東信会『絆』通信
睡眠について
医療法人社団東信会
世田谷リウマチ膠原病クリニック新宿本院
新宿スカイビル健診テラス
東信よしだ内科・リウマチ科
世田谷リウマチ膠原病クリニック 祖師谷
吉田智彦
冬はなかなか起きられない・・
- 冬は日の出の時間が遅くなり、日照時間が短くなる
- 光の刺激で覚醒しやすくなるので、日の出が遅くなれば目覚める時間も遅くなる
- 明るい時間に覚醒、暗くなると眠る概日リズムは気分の調整に重要で認知能力にも関係している
概日リズム
- 催眠作用のあるメラトニンが関係している
- 脳内の視交叉上核が光刺激に反応してノルアドレナリンを分泌→松果体からメラトニン分泌が抑制される
- 日中にはメラトニン分泌が低く、夜間に分泌量が十数倍に増加する
- 昼夜の区別のない環境(窓のない密室内など)でも、体内時計によって日内変動がでる
- 強い照明(1000ルクス、コンビニの店内など)を浴びれば、夜間であってもメラトニン分泌量は低下する
- 体内時計と環境光の両方から調節を受けている
- メラトニン関連睡眠薬も使用されている。
正常な睡眠とは
- 健康な成人では平均7.5~8.5時間(個人差がある)
- REM睡眠、NonREM睡眠が70~120分おきに4~6サイクル繰り返される。
- REM睡眠:急速に眼球が動き、筋緊張は消失している。→頭は起きていて、体は眠っている。記憶の整理をしている。金縛り。夢を見る。一晩のうちの15~25%
- NonREM睡眠:急速眼球運動は消失。筋緊張みられる。→頭は休んでいて、体は起きている。寝返りができる。
睡眠の機能
- 活動に適さない時間帯に無駄なエネルギーを使わないようにする
- 脳が活動しすぎないように積極的に脳を休ませる→睡眠不足では集中力、記憶力、思考力が低下する
- 脳下垂体から成長ホルモンが分泌される→子供では身体の成長、大人では組織の損傷を回復する
- 免疫物質が睡眠を促進、睡眠自体も免疫物質の分泌を促進する
日本の睡眠時間
睡眠にまつわるエピソード
日本人の1/3が6-7時間未満
睡眠時間6時間未満の心身への影響
・心身の不健康と有意に関連
Ohtsu T et al; Acta Med Okayama.2012; 66(1):41-51)
・有意に風邪にかかりやすい
(Prather AA, et al. Sleep.2015 Sep 1;38(9):1353-9)
・睡眠時間6~8時間では自覚的ストレスが低い
(杉田ほか Prog Med 35;53~57.2015)
・平日の残業時間3時間以上で睡眠時間6時間未満と関連がある
( Ohtsu T et al;J Occup Health.2013 ; 55(4):307-11 )
・時間外労働が1日5時間を超えると睡眠時間は著明に短縮する
(平成20年度 厚生労働科学研究報告書)
対策
睡眠時間1時間をどう捻出するか・・
・深夜残業をやめる
ノー残業デーだけでも早く帰る、昼休みに短時間の仮眠をとる(仮眠前にカフェインも摂取すると効果増大)
・寝る前のスマホ・PCをやめる
寝床でのスマホ・タブレット使用は睡眠不足、睡眠の質の低下、日中の過度の眠気を誘発する
(Carter B,et al: JAMA Pediatr, 2016Dec 1:170(12):1202-1208)
ブルーライトを浴びない
治療対象となる不眠
・「寝つきが悪い、途中で起きる、熟眠感がない」週3回以上
・一か月以上続く
・生活に支障をきたす
→精神科、心療内科を受診励行
いきなり受診するのはハードルが高い・・
いきなり薬をのむのは怖い・・・
→まずはワークブックもおすすめ
『自分でできる「不眠」克服ワークブック』
不眠関連疾患
・不眠症
原因はストレス、精神疾患、神経疾患、アルコール、薬剤の副作⽤など多岐。うつ病など精神疾患との関連も濃厚。
・睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に10秒以上の呼吸停⽌を繰り返す。酸素飽和度が低下するため、⽇中の眠気や倦怠感などが⽣じる。また、酸素飽和度の低下は⼼臓や⾎管に負担がかかり、脳卒中、⼼筋梗塞など重⼤な病気のリスクになる。
・ナルコレプシー
充分な睡眠をとったにも関わらず昼間に強い眠気が襲い、意思とは関係なく寝てしまう
・周期性四肢運動障害
瞬間的な筋⾁の痙攣が起こり、寝付けない。鉄が不⾜する貧⾎や腎不全などの病気に伴って出現することが多く、 鉄不⾜によりドパミン産⽣が妨げられることが⼀因
眠れない時の12の指針
・睡眠時間に縛られない、日中眠くなければ大丈夫
・刺激物は避ける、寝る前には自分なりのリラックス法を
(就寝前4時間のカフェイン、就寝前1時間の喫煙は避ける)
・眠くなってからベッドへ。就床時刻にこだわらない
・同じ時刻に毎日起床
・目が覚めたら光を浴びる
・3食規則正しく、規則的な運動
・昼寝は15時前に20-30分
・眠れない時は積極的に遅寝、早起きに
・激しいいびき、足のぴくつき、ムズムズ感は治療が必要
・十分寝てもまだ眠いときは治療が必要
・寝酒はむしろ睡眠を浅くする
・睡眠薬は医師の指示に従って使えば安全。ただしお酒との併用は禁止