シベリウス:交響曲第4,5番 マゼール ピッツバーグ響 (1990) | ~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

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学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

3月はシベリウスの交響曲を聴いてみましょう ③

シベリウスの交響曲、今週は第4番と第5番で、先日第1番と第7番を聴いたマゼールの新録音と同じ、ピッツバーグ交響楽団との組み合わせになります。シベリウスの交響曲の中でも、最も陰鬱な雰囲気を醸し出している第4番と、祝祭的雰囲気のある第5番を合わせて収録したCDです。

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ㉖

【CDについて】

作曲:シベリウス

曲名:交響曲第4番イ短調 op63 (39:34)

   交響曲第5番変ホ長調 op82 (31:35)

演奏:マゼール指揮 ピッツバーグ交響楽団

録音:1990年5月7日(第4番),1990年9月15-16日(第5番)、ピッツバーグ Heinz Hall

CD:SK 46499(レーベル:SONY Classical)

 

【3月のお題:今日の初登場曲は?】

交響曲第4番

シベリウスは体調の不調に陥り、喉の腫瘍と診断されてしまいます。手術を受けたシベリウスは腫瘍を摘出するとともに、それは良性であることが判明し、事なきを得ましたが、シベリウスは療養生活の中で死を身近に感じるようになり、この時期の作品には暗闇の中から光を追い求めるような感覚の音楽となります。そんな形で出来上がった曲が交響曲第4番となります。そして、この曲は派手な後期ロマン派風の作品から、純度の高い後期の作風への転換となりました。

交響曲第5番

1915年にシベリウス自身の生誕50年の記念行事が催されることになります。そのメインイベントとして、祝賀演奏会が予定されており、そこで初演される交響曲として作曲されたのが、交響曲第5番になります。この作品は、散歩の途中で春の気配を感じ、交響曲のインスピレーションを得たと書き記されています。そして、1915年12月8日にシベリウス自身の指揮で初演され、大成功を収めました。

 

【演奏についての感想】

シベリウスの後期の交響曲の演奏と言えば、最近は北欧勢の指揮者の演奏の独壇場といった雰囲気で、以前もベルグルンドが第一人者という雰囲気でした。御多聞に漏れず、私もベルグルンドの演奏で親しんだということになります。とは言いつつ、全世界で浸透している曲でもあり、巨匠たちの演奏も幾つか存在していて、第5番、第7番という組み合わせの音盤を時折見かけました。そんな中で、マゼールはシベリウスの全集を2回も録音した、非北欧の指揮者の一人。初回はウィーン・フィルでしたが、新しい全集はマゼールの地元でもある、手勢のピッツバーグ響なので、私は偉大なる表現者と認識しているマゼールの個性が大きく出ているものと期待します。

 

交響曲第4番は、私はあまり聴くことはありませんでしたが、昨年だったかテレビ放送でマケラの演奏を聴いて、その静逸な様子に、ちょっと気になっていました。シベリウスの交響曲の中でも最も陰鬱でかつ情感あふれる曲です。マゼールは細部まで克明に表現しながら、全体の雰囲気を構築していて、この曲がよく見えてきます。静かないろいろなフレーズが連綿と積みあがっていく雰囲気で、乾いた感じの演奏にも思えます。第三楽章はかなり陰鬱な雰囲気があり、第四楽章で解決に向かって陽が刺してきます。それは基調は変わらず局所的な明るさのようにも思えます。そして穏やかに曲が閉じられました。

 

交響曲第5番は、生誕50年祝賀のための祝祭的な曲なので、冒頭も明るいメロディで始まります。とはいってもそこはシベリウスですので、野放図に明るさを感じさせるような感じではなく、抑制的な明るさですね。厳しい自然の中で春の訪れを慈しむような明るさの曲でした。マゼールの演奏も、じっくりと進めていく感じで、細部まで綿密に表現されていて、聴きごたえのある演奏だと思います。最近は北欧系指揮者以外の録音がなんとなく少ないような気がしないでもないですが、マゼールの演奏はそういった地元感にこだわらず独自にシベリウスの音楽を表現したものでしょう。こういった演奏がどんどん出てこないと、シベリウスはいつの間にかローカルな作曲家になってしまうかも、ですね…。

 

【録音に関して】

細部までよく捉えられた解像度のいい録音で、演奏の雰囲気がよく表現されていると思います。

 

【まとめ】

シベリウスの後期交響曲の名録音といえば、どの曲も共通する特定の指揮者に偏りがちなので、名盤と言われるかどうかは別にして、しっかり作り込まれた、ご当地以外の録音がどんどん出て来てほしいなと思うのですが、こういった性格の曲は難しいのかな?

 

購入:不明、鑑賞:2024/03/15

 

シベリウスの交響曲の記事をいくつかリンクしておきます。