ショスタコーヴィチの時代 ㊶
最近リリースされた新譜から ㊳
ショスタコーヴィチが1952年に作曲した子供のためのピアノ曲集。ちょうど最近新譜としてリリースされたので、さっそく聴いてみました。全曲は聴いたことが無かったので。作曲されたのは、交響曲第10番の前年になります。アルバムは、アンナ・ヴィニツカヤさんの作品で、彼女は、2007年のエリザベート王妃国際音楽コンクールの覇者ですね。
【CDについて】
作曲・曲名:
ラヴェル:優雅で感傷的なワルツ (16:29)
ショスタコーヴィチ:七つの人形の踊り (10:35)
ヴィトマン:サーカス・ダンス (22:45)
ラヴェル:ラ・ヴァルス (12:21)
演奏:ヴィニツカヤ(p)
録音:2023年7月 Teldec Studio
CD:ALPHA 1044(レーベル:Alpha)
【曲と演奏について】
まずは、ショスタコーヴィチの七つの人形の踊りについて
この曲は、1952年に若きピアニストのために書かれた比較的易しいピアノ曲集で、過去のバレエ作品などから編曲されたものです。中でも叙情的なワルツ、ロマンス、ポルカは、バレエ音楽の「明るい小川」からの選曲になっています。「明るい小川」の音楽はいろいろな所で登場してきますので、ショスタコーヴィチのお気に入りかな?と思ったりします。初期のこのタイプの作品の完成形ですね。
叙情的なワルツと題された曲は、他にもありますので注意ですが、この曲です(笑)。バレエ組曲からです。
以前にも記事に登場したCDですが、アシュケナージによる叙情的なワルツの演奏です。
曲集全体を聴いても、可愛らしいダンス曲集で、気軽に楽しめる(弾ける?)曲で構成されています。どの曲にも昔からのショスタコーヴィチの楽し気なセンスが溢れていました。ショスタコーヴィチは若き日々を、映画館のアルバイトで、無声映画の伴奏をつとめていました。そのような日々を振り返りながらということもあったのでしょうか。
最後に、もう一曲ということで、ポルカの動画をリンクします。この曲をYouTubeで検索すると、子供たちの演奏がいろいろ出てきます。子供向けの人気曲ですかね…。
アンナ・マリコヴァの演奏によるショスタコーヴィチの七つの人形の踊りからポルカです。
さて、この新譜CD全体についてです。
曲は、ラヴェル=ショスタコーヴィチ=ヴィトマン=ラヴェルという順番で構成されています。実際に聴いてみると、この4曲の構成がなかなか素晴らしくて、面白いCDでした。両端をラヴェルのシューベルトやウィンナワルツへのオマージュで挟み、間にシンプルなショスタコーヴィチと現代的なヴィトマンを置いています。
優雅で感傷的なワルツから始まります。ヴィニツカヤの演奏は、アクセントが強めの演奏で、ニュアンスに富んでいます。激しい部分は強く、叙情的なところはゆったりと歌いこんでという感じですね。音が一つ一つ丁寧に磨かれて出てくる感じで、なかなか聴かせる演奏だと思いました。
そして、7つの人形の踊りも、シンプルな曲集ではありますが、思いのこもった演奏を聴かせてくれます。
3曲目は、サーカス・ダンス。おそらく、このCDの中では中心的な役割だと思います。いろいろなタイプの短いワルツが現代風のアレンジで進行していきます。さすがにダンスできるという感じではありませんが、やってみたら実は面白いかも…。素直に受け止めて理解するのは難しいとも思ったのですが、ヴィトマンの過去の回想的要素もあるようでした。きっと最後の3曲は比較的演奏時間も長くてメインなのだろうと思います。現代における異国への誘いと、心の旅から自分を顧みるといった感じなのでしょうか。最後から2曲目のヴェネツィアのゴンドラがとても叙情的で美しく、これが一番好きかな…。そして、ラストは快活でシニカルでもある行進曲で、これはかなり凝った曲だと思いました。
そして、最後はラ・ヴァルスです。この混沌とした中から始まるピアノが、前曲との連続という事で良くマッチしていて、面白い構成だと思います。ラ・ヴァルスはラヴェル自身による2台ピアノと独奏ピアノの編曲がありますが、これはそれらを基にしてヴィニツカヤが父と共に編曲した作品とのこと。これはなかなかの編曲で、オーケストラ曲の雰囲気も持ちながらの素晴らしい演奏でした。ちょっと聴きごたえがあります。うまく全体がまとまった四楽章構成?のCDでした。
このCDのトレーラーは短いものしか見当たりませんでしたが、とりあえずリンクします。
もう一つ。ついでと言ってはなんですが、ヴィドマンの本業?のクラリネットの独奏による、自身のクラリネットのための3つの影の舞曲のリンクです。現代音楽におけるクラリネットの演奏が見られます。なるほど…。
購入:2024/04/29、鑑賞:2024/05/03
ショスタコーヴィチの7つの人形の踊りが収められたCDより