タイトル:ミッキーマウスの憂鬱
著者:松岡圭祐
発行:新潮文庫
発行日:2008年9月1日
あらすじ
東京ディズニーランドでアルバイトをすることになった21歳の若者。
友情、トラブル、恋愛……。様々な出来事を通じ、裏方の意義や誇りに目覚めていく。
秘密のベールに包まれた巨大テーマパークの<バックステージ>を描いた、史上初のディズニーランド青春成長小説。
登場人物たちと一緒に働いている気分を味わってみて下さい。
そこには、楽しく、爽快な青春のドラマがあるはずです。
この物語はフィクションです。
当たり前だろう、と思うようなこんな文言をこのブログに入れることになるとは……。
そう、フィクションなのだけれど、
「どこまでが本当で、どこからがフィクションなの?」という感じの内容ではあったので、
念のため。
それにしても―――
あらすじの文言、今回も裏表紙の紹介文をそのまま引用させてもらっているのだけれど…
どこかに恋愛要素あったっけ???
って感じでした。
なかったと思うけど…
P276(解説・藤田香織)
史上初のディズニーランド小説である本書は、ちょっと痛痒い青春小説であり、労働意欲を刺激されるお仕事小説でもあり、痛快なミステリー小説でもある、極上のエンターテインメント。
ミステリーかはさておいて、「痛痒い青春小説」という表現がぴったりの物語ではあった。
以下、あらためてあらすじを。
高校を卒業してフリーターとして働いてきた後藤大輔。
憧れのディズニーランドで、準社員として採用が決まり大喜び。
配属はヴィソーブ?なにをやる部署だろう?きっとやりがいがあるに違いない―――
そんな彼を待ち受けた<夢の国>での『現実』、それは美装部という着ぐるみを着つける裏方のお仕事だった。
ゲストの目に触れてはならない完全バックヤードでの肉体労働。
自分がゲストの時にはけして見ることのなかったキャストの疲れた顔。
準社員と正社員との間にある壁。
初日から、「自分も<夢の国>を支えるキャストの一員なんだから意見させろ!」ととんでもない「勘違い君」を発揮して、あちこちに口やら首やらを突っ込んでいく後藤の成長物語。
まじで、痛々しい主人公だった。
21歳ってこんなもんだっけ……?
仕事に夢と希望とやる気を持ち、自分の立場をわきまえず周りを引っ掻き回す新人。
学生や、社会人なりたての人だったら、きっと後藤のやる気に共感するかもしれない。
でももう私は新人ではないし、管理職的立場も経験したから、
読んでいて後藤の周りにいる登場人物に同情してしまった……。
後藤のこのやる気は実に迷惑だな、って。
P87
「へえ。なんだか夢のない話だね」
「夢があるのはオンステージ。バックステージにあるのは現実だけ」由美子は淡々といった。「すべては手作り。わたしたち準社員は、その底辺を支えてる」
フィクションの本書とは全然全くこれっぽっちも関係ないけども、
オリエンタルランドで採用されている出身大学ってこんな感じ。
【25卒】オリエンタルランドの採用大学と就職難易度まとめ - 就活の名人マガジン (vinc.co.jp)
本書はフィクションだけど(しつこいようだけれど繰り返す。本書はフィクションです)
ただの準社員が正社員に意見しようなんて、勘違いも甚だしい。
別にこれは大手企業だけでなく、他の会社でも言えることだと思う……。
そもそも負っている責任も、与えられている権利も給料も異なるのに、
同じ立場で意見しようだなんてとんだ思い違いでしょう。
ベンチャーより大手企業の方がその傾向は強いけどね。
で、こちらも全然関係ないのだけれど、
むかし、東京ディズニーランドでアルバイトしていた知り合いがいてさ。
アルバイトでもどこに所属しているかでヒエラルキーがあるみたいなこといってたけど、
ほんとう?
P183
(省略)
「なんていうか、入ったばかりのころを思いだすのよね。あの一生懸命だけど、不器用で、まだ夢から醒めてないところが」
「まだゲストに片足突っ込んでるからな。心配ない、そのうちこっち側の人間になるさ」
こっち側。それはつまり、夢から醒めきった人間たちの集まる世界。
夢は見るものではなく、与えるものだと割りきることのできた人々の集う裏舞台。
こういうレジャー施設のスタッフに限らず、イベント関係の仕事の人やアイドル、
今だとYouTuberもかな?夢と希望を与える、現実に生きる人たち。
いつもご苦労様です。ありがとうござます。見えない部分の苦労が忍ばれます。
以下、ちょっと脱線して仕事の愚痴。
↓↓↓
若いって、それだけで価値があるよな、と思う最近。
昔から仕事に情熱なんてなかったけれど、今の仕事は顕著にそう。
多分、客先常駐のエンジニアという働き方が私に合っていない……。
年末までいた会社でのトラブルで思ったけれど、
どれだけ私が成績を上げても、客先のプロパーには意見できるようにはならんのよ。
一緒に働いていても、結局は『派遣』という扱い。
それはそのまま正社員とアルバイト、みたいな関係で、
自社で正社員として雇われているのに、私はその待遇が不満でならない。
だから、自分の立場もわきまえずあれこれ口を出し首を突っ込む後藤に、ちょっと今の自分を重ねてしまって自己嫌悪よね……。
不満があるなら愚痴ってないで改善に乗り出すべき、というスタンスは
多分今後も私の中で変わることのない部分。
客先常駐の今の働き方は、客のシステムに改善の余地があっても意見ができないのよね。
それこそ「派遣は黙ってろ」って感じだし、プロパーは忙しすぎて聞く気力もなさそう。
かと言って、プロパーになってシステム改良してやろう、ってやってやる義理もない。
合わないからやめます、で契約終了して別の客先に行くだけ。
客先ガチャ。ライフスタイルと合うところを引くまでガチャる。
でも向こうから契約切られる危険はずっとある。馬鹿馬鹿しいわ。
という感じでね。
今いるところがバリバリの日系企業で合わね合わねぇ……
規則規則規則。二言目には「規則だから」。
目的と手段が入れ替わっていて、ぐるぐるぐるぐる遠回りして、石橋を叩き壊す勢いよ。
上司にいい顔するのに必死な人間ばかりで。
本書に登場する「調査部」と同じ。
びっくりしてしまったわ。
↑↑↑
というわけで、愚痴が長くて申し訳ないね。
読んでいる今の私の状態がこんな感じだから
お仕事に情熱燃やしてる系のお話読んでもろくな感想が出てこない。
ごめんなさいね、本当。
著者は以前に紹介した「万能鑑定士の事件簿」の松岡さんですね。
解説でも触れられていたけれど、取材力が半端じゃない。
物語を書くのに、リアリティをとても大切にしている。
甘くない現実があるからこそ、甘い夢が魅惑的。
逆もまた然り。
夢が甘いのは、現実が甘くないからだ。
<夢の国>が舞台の、甘くない現実を描いた本作。
主人公の真っ直ぐさと、それに影響され少しずつ変わっていく登場人物の心境変化が必見の作品でした。
ディズニーランドに行きたくなるお話だったね。
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それでは素敵な読書ライフを!