保護者が気軽に将棋の場へ子どもを連れていける範囲ってどれくらいでしょうね。

交通費1500円で線引きするとしたら、大人片道だと500円になります (子ども半額と仮定)。以下、500円で移動できる範囲を500円圏と呼び、これを元に考えていこうと思います。


大阪駅からだと、JR なら神戸駅・宝塚駅・山崎駅・藤阪駅・河内堅上駅・北信太駅までです。地下鉄は全駅含まれますし、私鉄も含めるとかなりの駅数になります (京都は私鉄なら安くいけます)。

駅から 1km 以内の人は徒歩で駅まで来る (bus を利用しない) と考えても、鉄道網が線ではなく面として機能しているので、人口的にもかなりになります。

名古屋駅からだと、石浜駅・安城駅・高蔵寺駅・岐阜駅・四日市駅まで入ります。名鉄も安いでしょうし、やはり500円圏の人口がとても多いです。

東京駅からだと、幕張豊砂駅・幕張本郷駅・北小金駅・さいたま新都心駅・北与野駅・武蔵小金井駅・横浜駅までです。精査していませんが、私鉄も含めると膨大な人口を抱えているでしょう。わが県と比較するのが嫌になるくらいの人口がいそうです。


で、わが県はというと、県中心駅から500円圏は駅数がかなり少ないです。また鉄道網が面ではなく線なので、駅から 1km 以上離れていて bus を利用しないといけない地域も多いです。我が家なんて、500円だと自分の市の中心駅にすら辿り着けません。

県人口だけ見れば、わが県は一応7桁人口ですが、500円圏という視点だと大阪の1割もありません。仮に大阪の 5% だとすると、大阪で200人集められる小学生将棋大会と同様のものを我が県で開催しても参加者10名しか集まらない、という計算になります。(実際にはそこまで少なくはありません。500円圏を超えて保護者が頑張って引率してくれます。しかしそれは、保護者の負担が大きいということでもあります。)


各県の事情に詳しいわけではありませんが、私の感覚だと以下の4つくらいに分類していいような気がします。

  • 大都市圏の中心を担う県 (東京・愛知・大阪)
  • 上記の500円圏にそこそこ含まれる県 (千葉・埼玉・神奈川・兵庫・京都)
  • 上記に含まれないが将棋普及を頑張っている県 (あまりよく分かっていませんが、山形・石川・岐阜・三重・広島あたりが該当するのではと考えています…他の県はあまり知らなくてすみません)
  • それ以外の県

我が県は「それ以外の県」です。

以前、少年少女囲碁新潟県大会の参加者がとても少ないという blog 記事を書きました。棋院が存在する東京・大阪はまだまだ大丈夫だと思いますが、それ以外の県の多くは囲碁の継続という点でかなり危ない状況でしょう。将棋界も、あと10年もしたら上記「それ以外の県」のいくつかで似たような状況になるのではないかと危惧しています。

たとえばあなたが大阪にお住まいでしたら、大阪の 5% しか500円圏人口がいない状況を考えてみて下さい。参加者数が 5% ってことはさすがにないですが、将棋の場への参加しやすさについては、県の人口比以上に差があります。同時に、将棋の場を運営できる人員にも大きな差があります。それはそのまま、全国大会に繋がらない将棋大会が豊富かどうかという点に表れてくると思います。

上記4分類の上の方と下の方とで、将棋普及の戦略はとても異なります。上の方の県の戦略を下の方の県に適用したら、将棋文化はどんどん廃れていき、研修会がある県でしか将棋が指されなくなるでしょう。


実は県単位で考えることもちょっと乱暴で、500円圏人口を元に地域で考えるのがよいと思います。

私は、500円圏人口が数万人の地域の将棋の場を訪問させていただいたこともあります。そういう地域にとって望ましい戦略は、わが県にとって望ましい戦略とも異なると思います。


「将棋は勝っても負けても楽しい」と思ってもらうためには棋力が近い仲間がどれだけいるかが割と重要であると考えます。そのためには将棋の場の集客力が重要で、500円圏人口が直に影響します。将棋の場を運営できる大人の人数も500円圏人口に割と左右されると思います。わが県は、運営できる大人の人数もかなり危ない局面に入っている、と感じています。

将棋の場に集まる人数が少なければ少ないほど、いわゆるガチ勢しか勝てない場となり、入門者は勝ち負け以外の楽しさを知る前に将棋から離れていきます。全国大会に繋がらない小学生将棋大会を支部で主催したこともありますが、参加者数は散々な結果に終わりました。なお、全国大会に繋がる県大会であればまだそれなりの参加者があり、付随する交流戦には入門者もそこそこ参加しています。

我が県は入門者~初心者の層の厚みが足りず、また500円圏人口が少なくて打てる手が限られているので、何とかしたいところです。