ヨアヒム:ヴァイオリン協奏曲第3番 他 西崎(vn) ミンスキー (1983) | ~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

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学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

【CDについて】
作曲:ヨアヒム

曲名:ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 (35:16)

   序曲「ハムレット」 op4 (17:19)

   序曲「ハインリヒ・フォン・クライストの記念に」op13 (10:23)

演奏:西崎崇子(vn)、ミンスキー指揮 シュトゥットガルト放送交響楽団

録音:1983年9月9-11日 シュトゥットガルト

CD:8.223373(レーベル:MARCO POLO)

 

【3月のお題:今日の初登場曲は?】

今日は、ロマン派の作曲家たちを語る際に頻繁に登場するヨーゼフ・ヨアヒムです。ブラームスやシューマン夫妻との親交、ワーグナー・リスト派との対立など話題は豊富で、メンデルスゾーンに師事しています。また、稀代のヴァイオリニストとして多くの弟子を育て、今やその後継者が世界中で活躍しているという事になっています。ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団でも活躍し、ゲヴァントハウス四重奏団も創設しました。そんな、クラシック至上に大きな影響を残した音楽家ですが、作曲方面ではあまり語られることが無いようです。今回は、そんなヨアヒムのCDをたまたまGETしたので、聴いてみることにしました。

 

【演奏について】

ヴァイオリン協奏曲第3番

さて、ヨアヒムについて調べ始めると、膨大なものになり、かなりの研究も必要になりそうなので、とりあえず今回は曲を聴きます(笑)。ヴァイオリン協奏曲は3曲作曲されていますが、これは最後のもので、ドイツの詩人ブレンターノの妹で作家で作曲家でもあったアルニム伯爵夫人の娘の、グリム夫人(夫の父はグリム兄弟の一人で、彼女自身も童話作家として活躍した)の追悼のために作曲されました。第一楽章の主題はアルニム伯爵夫人の曲を使用しているとのことです。短い序奏の後、ヴァイオリンの独奏が開始され、連綿と反復されながら音楽が続いていく感じがしました。

第二楽章は追悼音楽で、葬送行進曲のような歩みと美しいメロディを持っています。主題は、シューベルトの八重奏曲の冒頭の主題を想起させるものでした。第三楽章は打って変わって躍動的な音楽になり、複雑な技巧で展開していきました。若き時代にライプツィヒで活躍したヴァイオリニストのヨアヒムということで、この曲を聴きながらメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲の面影が浮かび上がりました。全体として、ロマン派のヴァイオリン協奏曲という雰囲気ですが、後世的には古典的な形になっていると思います。展開がヴァイオリンの技巧重視で連綿と続く感じがして、メリハリや盛り上がりというと少々物足りないところを感じたりしましたが、充実した内容の作品と思いました。私はメンデルスゾーン的な雰囲気の影響をの中で、もっと実直な曲だという印象を持ちました。ライナーノートには、シューマンやシュポアの精神に由来すると書かれています。

追悼音楽としても、母の曲を使い、葬送の歩みを挿入し、ロマン派のヴァイオリン曲の技巧で締めるという事で、よく練られた形で構成されている思いました。

 

これは、この音源そのものですね。

 

演奏する西崎崇子さんは、ヴィオラの今井信子さんとともにジュリアードのご出身で、海外のレーベルに多くの録音を残されており、新しい曲の録音にも大変意欲的であったと思います。西崎さんは夫がナクソスの創業者ということもあってか、ナクソスレーベルに有名曲稀少曲を問わず多くの録音を残されていますね。これは偉業だと思います。音は繊細で透明感を持ち、技巧的なこの曲をよく歌わせながら演奏されていると思いました。

実は、西崎崇子さんのCDは、ベートーヴェン・ブラームス・ブルッフ・メンデルスゾーン・チャイコフスキーと、私のCD棚に並んでいるのですね…。三大ヴァイオリン協奏曲を網羅しています(笑)。

 

序曲「ハムレット」

CDのブックレットには、ヨアヒムは一般的な文化に対する幅広い興味を持っていたが、ブラームスは、その生立ちからその部分が不足していて、ヨアヒムが大いに不足を補ったと書かれています。確かに、ブラームスはこういった一般的な文化を基礎とした表題的な楽曲は少ないような気がします。そのヨアヒムの序曲「ハムレット」は、他の同種の演奏会用序曲と同様、劇的に開始され、ゲネラルパウゼでアクセントをつけられたりと、少々凝った作品になっていました。敵対していたワーグナーやリストのように肥大化しないので、展開や盛り上がりは大人しいところもありますが、なかなか面白い曲だと思いました。

 

序曲「ハインリヒ・フォン・クライストの記念に」

この曲は、クライストの生誕100年にあたって作曲された作品で、1877年に作曲されました。クライストは劇作家であり、ドイツロマン派の発展にとって重要な作品を残したとブックレットに書かれています。岩波文庫ででていた「こわれがめ」でその名を知っていました。ロマンティクな味わいのある管弦楽曲だと思いました。この二曲の管弦楽曲を聴いていると、上質でスタンダードなロマン派の音楽を感じます。

 

【録音について】

問題ない録音ですが、今となってはちょっと古く感じるかもしれません。

 

【まとめ】

ヨアヒムはどうやら、広範な交流と知識を持った人物だったと感じました。ヨアヒムを中心に、この時代の文学、芸術や、交流関係を追っていくのも面白そうですし、そこからいろいろな楽曲が生まれてきているのも興味深いと思いました。なかなか興味深いCDでした。

 

購入:2024/02/26、鑑賞:2024/02/27