ショスタコーヴィチ:祝典序曲 他 ロシア名序曲集 プレトニョフ ロシア・ナショナルo(1993) | クラシックCD 感想をひとこと

クラシックCD 感想をひとこと

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。
一言二言で印象を書き留めておきたい。
長い文章だと、書くことが主になってしまう。
その時の印象を大切に。

ショスタコーヴィチの時代 ㊵

今週はこの時代に作曲された、祝典序曲です。短い曲ではありますが、1曲づつ拾っていっております。どれかの交響曲のカプリングにありそうですが、このCDしか持っていませんでしたので、ついでにロシアの名序曲集を聴くことになります。なかなか聴かないCDなので良しとしましょう(笑)。

【CDについて】

作曲・曲名:

   グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲 (4:47)
   ボロディン:歌劇「イーゴリ公」序曲 (10:16)
   ショスタコーヴィチ:祝典序曲 op96 (5:37)
   プロコフィエフ:歌劇「セミヨン・コトコ」op81 序曲 (3:37)
   カバレフスキー:歌劇「コラ・ブルニョン」op24 序曲 (5:31)
   リムスキー=コルサコフ:歌劇「皇帝の花嫁」序曲 (6:30)
   ムソルグスキー:歌劇「ホヴァンシチナ」前奏曲 (5:28)
   チャイコフスキー:序曲ヘ長調 (11:05)
   グラズノフ:祝典序曲 op73 (9:11)

演奏:プレトニョフ指揮、ロシア・ナショナル管弦楽団

録音:1993年11月 モスクワ Conservatory Concert Hall

CD:439 892-2(レーベル:DG)

 

【曲と演奏について】

まずは、ショスタコーヴィチの祝典序曲について

元々この曲は、1947年8月に革命30周年記念として作曲されましたが発表されず、スターリンの死の翌年にあたる1954年に、ロシア革命37周年記念演奏会のためにボリショイ劇場管弦楽団からの委嘱を受けて改作されたものです。ボリショイ劇場管弦楽団の指揮者ネボルシンは演奏会の開幕にふさわしい曲が無かったため、演奏会当日の数日前になって、ショスタコーヴィチに依頼し、ショスタコーヴィチはわずか3日間で書き上げたとのことです。元々原稿があったとはいえ、速いですね。

現在でも比較的人気で、オーケストラレパートリーとしても広く演奏されており、吹奏楽演奏用にも編曲されて盛んに演奏されているとのこと。一聴して吹奏楽の曲かと思ったほど、管楽器群が大活躍する曲です。このCDの冒頭にある「ルスランとリュドミラ」に匹敵するような華々しく展開する曲で、音が目まぐるしく駆け回る様な主題が次々と受け継がれていき、見せ場たっぷりの曲。まさに開幕にうってつけの曲になっているようです。


演奏は、名手揃いのロシア・ナショナル管弦楽団。聴きごたえのある演奏でした。

 

ここは、ムラヴィンスキー=レニングラードでも聴いてみましょう。1956年の演奏です。

 

それでは、他の作品もせっかくですので聴いてみましょう…。

 

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲

開幕はやはりこれです。あのムラヴィンスキーの演奏と同じくらいのスピード。切れる感じはムラヴィンスキーの方があったように思いますが、こちらもなかなか…。その上音に厚みが加わり、落ち着いた感じになっている気がします。

 

ボロディン:歌劇「イーゴリ公」序曲

ボロディンの死後、リムスキー=コルサコフとグラズノフによって補筆完成されました。韃靼人の踊りが有名なイーゴリ公ですが、序曲もロシア風のメロディに溢れています。

 

プロコフィエフ:歌劇「セミヨン・コトコ」序曲

これは、とてもメロディの美しいロマンティックな曲でした。オペラのあらすじは、ソ連帰国後初めてのソビエト的なものを題材としていますが、演出家のメイエルホリドが捉えられて処刑されたことから、初演は延期になったとのこと。大粛清の時代の作品です。

 

カバレフスキー:歌劇「コラ・ブルニョン」序曲

社会主義リアリズムの実践者であったカバレフスキーは、平易な曲や青少年向けの曲を多く作曲しましたが、この曲も明るく闊達な感じの聴きやすい曲でした。吹奏楽編曲でも良く演奏されるとのことです。

 

リムスキー=コルサコフ:歌劇「皇帝の花嫁」序曲

最近、実演を聴いたばかりです。リムスキー=コルサコフらしい、輝かしくドラマティックな曲。けっこう好きですねこの曲。演奏も明快で美しいものでした。

 

ムソルグスキー:歌劇「ホヴァンシチナ」前奏曲

「モスクワ河の夜明け」という題名も持ち、ムソルグスキーの死後リムスキー=コルサコフによってオーケストレーションされて完成された「ホヴァンシチナ」の前奏曲。このリムスキー=コルサコフ版を問題視する声も多く、原曲に忠実に改めて編曲しなおしたのがショスタコーヴィチで、このCDでの演奏を含め、今日最も演奏機会の多いものとなっています。

 

チャイコフスキー:序曲ヘ長調
1865年に作曲された曲で、op1より前の作品。静かに始まって盛り上がり、穏やかなメロディがあって、再び盛り上がりという形を繰り返しつつ、コーダへと向かっていく、いかにも序曲という作品でした。学生時代の作品で1年後に手を加えて拡大して好評を得たとのことです。ただ、後年のチャイコフスキーの作品のように、印象に残りやすい作品では無いと思いました。

 

グラズノフ:祝典序曲 op73 (9:11)

最後は、グラズノフの祝典序曲で、これもあまり聴かない曲です。ただしこれはチャイコフスキーのものよりは、華やかでメロディも美しく、馴染みやすい曲でした。演奏効果もありそうで、時々コンサートでも取り上げられる曲のようです。

 

とりあえず1曲何かということで、セミヨン・コトコ序曲を上げておきます。ゲルギエフ=マリインスキーによる演奏です。

 

 

さて、演奏しているプレトニョフですが、ウクライナ侵攻に公然と批判的な発言をしていることから、ロシア・ナショナル管弦楽団を追われてしまったような形になっているようです。プレトニョフは、ロシア・ナショナル管弦楽団の18人の奏者とウクライナ人やヨーロッパの音楽家を集めて新たにラフマニノフ国際管弦楽団を結成し、その最初のCDが先ごろ発売されました。思えば、プレトニョフとロシア・ナショナル管弦楽団は初来日の時にコンサートを聴きに行っています。是非新しいオーケストラの演奏も聴いてみたいと思っているところです。

 

購入:不明、鑑賞:2024/04/25

 

関連リンクとして、今回は祝典序曲をショスタコーヴィチに依頼したネボルシンの演奏を