タイトル:都会まちのトム&ソーヤ1 YA!ENTERTAINMENT

著者:はやみねかおる

発行:講談社

発行日:2003年10月10日

 

 

 

 

 

 

あらすじ 

頭脳明晰で竜王グループ後継者の創也と、塾通いに追われるふつうの中学生の内人。

知力とサバイバル力を武器にして、都会を舞台に謎のゲームクリエイターに挑戦する、中学生コンビの新・冒険記!

 

 

 

『まちとむ』の愛称で親しまれているシリーズ。

知り合いに『まちとむ』の熱烈なファンがいて、

その方が熱心に語るので気がつけば手に取り読んでいた……。

 

対象年齢は小学校高学年から中学生くらいになるのだろうか。

所謂、児童書と呼ばれるものである。

2003年出版なら、ドンピシャで世代のはずなのだが……

やっぱりこの作品も読めてないのよね……

 

というわけで読みました。

 

 

 

なにこれ、めっちゃ面白い。(迫真)

 

 

 

当時子供の時に読みたかった。切実に。

 

 

 

 

主人公、内藤内人。ごく普通の中学二年生の男の子。

ある夜、クラスメイトの竜王創也が道中で突然姿を消すのを目撃する。

優等生の彼が、こんな夜遅くに学校から離れた場所で一体何をしていたのか?

彼は一体どこへ消えたのか?

翌日、創也を問い詰めるとどこかの鍵を渡される。

気がつけば、内人は創也主催のゲームに巻き込まれていた―――

そこから二人は友情(?)を育み、様々な事に首を突っ込んでいく。

それぞれが、それぞれの夢を叶えるために。

 

 

 

消えた、と聞いて魔法ファンタジー系かと思ったが、

わりと物語は現代ベースで進んでいく。

普通の、というにはあまりに逞しくサバイバル技術を駆使しながら困難に立ち向かっていく内人。

頭脳明晰で物知りな創也とのコンビは、まるでホームズとワトソンである。

 

 

 

単なる現代舞台の子供の冒険物なら、

私はきっとここまでこの作品を「面白い!」とは言わなかった。

この作品の特筆すべき箇所は、主人公・内人のサバイバル知識と応用だ。

 

 

 

以下、ネタバレあり。

 

 

 

 

 

 

 

 

創也からの挑戦で、内人は明かりのない建物内で4階を目指すことになる。

その中で、ポケットに入っていた埃やクリップ、鞄の中のMDプレイヤーの電池を用いて、内人は火を起こした。

それだけではなく、飲み終わった牛乳パックを帯状にして松明にしたのだ。

 

登場する持ち物、それこそこの時持っていた牛乳パックなどは不自然にならないよう、事前に作中で触れ伏線となっている。

それが、いたる所にたくさん。

 

身近なものを利用して火を起こす、というサバイバル知識。

利用する物や環境がご都合主義で出てきたように見えないように張られた伏線。

 

内人と創也の絶妙なコンビネーションも、もちろん本作の魅力なのだろうけど、

個人的には著者の知識応用とストーリー構成に感動したね。

 

 

 

というわけで、衝撃的なこの最初の「火を起こす」シーンを皮切りに、

下水道探検での、『木の皮を靴に巻き付けて滑り止め』や『ドライアイスの即席爆弾』、

『木の膨張を利用した脱出』に『ご飯粒と靴紐で作る尖ったもの』と、

第一巻のなかでびっくりするくらいたくさんの冒険技術が登場する。

 

 

もしこの作品に小学校中学年や高学年の時に出会えていたら、

私は絶対やんちゃしたね!!

本当に?実践してみたい!って思わせるだけのワクワクするストーリーになっている。

とにかく登場する雑学が面白い。

大人になった今読んでもワクワクして

「すげー!!!」って少年みたいに目を輝かせたので、

まだ読んだことない方、雑学系の物語が好きな方には是非読んでいただきたい。

 

 

 

 

 

 

P3

ミシシッピ川がないから、トム・ソーヤになれなかった……。

ぼくは、そう思っていた。

だけど、ぼくのまわりには宮川と徳川山があり、楽しい友達がいた。

だから、ぼくは、いつだって冒険していたんだ。

大人になったいまだって――。

もし、トム・ソーヤになりたかったら、きみのまわりを見わたしてごらん。

そうすれば、いろんなものが見えてくる。

そして気が付くはずだ。

ぼくたちは、いつだってトム・ソーヤだってことに。

 

冒頭、目次が始まる前のページに書かれたこの文。

…――実は、ちょっと後悔してることがある……。

 

