「桶狭間の合戦まで」 第十五部
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「桶狭間の合戦まで」 第十五部
信用できない忍びをどう使うか?
この乱世での愛情や友情は、あてになりはせぬ。ましてや忍びが相手では危なっかしい事この上ない。だから、そこは始めから信用せずに、仕事を依頼せず、遊んで来い、と金を渡す。今川軍になりすまし、今川軍に紛れ込み、行軍中に酒と肴で楽しめ、という任務をあたえる。忍びといえども人の子で、余裕が生まれればずぼらになる。あぶく銭で、余の司令通りに、戦火の中にいるにもかかわらず、身の危険を忘れて、もしくは身の危険を忘れたいが為に、えんやこら、とお祭り騒ぎをはじめることであろう。そうすると、それに相乗して、今川側に助っ人であり、もともと気の緩んでいる武田の者や後北条の者は、我が朋友で仕事熱心な酔漢間者と一緒になって宴を盛り上げることであろう。そして、軍から脱落していくであろう。これで、随分と義元軍はしぼむ事であろう。うまくいけば、義元そのものも一緒になって遊山気分で、呑んで、謡い始めるかもしれぬ。そこまで行くと、鬼は一寸法師を呑みこむ程に大きくはないかもしれぬ。もう、一寸法師である余は、正面切って鬼の目をつけるかもしれぬ。
(…、…。そううまくいくか…、…)
今更、恐れてもしかたない。正直、溺れる者が他に掴む藁が無いのだ。もう、選択の余地はないのだ。それとも、義元にこの頭を下げようとでも言うのか?
「…、…」
いや、もう、やるしかない。ここまで来たら、大きく構えた方がいいだろう。そうするべきだ。余は天下を獲るのである。肩を怒らせ、生意気な義元を潰してみせよう、それくらいの気の強さ見せてやろう。出来るはずだ。余は天下を獲るのだ。
真夏の熱帯夜の様な暑さだった。体を使っている訳ではないのに、汗が噴き出てくる。
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