【CDについて】
作曲:モーツァルト
曲名:弦楽五重奏曲第5番ニ長調 K593 (26:59)
弦楽五重奏曲第6番変ホ長調 K614 (24:17)
演奏:メロス弦楽四重奏団、ファルルリ(va)
録音:1989年11月 ノイマルク
CD:POCG-1081(レーベル:DG、発売:ポリドール)
【3月のお題:今日の初登場曲は?】
今日は、モーツァルトの最後期の弦楽五重奏曲を聴いてみることにしました。この曲を聴くのは何年振りだろか…。二桁の年数かもしれません。なんとなく、モーツァルトの弦楽五重奏曲というと、スメタナSQとスークによるLPを連想してしまいます。レコード店に足しげく通っていた頃、かなり目立っていたLPでした。LPを持っていたような記憶もあるのですが、今手元に置いていないので、定かではありません。
第5番は、死の前年に作曲された作品でした。生活が困窮する中でのことです。チェロが良く目立ち、ヴィオラ2台による内声部が充実した作品で、ところどころにハッとするような展開が現れます。最後期の透明感のある充実した作品です。第6番はさらに死の8ヶ月前の作品になります。器楽曲は、あとはK622のクラリネット協奏曲を残すのみです。大変明るい曲で、この後作曲される「魔笛」の音楽をイメージするかもしれません。最晩年の澄み切ったというか、振り切れた明るさに包まれている作品です。それでは、初心に返った気持ちで聴いてみましょう…。
【演奏について】
第5番
チェロとの応答で始まるゆったりとした序奏から、構えの大きい曲であるとうかがい知ります。主部に入って輝かしく時に激しく展開していき、時々挟まれる休止などに意表を突かれつつ、モーツァルトの作品の面白さを改めて知ることとなります。第二楽章がとても美しい曲で、長調の第一主題と短調の第二主題の対比が見事です。モーツァルトの哀愁を讃える朗々とした短調を聴くことができます。躍動的な第四楽章は対位法的な書法も使われていて変化に富んだ曲になっています。
バリリSQの1954年の演奏ですが、バリリのロマンティックな響きは、1950年代のウィーンの音楽の情感を今に伝えている録音です。
第6番
こちらは、打って変わって楽しい曲。美しいメロディが楽器の間で受け渡されながら発展していきます。第一楽章では、ホルンを思わせるようなヴィオラの音や、森の小鳥のさえずりのようなヴァイオリンの歌を楽しむことになりました。第三楽章の素朴なメヌエットと、第四楽章の疾走するロンドと、長く聴いてきたモーツァルトの究極の姿がここにあるという感じです。
アメリカ的な演奏スタイルを作り上げたブダペストSQの録音で、モーツァルトを浮かび上がらせてみましょう。このスタイルは後のジュリアードSQへと引き継がれていきました。
そういった感じで、モーツァルトの晩年の音楽を深く味わう事の出来る曲なのですが、メロスSQは強く分厚い音を持って、流麗に演奏していくスタイル。伝統的な重厚な演奏の流れを引くものと思います。K614のフレーズの受け渡しやヴィオラの音などは、克明かつ特徴的に印象付けられました。ドイツ的生真面目さというと先入観で聴いているという事になるかもしれませんが、言い方はおかしいですけど、力強くて、そのものずばりの演奏だと思いました。じっくりと長く聴ける演奏だと思います。
【録音について】
かなり強めだとは思いますが、個々のパートの音が非常に明瞭で素晴らしい録音です。
【まとめ】
モーツァルトの曲なので、演奏者の特徴がとても出やすいですね。上記に貼り付けた演奏以外でも、往年の四重奏団が録音を残していますので、YouTubeなんかで聴き比べると、四重奏団の性格がとても判りやすいと思いました。モーツァルトの弦楽五重奏曲は、まだまだ他の演奏者でもたくさん聴いてみたい曲です。
購入:2023/11/25、鑑賞:2024/02/25
モーツァルトの室内楽…ということで関連のリンクです