備忘録(byエル) -24ページ目

玉ねぎが飴色になるまで

朝から大量のたまねぎを炒めている。

日曜日デパ地下で、玉ねぎを箱ごと買って送ったのだが、それが昨日届いたのだ。


「お買い得!! 淡路のおいしい玉ねぎ10k入り1200!!


家計簿もロクに付けることが出来ない私には、果たしてそれがお買い得なのかどうか分からないのだが、売り場のおばさんが、いかにもおいしいもの大好き的なオーラのある人で、それに引き込まれて、買ってしまった。

で、昨日届いたのだが、私は玉ねぎを函買いしたことなど忘れて、昨夜の食材として近くのスーパーで玉ねぎを一袋買っていたのだ。

というわけで、我が家の台所は玉ねぎの山。

いくら長持ちするとはいえ、玉ねぎに囲まれて暮らす日々は気が重い。

なので、とりあえず10個をスライスして炒めることにした「飴色になるまで炒めて冷凍保存すれば便利!」と何かに書いてあったのを思い出したから、そんなに便利なら...と始めたのだが、これがなかなか...10個の玉ねぎはスライスすると、ものすごい量になる。切れの悪い我が家の包丁は玉ねぎの繊維を潰しまくり、大量の刺激臭を立ち込めさせる。


フライパンに溢れそうな玉ねぎを放り込んで、弱火で煮ていく...


その間に、テレビからは「秘密保護法案」衆議院で強行採決され、ねじれのなくなった多数与党の参議院では今日「国家安全保障会議(NSC)」設置法案が成立するとアナウンサーの声。

多くの人が憂慮するように、今の法律でも秘密保持は十分可能なのに、わざわざ、あいまいな「秘密保護法案」を強行採決する意図は、集団的自衛権の行使、憲法9条の改悪への第一歩であることは、玉ねぎの値段すら判断できない私にでも分かる。

まるで、安倍さんを助けるかのように、中国が防空識別圏を公表し、危機を煽るのも、いつものことだ。

11月の初めに、東京渋谷で韓国の監督キョンスンの「レッドマリア」というドキュメンタリー映画を観た。


父親の分からない子供を集団で育てながら「性労働」を生きる権利として闘う、フィリピンのセックスワーカーの女性たち。


不当解雇に抗議し、櫓の上で寝泊まりしながら戦う韓国の女性労働者たち。


派遣切りを不当として闘う日本の女性。


社会に対して、不屈に闘い生きる権利を主張する女性たちの姿を取り続けたドキュメンタリー映画だ。

その中に、フィリピンのある村で、第二次世界大戦中に起こった集団レイプ事件の被害者たちの闘いが描かれる場面があった。


その村では、日本兵が村中の若い女性たちを集会所のような建物に強制連行して、集団で彼女たちをレイプしたのだ。


そのことは村の秘密として、「なかったこと」になり、彼女たちは年を重ね80代になっている。しかし、彼女たちの心の中で「なかったこと」になる訳もなく、夫や子供にも告白できず、長くその記憶に苦しめられてきた。


でも、戦争が女性にどのような苦しみを与えるのかを後世に伝えていかなければいけないという思いから、女性たちは声を上げ始めたのだ。

戦争は軍事機密だけを「秘密」にして進むものではない。その中で沢山の人の生活が「秘密」の内に侵されていくのだ。

「秘密」は「秘密」であればあるほど、時代の真実を物語るものになる。

「その他」だらけの秘密保護法案では、こんな大切な「秘密」をも永遠に葬り去ることになりかねない。従軍慰安婦だってなかったことにしてしまう国なのだから...

涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、たまねぎを炒める朝。

それは、ニュースで放映される国会の形相と重なり、何ともやるせない朝になった。

夢を見た

自分が人を平気で裏切る小心者だというのは、夢の中でもあまり気持ちのいいものではない。





誰かを助けようとしたのだ。



薄幸の美女そのものの風情を持つ女が酒場にいた。小料理屋のようなカウンターがある店で、それはテレビの刑事ドラマのエンディングに、事件を解決した主人公が美人の女将の手料理を食べるという、そんな感じの店だった。確か夫と二人で飲んでいたのだと思う。表の戸が開いて、暖簾ごとその女性が飛び込んできたのだ。左手だか右手だかを、切られているで、服は血で汚れていた。




私たちは、彼女を助けることにしたようで、次の場面は酒場の2階なのだ。

酒場の2階なのだが、それは小学生の頃林間学校でいった寺の宿坊の2階のような風情だ。

私たちは、誰かから逃げてきた薄幸の美女の傷の手当てのために、外科医である知人を呼ぶことにする。




「えっ?そんなことヤバくないですか?警察に行った方がいいですよ」という彼女を必死で説得して、とりあえず来てもらうことにする。

彼女は実際には外科医ではなくダンサーの知人なのだが、夢の中では外科医ということになっているのだ。



そうして、薄暗い宿坊の2階で、緊急オペが始まるのだが、そこは夢の中ではスルーしている。


どうしてか、夢の中はいつも薄暗い。昼間でもいつでも薄暗いのだ。



で、その薄暗―い部屋で、外科医が彼女に包帯を巻いている時、突然、階段を駆け上ってくる足音が聞こえる。

それも、ひとりやふたりではない。

どたどたと10数名の足音が響いたかと思うと、そこに、坂本竜馬暗殺時の新選組のように刀を振りかざした一群が押し寄せてきた。




私は外科医を守らなければいけないと考えている。

彼女の忠告を無視して、警察に通報することなく、彼女を捲き込んだのだから。

勇敢な私は、彼女の前に手を広げて立ちふさがる格好で、悪漢たちの前に進み出た。



のだが、振りかざされた刀・・・がいつのまにかチェーンソーに変化していたのだが・・・を見た途端、私の心は恐怖に包まれる。




逃げよう!はっきりそう思った。彼女を見殺しにしてでも自分だけ逃げよう!極めて鮮明な意識で私はそう考えた。夢の中でも、その時の思考に関しては、確かなものとしてあった。



そして、逃げたのだ。


逃げる途中には、幼いアルカイダの兵士の持ったノコギリを奪い取り、それを反対に裸の小さなお腹に向けようとしている自分がいた。

さすがに、この蛮行は、どこかで覚醒している私の意識が、夢の私を我に返らせ、阻止することができた。




そこで目覚まし時計の音が、現実の寒い朝へと私を引き戻し、私はベッドからゆっくり起き上がったのだが、どうしたことか、私は実際に外科医の彼女を見殺しにして、自分だけ生還してきたかのような罪悪感に苦しめられることになる。



コーヒー豆を挽いて覚醒を促すが、それでも、自責の念がどうしても抜けきれない。



思い当たることが現実になかったかなぁ?

と考えてみるが、大なり小なり、考えればきりのない小心者の60年だ。

霧の中に包まれた記憶の向こうにいくつも「裏切り」の風景が見え隠れしている。


これらひとつひとつを取り出して、反省するのも方法だが、それには恐ろしい忍耐力が必要になってくる気もする。



まぁ、これからの時間への戒めとして捉えることとして、家を掃除することにした。



という夢の話。








































ある夢のはなし


イスラエルに侵攻されたガザの町だろうか、壊された石の家が立ち並ぶ乾いた街。その真ん中に裸の男が立っていた。


まっすぐ降り注ぐ陽光は、舞い上がる砕けた石や砂の幕で、茶色く色を変えて地面に影を作る。


壊され、ぎざぎざに地面から生えたように息づく石の家の上で、裸の男はうめき声をあげていた・・・ような気もする。


茶色い空気の中、男はまっすぐ天空に手を伸ばし・・そしてうめき声をあげた・・・かもしれない。


それは永遠を感じさせるような長い時間で、男は天に向けた手を下すことをせず、茶色い空を見上げていたのだ。随分と長く。


男からずっと離れたがれきの上で、私はそれでも真正面から男を見つめてた。ずっと穴が開くほど男の裸の胸と天に突きだされた赤みを帯びた掌を見つめていたのだ。



茶色い太陽は、それでも私の頭の先から体全身をそして黒い靴の先までを、刺し抜くように照り付けいて、私の身体は陽炎のようにゆらゆらだらしなく揺れ始めていた。このままこうしていれば、太陽に焼かれて黒こげになってしまうかもしれない。


