タイトル:十五少年漂流記
著者:ヴェルヌ
訳者:波多野完治
発行:新潮文庫
発行日:2014年(平成26年)11月18日
あらすじ
14歳のゴードンを頭に15人の少年たちだけを乗せたスクーナー船が、ふとしたことから荒海に出てしまった。
大嵐にもまれたすえ、船は、とある岸辺に座礁。
島か大陸の一部かもわからないこの土地で、彼らは生きるためにさまざまな工夫を重ね、自前の知識と勇気と好奇心とを使って冒険に満ちた生活を始める……。
"SFの祖"ジュール・ヴェルヌの手になる冒険小説の完訳決定版。
本記事にはネタバレが含まれます。
1888年にジュール・ヴェルヌによって書かれた作品。
有名な児童文学で、読んだことのある方も多いのではないだろうか。
私は初めて読んだ。
申し訳ないのだけれど、今回はちょっとネタバレなしに感想を書くのが難しいので、
未読の方でネタバレ嫌だわ~って人はブラウザバックしてくださいね。
15人の少年たちのお話。
夏休みの船旅が待ちきれず、前夜に船に乗りこんで寝ている間に、子どもたちだけでうっかり海に出てしまった。
そこから嵐にあって、どこかわからない島に漂着。
船も壊れて帰れずに、その島で生活しつつ脱出を考える、というロマン溢れる作品だ。
最年長が14歳。最年少が8歳。
船には食料や銃や弾薬などが多く積まれていたにせよ、
少年たちが無事に親元に帰るまでの2年の月日を、
子どもたちだけで、過ごしたわけだ。
狩りをして、勉強をして、政治をして。
年代とお国柄的な部分はあるだろうが、
子どもたちが普通に銃を撃ち、狩りをするってびっくりだし、
物語の後半、少年たちの島に悪人が流れ着き戦うのに、彼らは躊躇わず悪人に銃口向けるのね。
島に生息する動物を捌いて食べて、
植物から食べられるもの、薬に使えるもの、明かり取りの油に使えるもの、と見分け巧みに生き残っていく。
これはファンタジーだけども、登場する少年たちが一切弱音らしい弱音を吐かずにサバイバルしているのがあまりに現実離れしていて、
正直共感を得る、という部分では難しい作品ではあるかなと、個人的には思った。
無人島で子供たちだけで生活する、冒険する、というのは大変ロマンがあるし、
小学生の頃に読んでいたらまた違った感想を持ったに違いないけれど。
本書は、無人島で約2年間、少年たちがどのように生活してきたか、というのを中心に書かれた物語だ。
15人の少年たちにも派閥があり、喧嘩をして、仲違いをして、
でも共通の敵が現れ、窮地を救われ、心が一つになる。
そして共通の敵たる悪人を成敗して無事島から脱出、という王道ストーリー。
訳者の解説にもあったが、
どうやら原作者ヴェルヌ氏は、文体に難点があったよう。
正確な描写は美点ではあるが、どうも繰り返しの描写で読みにくい。
訳文でかなり緩和したとの話だが、うーん…なかなか難しいものである。
とはいえ、物語自体が優れていたからこそ、
100年以上経っても新訳として本が出版されたわけで、
読んでみる価値はあると思う。
物語は全体としては、『読み聞かせ調』で始まりと終わりが締められ、
この形式からも、子供時代に読みたかった、と思う作品だ。
それにしても…
やはり2年間、子どもたちだけでサバイバルして全員生存は無理があるな…。
児童文学だから仲間を殺すわけにもいかないけれど。
大人15人でも並みの日本人じゃ無人島生活できないんじゃないか?って思う。
銃だけでなく狩猟用の罠の設置もしなくてはならないし、
捕まえた鳥を捌くのだって、釣りだって、家づくりだって。
それとも現代人が脆弱になりすぎたのだろうか…。
(まぁ、ファンタジーだからね。わかってはいるけれど)
子どもがジャングルで40日生存 奇跡の生還から私たちが学ぶこと | 毎日新聞 (mainichi.jp)
丁度記事を書いているときに出てきたニュース。
すごいな、子どもの方が頑丈な説がある。
P204
ブリアンは、火を目がけて林の中を足を忍ばせて進んだ。
その時、ガサガサという音がして、前方の茂みの中を、大きな黒いものが矢のように走って行った。
ブリアンは立ち止まった。
と、同時に、恐ろしい野獣のうなり声が聞こえてきた。
黒い塊は大きなジャガーであったのだ。
続いて、「助けて――――」という悲鳴が起こった。
ドノバンの声である。
ブリアンが駆けつけると、地面に倒れたドノバンに、いまにもジャガーが飛びかかろうとしている。
ドノバンの叫びに眼をさましたウィルコックスが、鉄砲の引き金を引こうとかまえていた。
「撃つな――――」
ブリアンが鋭く叫ぶと、ジャガー目がけて飛びついた。
別行動していたドノバンを助けに、派閥の違うブリアンが果敢にジャガーに飛びついたシーン。
島をうろうろしている悪人に、銃声で位置が露呈するのを避けたかったが故の行動。
これをきっかけにブリアンとドノバンが仲直りして、少年たちがついに一枚岩となる布石となった重要なシーンである。
本書は冒険小説の金字塔だ。
子供のころに読みたかった~~~!!!
でもまぁ、そんなこと言ってもしょうがないのでね。
児童文学を知らない、というコンプレックスをこうやって少しずつ解消していきたい。
TOP画は以下からお借りしました!
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子ども向けに書かれた物語というのは、どれもこれも何となく大人の抱える社会問題を描いていて、切り口が鋭利というか、考えさせられるものが多い。