたいのだ。

それが彼にとってのひとつの救いになっているからだ。

 

 

 

 

 

P64

「かわいそうに名前だってないんだから。

名前がないのってけっこう不便なのよね。

でも私にはこの子に名前をつける権利はない。

ほんとに誰かにちゃんと飼われるまで、名前をもらうのは待ってもらうことになる。

この子とはある日、川べりで巡り会ったの。

私たちはお互い誰のものでもない、独立した人格なわけ。私もこの子も。

自分といろんなものごとがひとつになれる場所をみつけたとわかるまで、私はなんにも所有したくないの。

そういう場所がどこにあるのか、今のところまだわからない。

でもそれがどんなところだかはちゃんとわかっている」、彼女は微笑んで、猫を床に下ろした。

「それはティファニーみたいなところなの」と彼女は言った。

 

 

P116

「空を見上げている方が、空の上で暮らすよりはずっといいのよ。

空なんてただからっぽで、だだっ広いだけ。

そこは雷鳴がとどろき、ものごとが消え失せていく場所なの」

 

 

カポーティが詩的なのか、村上さんの訳だから詩的に聞こえるのかわからないけど、

とにかくロマンチックな表現がとても多くて素敵だった。

 

 

以下、気に入った表現の抜粋。

 

P136

風が波のように打ち寄せ、二人の顔にしぶきをあてた。

日だまりと影のあいだを、僕らは出たり入ったりした。

 

 

P221(ダイアモンドのギター)

(省略)彼が強く煙を吸い込むと、煙草の火が怒りを含んで赤く輝いた。

 

P231(ダイアモンドのギター)

ときどき夜中に、彼の手はギターに伸びる。

彼の指は弦の上をさまよい、それから世界の上をさまよう。

 

P257(クリスマスの思い出)

蠟燭はもう手に持っていられないくらい短くなっている。

火が消えると、星の光がそのあとを埋める。

星が窓に光の糸を紡いでいる。声なくキャロルを歌っているみたいに。

でもそれも、静かに穏やかに訪れる夜明けに消されていく。

 

 

リズミカルで歌うような表現。

 

本作には『ティファニーで朝食を』のほかに

『花盛りの家』『ダイアモンドのギター』『クリスマスの思い出』が収録されているが、

どれも文体が定まっておらず、同じ著者が書いているとは思えない雰囲気だった。

『花盛りの家』はまるで、1990年代のディズニーのアニメ映画を彷彿とさせる作品だった。

ミュージカルが似合いそうな作品。

 

 

とても名作でした!!!

最近の話題作をいち早く読むのもいいけれど、

やっぱり個人的には長く名作として残ってきた作品をきちんと味わいたいよねって思う。

 

【98+】ティファニーで朝食を(トルーマン・カポーティ)(訳:村上春樹) | 秋風の読書ブログ (ameblo.jp)

 

 

 

TOP画は以下からお借りしました!

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ニューヨークって、なんとなく秋っぽいイメージが強い。

いつか行ってみたいなぁ・・・

 

ニューヨークの気候の特徴は?季節ごとの気温や服装、天気予報も! | ロコタビ (locotabi.jp)