織田信長小説 「信長一人称」
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「猿? ・禿鼠? 奇才?」 第六部
体の弱い者、小さい者は知恵を使って成り上がらなくてはならないのである。藤吉郎には教わる所がいくつかあった。まことに実のある男である。
その頃、余のとった軍事政策として、弱小部隊に長槍を与えた事の他に、兵農分離政策がある。
これは、兵士と農民の役割分担を判然とさせたのである。それまで、日本一の弱小軍団の汚名を着せられていた、尾張軍は体力と体格が隘路であった。余の作戦を踏破するには、高い機動力が求められるのである。しかし、戦の時だけ、兵の振りをさせられ、田や畑から駆り出される、兼業兵士では、充分な能力を見せてはくれない。これは致し方ない事である。
そこを強化する。
弱点を克服するのである。
農民は農業に専念する。端境期に戦に出ることもあるが、それは極端な話で、それ以外は農業に従事してもらう。農繁期に戦が起こり、農業を疎かにしてしまうと、その後の兵糧が乏しくなる。それを避けるためにも、農民は農民らしく、本来の農業に特化するべきなのである。
兵士は兵士として、戦の練達の士として戦役に赴き、軍功をあげれば良いのである。その為に研鑽を積み、己を鍛えあげるのである。
日頃の修養で、軍の統率力も養われるであろう。それは戦で成果を発揮するであろう。
尾張の地は実り豊かになった。陶器を中心に工業も発展し、それにつれて、人が集まり、商業の規模が拡大された。尾張軍が力をつけ、余は一国を動かした。
余は、一国では、当然満たされない。
全国を制覇するのである。
天下を獲るのである。
まずは、隣国、美濃を攻め落とす。
つづく