だが、男は天に差し出した手を下ろそうとはせず、砂漠に根を張るサボテンのように、がれきの家に足を深めていた・・・ので・・・私も茶色い太陽に焼き殺されそうな身で、男を見つめつづけていた。



茶色い太陽は、男も私も、そしてこのがれきの下で命を落としたのだろう、大きな瞳の子どもや、逞しい腕をした男や、黒いスカーフで髪を隠した若い女性や、パイプをくわえた白髭の老人や・・・・そんな気配全てをじりじり照らし続け、熱いい空気が鼻孔からのど奥深く肺を満たし、それらすべての命を焼き尽くそうとしていた。


助けて欲しいと思った。もうこの熱い空気のなか、ひと呼吸もしたくない。と・・・



その時、裸の男は、天から手を下し、その手を私に向けて差し出した。

その手は、次はお前だ・・・と言うように私を指示し、私の鼓動は恐ろしく早く早く鳴り響き始める。私が捉えたのは、まっすぐ私に向けられた男の赤みを帯びた指先と、真っ白な顔に穴のように沈む黒い鋭い瞳の光だ。それらは、すべて、わたしへ、わたしひとりへと放たれたものだった。



やがて、静かな動作で、男はその場にしゃがみ込み、手に何かを掴んで、また静かに立ち上がった。視線の先にはやはり私がいた。


かな動作。時間がなくなるほど静かな視線。


だが、次の瞬間、とても素早く、恐ろしいほど機敏に、男は手の中の何かを私に向けて、強い力で投げつけてきたのだ。

時速150kくらいの・・・力で・・・


男は投げつけて来たものは、大きな石の塊でそれは、高速の波に乗って一直線に私の眉間を一撃した。


もちろん、私はそのまま後ろ向きにまっすぐがれきの中に倒れ込んだ。

ああ、死ぬのだ。茶色い太陽に焼かれる前に、男から投げつけられた一欠片のがれきに倒されて、私は壊された石の家で、砂交じりの茶色い太陽の下で、死ぬのだ。

大きな瞳の子どもや、逞しい腕をした男や、黒いスカーフで髪を隠した若い女性

や、パイプをくわえた白髭の老人や・・・・彼らの魂とひとつになって・・・




それでも良かった。この恐ろしい理不尽に、流されていくしかない命なら、理不尽な太陽の下で、眉間に受けたがれきに倒されるのもいいのかもしれない。

そのまま目を閉じていよう・・・



やがて、微かなつぶやきのように微かな音楽が、流れてきた。それは、コルクの緩んだ水道の蛇口から漏れ続ける水音のように、単調で退屈で澄み渡った透明な音を並べたような音楽だった。この石と砂だけの私のベッドに、じわじわと水が浸み込んでいくように音が流れ続けていた。


それは、もしかしたら朽ちた私の身体から流れ続ける水の音だったのかもしれない。

やがて、浸食した水たちは、がれきの中に、タンポポの花を咲かせるのかもしれない。動物が草を食み、落とされた糞は肥料となり、春に花を咲かせる一本の木を育てるのかもしれない。





起き上がれ・・・そう何かが私を促していた。

大きな瞳の子どもや、逞しい腕をした男や、黒いスカーフで髪を隠した若い女性や、パイプをくわえた白髭の老人や・・・・彼らの魂とひとつになって・・・がれきの下の土の中に朽ちて腐敗し、液体と化して溶けてしまった、その者として、静かに起き上がれ・・・



そう何かが私を促していた。





なので、静かに起き上がったのだ。

桜が咲き、散り初め、花びらを風に舞わせ、新しい葉を枝に芽吹かせて始めた、丘の上に。

春霞の空、遥か西方の砂漠からやって来た砂が、黄色く空気を濁らせてはいたが、それでも春に芽吹く木々の命は美しく、風はこずえを揺らせたその香りを、丘に立つ私に運んできていた。





なので、静かに歩き始めたのだ。

なので、静かに目を開いたのだ。

なので、静かに生き始めたのだ。