ショスタコーヴィチ:組曲「ピロゴーフ」「馬あぶ」セレブリエール ベルギー放送so (1987?) | ~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

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学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

ショスタコーヴィチの時代 ㉝

しばらくは、第二次大戦の影響もあって、重い音楽が続いたのですが、今週はちょっと息抜きということで、久しぶりの映画音楽です。「ピロゴーフ」は、1947年の作品で、ショスタコーヴィチは、この他にもコンスタントに映画音楽の作曲を続けていますが、手元にあったのはこれでした。この時期ですが、他には「ミチューリン」や「ベルリン陥落」なども作られています。カプリングの「馬あぶ」は1955年の作品で、このブログでは既出ですが、編曲などが違っています。「馬あぶ」のほうは、映画音楽の中でもよく演奏される曲目だと思います。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ

曲名:組曲「馬あぶ」op97a (45:40)

   組曲「ピロゴーフ」op76a (17:01)

演奏:セレブリエール指揮、ベルギー放送交響楽団

録音:ブリュッセル Maison de la Radio

CD:6603-2-RC(レーベル:RCA、発売:BMG Music)

 

【曲と演奏について】

大戦中から、戦後にかけてもショスタコーヴィチは映画音楽を継続して作曲しています。少し前の時代ですと、バレエ音楽や劇音楽というところだと思いますが、これらは市民の娯楽であり、国策であり、また作曲家の生活の糧でもある訳ですね。戦争中に映画?と思われるかも知れませんが、これは日本でも同じで、大戦中もその世相に合わせた映画が制作されています。基本は検閲を経てということですが、それでも名監督の作品は、これ反戦映画ではないか?という映画もあります。陸軍省監修の木下惠介監督の「陸軍」なんかは最たるもので、見事に裏切り、陸軍省から睨まれることになります。このあたりの事情は洋の東西を問わずという事で、ショスタコーヴィチの音楽にも共通していますね(笑)。

戦中戦後の映画音楽は、「ゾーヤ(1944)」「普通の人々(1945)」「若き親衛隊(1947)」「ピロゴーフ(1947)」「ミチューリン(1948)」「エルベ河の邂逅(1948)」といったところでしょうか。

 

組曲「馬あぶ」op97a

この曲に関しては、カプリングされていましたので、一度登場しました。ショスタコーヴィチの映画音楽の中でも、比較的取り上げられる頻度が多いものではないでしょうか。アイルランドの小説家ヴォイニッチの原作によるもので、革命闘争に巻き込まれた主人公が悲劇的最期を遂げるお話。アイルランドの小説ながら、ソ連や中国で大流行したようで、4回も映画化されたとのことです。1955年に制作された映画につけられているのが、ショスタコーヴィチの音楽で、特に「ロマンス」は有名になりました。全曲を通して明るく楽しい曲や、盛り上がる曲やロマンティックな曲が散りばめられていて、45分ほどの長さになりますが、楽しめる組曲になっています。組曲はショスタコーヴィチの編曲でお馴染みのアトヴミャーンによるものです。

 

ショスタコーヴィチの「ロマンス」。タスミン・リトルのヴァイオリンとピアーズ・レーンのピアノによる演奏です。メロディの美しさが際立ちます。御用とお急ぎの方も、つかの間の美しいメロディに浸ってみませんか?(笑)

 

ここで、「馬あぶ」が出てくる過去記事のリンクです。

 

 

 

組曲「ピロゴーフ」op76a (17:01)

さて、本題の「ピロゴーフ」です。この時期に制作された「ミチューリン」と同じ系統の映画で、あちらは農学者ですね。一方、ピロゴーフは最初にエ-テル麻酔を臨床医学に役立て、また、石膏のギブスによる骨折個所の固定手術を最初に行ったロシアの外科医とのこと。クリミア戦争に軍医として従軍し、数々の手術手法を創案して、野戦外科の父とも言われているそうです。伝記映画ですね。「先駆者の道」という邦題で、1950年に日本でも公開されています。

曲のほうは、映画は見たことがないのでよく解らないのですが、野戦外科の偉人ですので、戦争場面も多いのではないかと思います。「序曲」から軍隊のトランペットの音が登場し、「情景」では激しい音楽が展開していきます。今や、お得意の戦争シーンです(笑)。そして、定番の舞曲など織り込まれますので、楽しめる組曲になっていると思います。

 

組曲「ピロゴーフ」から第4曲スケルツォ。短いですが、なかなか面白い曲です。シャイーとコンセルトヘボウにょる録音です。

 

ここで、もう一つ過去記事リンク。「ミチューリン」の入ったセレブリエールのCDの記事です。

 

さて、ショスタコーヴィチの映画音楽を楽しみました。セレブリエールの演奏は、もたれず重くならずという感じで、映画音楽らしい演奏で、なかなかいいと思います。楽しめます。しかし、かつてはこのあたりの曲の音源を探すのは一苦労でしたが、今やたくさんの音源があるのですね。ちょっと驚いています。交響曲をひと通り聴いたら、こちらの方を聴くということになるのでしょう。私もそうでした。やはり、それだけ楽しい曲が多いという事だと思います。

 

次回は、打って変わってガチな曲に戻ると思います。

 

購入:1993頃?、鑑賞:2024/02/26(再聴)