「桶狭間の合戦まで」 第十六部
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「桶狭間の合戦まで」 第十六部
翌日の軍議。
余には、つまらぬものであった。
それまでの軍議と変わらず、籠城だの、降伏だのを唱えている声を聞いているだけで、時間をやり過ごした。
しかし、これでよいのである。
もう、余の決心は固まっている。信盛ら家臣がどう喚き叫ぼうが、時が来れば余は出陣する。時が来るまで、今川を引きつけて、怖気づいた振りをして、極限まで、こちらに義元の本陣をおびき寄せて、分散させて縮小させる。拡散させて減少させる。その時に、今川義元を討つ。ぶった切る。滅ぼす。
「今宵も、もう更けた。明日に何が起きるやも分からん。信盛、おぬしは休まれよ」
「殿! 急いでくだされ。はぐらかすのも限界があります。もう、手遅れになりつつあります」
「また、明日にしよう。余は眠い」
「殿! 実はもう西へ逃げる準備は整えてある故に、行きましょう。強がるのも、気持ちを抑えるのも、もう、止めにしましょう」
「…、…。信盛。…、…。あと、一晩、考えさせてくれ」
余はそう言って皆が残る部屋を後にした。
あと一日待ってくれ、というのは、明朝にでも、出陣致す、と優しく暗示したつもりであった。
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