……オリジナルの、マーク・トウェインが執筆したあの『トム・ソーヤーの冒険』を、

私は読んでいないのです……。

もし本書にオマージュが登場していても、私は気が付けない……。

2巻読む前に、オマージュ元確認してきます……。

(やはり名作は必修にすべきよね……)

 

 

 

 

 

P129

さて、どうやって、この状況を脱出しよう……。

となりを見ると、創也は楽しそうにほほえんでいる。すごい余裕だ。

「なにか、いい脱出方法を考えついたの?」

ぼくがきくと、返事は、

「ぜんぜん!」

なのに、どうして笑ってるんだろう。

(省略)

「きみといっしょなら、なんとかなりそうな気がするしね」

 

P152

「不安じゃないの?このままだと、ぼくたちは下水道の中でネズミのえさだよ」

「ネズミにおそわれそうになったときにもいったけど――」

創也が、ぼくの顔を見る。

「きみといっしょなら、なんとかなる気がするんだ」

……まったく。

ここまで無条件に信用されると、期待にこたえるしかないじゃないか。

 

頭脳明晰な創也は大体において解説役に回るし、内人を小馬鹿にしたりするけれど、

ピンチなときには全面的に信頼している。

 

いやぁ~~~!!!こういうバディもの、好きなんだよねぇ!!!

 

しかもちゃんと内人は期待に応え続けてるからね!!

いいコンビ!!

 

 

 

 

 

 

P209

「そうは思わないかい?たいせつなのは、知識と知識を結び、新たなことをする創造する力だよ」

 

読んでいるときはそう感じなかったけれど、もしかしたら創也は

「勉強ができる(知識がある)だけの自分」にコンプレックスを持っているのかもしれないね。

その点、内人は対称的で、持っている知識量は創也に劣るけれど、それの応用がすごい。

 

 

 

作中で、ひょんなことからクイズ番組にでることになるのだけれど、

そこで【Q.動物が冬眠するとき、どの方角に面した場所に、穴を掘って冬眠するでしょうか?】(P320)という問題があった。

答えは【A.北】らしいのだけど、びっくりだね。初耳でした。

雑学楽しい。軽くだけど裏どりもしてきた。一応、場所による、という補足をしておく。

 

_pdf (jst.go.jp)

↑このpdfリンク跳べるかな?

無理なら各自で検索してね。ヒグマの冬眠穴に関する論文です。

【北海道におけるヒグマの冬籠り穴について(犬飼哲夫・門崎允昭)】

(犬飼哲夫ってどこかで聞き覚えある気がする…と思ったら、

カラス関係の研究もしてたっぽい?)

 

 

 

 

最後に。

 

P118

「ぼくは、究極のゲームをつくりたいんだ」

そういう創也の目は真剣だ。

「四大ゲーム――いや、『ルージュ・レーブ』をいれた五大ゲームをこえるような、すごいゲームをつくるのが、ぼくの夢なんだ」

(省略)

ぼくは考える。

いつかぼくにも、創也のように、ほんとうにかなえたいって思う夢が見つかるんだろうか?

見つかったとき、創也のように努力ができるんだろうか?

ぼくは考える。考えて、一つの方法を見つけた。

「よし、決めた!」

きゅうに立ちあがったぼくを、創也がおどろいて見る。

「しばらく、創也の夢につきあうよ。そうしたら、ぼくの夢も見つかるかもしれないから」

そう、これは創也のためじゃない。

ぼくは、ぼくの夢のために、創也の冒険につきあおう。

「じゃあ、いこうか。六番めのゲームシックス・ゲームをつくるために――」

ぼくのさしだした手をつかんで、創也も立ちあがった。

 

このシーン、ぐっと来たね!!

長い引用になってしまったけれど、この台詞が語られている背景もとても好き。

いつもの砦の中ではなく、初めて創也が内人を誘った『ピクニック』で、

お目付け役もいない、真に二人だけの空間。

「笑わない?」ってあの自信家の創也が不安そうに前置きして語った、大切な本音なのだ。

 

 

これは……

このシリーズ、知人が熱烈なファンとして布教活動に勤しんでいる理由がわかったわ…。

めっちゃ面白い。

シリーズ読破しようじゃないか。

 

 

 

最新21巻は2024年3月28日発売!!

 

 

 

タイムリーだね!!

この記事書いてるの4月の頭!!

気合い入れて追いつくわ!!
 

 

 

 

TOP画は以下からお借りして色加工させていただきました~!

宝さがしイラスト - No: 1506667|無料イラスト・フリー素材なら「イラストAC」 (ac-illust.com)

 

 

 

 

 

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それでは素敵な読書ライフを!!