ガブリエル・フォーレ没後100年③
フォーレ没後100年のアニバーサリーに聴く音楽の3つめです。フォーレの鑑賞と言えば、後期を中心に作曲された室内楽が欠かせません。そんな曲の中から、シャルランで録音された1枚を鑑賞しました。
【CDについて】
作曲:フォーレ
曲名:ピアノ五重奏曲第1番ニ短調 op89 (32:10)
アンダンテ変ロ長調 op75 (4:22)
子守歌 op16 (4:09)
演奏:ティッサン=ヴァランタン(p)、ORTF四重奏団
録音:不明 リリース年:1966
CD:TKCZ-79222 (レーベル:Charlin、販売:徳間ジャパンコミュニケーションズ)
【曲について】
フォーレの室内楽曲は、比較的後期に名作が集中しているイメージですが、この曲は中期から後期にかけての作品。着想から完成まで15年を要しており、その間には長い中断が挟まれています。美しいメロディが特徴の初期の作品から、楽想が綿密に積み重ねられ、曲全体として味わい深い情感が漂う後期の作品へ向けての中間的な作品と言ってもいいでしょうか。フォーレのこの作品群を聴くのは、とても幸せを感じさせるものだと思います。
【演奏について】
シャルランの録音は、自然な音造りの名録音として有名でした。しかし、そのマスターテープは、税金滞納で差し押さえられ、無価値と判断されて埋め立てに使われたとのこと。今や、オリジナルで聴くことができず、マスターのコピーか板起しでしか聴くことができない?ようです。このCDは1993年に徳間ジャパンから、シャルラン名盤コレクションとして、1000円シリーズで発売されたもので、そもそも1000円CDで聴けたこと自体が大変貴重なものであったと、今となっては思います。しかしながら、当時はこのCDを聴いても、とてもいい録音とは思えず、ずっと取り出すことなくお蔵入りしていました。そして30年…。
久しぶりで、心配した音は、今聴くと全く問題ありませんでした。たぶん当時の私のステレオが良くなかったのか、あるいは私の耳が良くなかったかということと、簡単にこの30年の悪印象による空白の原因を結論付けます(笑)。とても穏やかな美しい、いかにもアナログ感のある音で聴けています。作品は、後期のフォーレ作品への入り口ということで、雰囲気の素晴らしい穏やかな曲でした。美しいメロディだけでなく、とても表情豊かな音楽が流れてきました。輝かしいピアノの音で装飾される弦楽四重奏が、哀愁を帯びたメロディを奏でています。至高の時間が連綿と続くように感じます。
ピアノ四重奏曲や五重奏曲としては、古典派からロマン派のそれらとは違った印象で、フォーレの響きは、新しい響きを持っているように思います。時代が印象派が活躍していた頃ということで、その雰囲気もあるかも知れません。それを演奏する、ティッサン=ヴァランタンとORTF四重奏団の音はとても穏やかで、繊細かつ角の取れた響き。フランスの名四重奏団によるフォーレは、美しい枯淡の響きを醸し出していきます。フォーレのピアノ五重奏曲第1番は、美しいメロディはもちろんありますが、それ以上に曲全体で一貫して流れるハーモニーの優しさと柔らかさと溢れ出る瑞々しさが素晴らしい曲なのでした。
【録音について】
シャルランの録音による、雰囲気の良い音です。多分にアナログ的かもしれません。
【まとめ】
シャルランの録音は、折に触れて復刻されているようで、語り継がれている名録音の一つですね。日本での初出LPはトリオレコードでしたので、これもクラシックとしては、かなりマニアックな部類です。30年ぶりに聴くと、とても雰囲気の良いCDだったので、まだ何枚かあるので、そのうち聴き返しましょう。
購入:不明、鑑賞:2024/03/15
これまでのフォーレアニバーサリー記事です