東信会『絆』通信
座りすぎとそのリスク
医療法人社団東信会
世田谷リウマチ膠原病クリニック新宿本院
新宿スカイビル健診テラス
東信よしだ内科・リウマチ科
世田谷リウマチ膠原病クリニック 祖師谷
吉田智彦
座る時間が長いのは健康に悪い?
•「座り仕事健康」で検索・・・例Active Heath Lab
•エコノミー症候群?足がむくむ?静脈瘤?腰痛?
日本は座っている時間が長い国
•調査対象者の2割が昼食・トイレ以外で「休憩を取らない」
(H28雪印メグミルク
「今どきの仕事スタイル調査」)
•コメント
お手洗いと昼休み以外デスクに張り付いている日がある・・
お昼もデスクでお弁当を食べることが多い・・
用がなければ座って仕事をしてないといけない雰囲気・・
座位時間と死亡率
•京都府立医科大学の研究
•Effect of Underlying Cardiometabolic Diseases on the Association Between Sedentary Time and All‐Cause Mortality in a Large Japanese Population: A Cohort Analysis Based on the J‐MICC Study(アメリカ心臓学会2021年6月掲載)
•6万人を超える日本人を平均7.7年間追跡した
•日中の座位時間と全死亡(全ての死因を含む)の関係を生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の有無と余暇時間の運動量に分けて検討した
結果
•仕事中の時間および余暇時間を含む全ての日中の座位時間が長いほど死亡と関係する。日中の座位時間が2時間増えるごとに、死亡リスクは15%増加する。
•高血圧、脂質異常症、糖尿病の有無に関わらず、日中の座位時間の長さに伴い死亡リスクが高くなる。
•高血圧、脂質異常症、糖尿病を合併していれば、さらに死亡リスクが高くなる。(脂質異常症では18%、高血圧では20%、糖尿病では27%の死亡リスク増加)
•余暇の身体活動量を増やしても、日中の座位時間が長ければ死亡率は高いままである。
•日中座位時間が7時間を超えると死亡率が明らかに上昇
座りすぎると消化管にも悪影響
•中国浙江大学医学部のJie Chen氏らのゲノム研究(2024年4月掲載)
•胃食道逆流症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、憩室症、クローン病、潰瘍性大腸炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝疾患、胆管炎、胆嚢炎、胆石症、急性膵炎、慢性膵炎、急性虫垂炎
•運動すると8疾患のリスク低下と関係していた。
(★座位時間で調整すると相関関係は弱くなった)
胃食道逆流症、胃潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、胆嚢炎、胆石症、急性膵炎、慢性膵炎
職場の工夫に関する研究
•英国Leicester大学のCharlotte L Edwardson氏ら(2018年10月BMJ掲載)
•勤務時間中に座ったまま仕事をする時間が長い事務職の人々(18~70歳で、週に3日以上フルタイムの6割以上の時間を同じデスクを使って働いている。自己申告で勤務時間の75%以上を座って作業している)を対象とした。
•介入群と非介入群に分けて検討した。
介入方法
•組織対策として、トラストのCEOと話し合い協力を取り付けた。CEOが定期的に送付する電子メールレターで、管理者グループにも介入に協力するように連絡してもらった
•環境対策として、高さが調節できる机を提供し、座っていても立っていても作業できるようにした。PCのモニターやキーボードも机といっしょに高さを変更できるようにした。使い方を指導すると共に、人間工学的に適切なセットの仕方も指導した。
•教育セミナーを行い、座り続けることがもたらす弊害と、規則的に立ち上がるメリットについて説明した。介入群の参加者には、勤務中に座っている時間を減らすための目標と行動プランを立ててもらった。さらに椅子の上にセットするDarma社の特殊なクッションを提供し、座り続けている時間をスマートフォンでモニターでき、あらかじめセットしておけば30分または45分毎に振動で知らせるようにした。
•介入継続中も参加者をサポートできるように、3カ月毎に直接面談または電話でコーチングセッションを行った。参加者の状況を話し合い、目標と行動プランを見直し、立っている時間を増やす妨げになる個人や職場の事情を改善するようにした。話し合いの後で、ベースラインとその後のデータを比較した結果を伝えて、プランの見直しに役立ててもらった
•非介入群は、健康評価時点で測定した体重や血圧などの計測結果のみが伝えられた。アドバイスやセミナーなしに、それまで通りの生活を続けてもらった。
これだけ頑張った成果は・・
•12カ月後には、就業日1日当たりの座っていた時間は、ベースラインに比べ介入群では-72.0分減少しており、対照群では+9.2分増加していた。
•介入群では、職場で1日に30分以上連続して座っている時間と、立っている時間が6カ月時点と12カ月時点の両方で有意に改善していた。
•6カ月時点と12カ月時点の業績、仕事に対する主体性、疲労からの回復、不安、QOLは介入群で良好だった。
身近な実践例
•正しい座り方
少し浅めに腰掛けて背もたれに寄りかからない。
腰の骨を心持ち前に突き出す感じで腰を伸ばす。
肩の力を抜く。
軽く顎を引く。
脊柱のS字カーブにそった姿勢をイメージする。
足を組まない
ストレッチ
環境づくり・組織づくり
•スポーツエールカンパニー(スポーツ庁認定。2018年度347社):机の高さを調節して立ちながらデスクワークができる昇降式デスクを導入している企業や、朝や昼休みなどに体操・ストレッチをするなどの運動機会の提供、階段の利用や徒歩・自転車通勤の推奨、あるいはスタンディングミーティングを実施する企業。
•職場のコミュニケーション活性化と健康への配慮をしている企業を表彰する。
•例)東京都江東区のサイショウ.エクスプレス株式会社
ドライバー向けにトラック運転席でもできるヨガを学ぶ機会を設ける
荷物搬入の待機時間に使えるヨガスタジオを倉庫の空きスペースに作る
•例)岡山県岡山市の株式会社両備システムソリューションズ
全従業員でのラジオ体操・おふぃえく(オフィスで行う簡易エクササイズ)の実施で、運動の習慣化とコミュニケーションの活性化を実現
「肩こり解消」の簡易手順書のリフレッシュコーナーへの掲示
社員提案でバランスボールでのデスクワークの導入