西村賢太の「瓦礫の死角」(講談社:2019年12月9日第1刷発行)を読みました。
過去の関連記事を見ると、西村賢太の小説やエッセイなど、13篇を読んでいるんですね。ここのところ間が空いてしまいましたが…。
西村賢太、最近どうしているかなと検索してみたら、「瓦礫の死角」がヒットしました。ほんじゃ、まあ、読んでみるかと購入し、手に取った次第です。
その前に、たまたまTUTAYAでDVDを借りたときに、数合わせで「苦役列車」をまた借りて、前に観てるんですが、また観ちゃいました。原作は西村賢太。そうなんですよ、何度か芥川賞候補になり、「苦役列車」で第144回芥川賞を受賞したんですね。押しも押されぬ芥川賞作家、なんですよ。受賞した時のコメント、「そろそろ風俗へ行こうかと思っていた」が有名ですね。女性にはヒンシュクものでしたが…。
「瓦礫の死角」、本の帯には以下のようにあります。
犯罪、加害者家族の背負う罪なき罪
父の性犯罪により解体した”家族”。その記憶の瓦礫の下から、影が動く。七年の月日を経て、服役を終えようとする”あの人”の影が――。
その逮捕を機に瓦解した家族。刑期を終えようとする父。出所後の夫の復讐に怯える母。家出し、消息不明となった姉。十七歳、無職の北町寛多は、いかなる行動に出るのか――。
犯罪加害者家族の十字架を描く表題作と、その表裏をなすも”不”
連作である「病院裏に埋める」の両篇に加え、快作「四冊目の『根津権現裏』」に、怪作「崩折れるにはまだ早い」(「乃東枯(なつかれくさかるる)」改題)の全四篇を収録、比類なき文学。
本の帯だけでも、これだけのことが書いてあります。もうこれ以上書き足すことは必要ないかな?
「瓦礫の死角」は、以下の四つの短篇からなっています。
瓦礫の死角
病院裏に埋める
四冊目の『根津権現裏』
折れるにはまだ早い
あとがき
「本書は、私にとって十六番目の短篇集と云うことになる。単著としては都合五十七冊目をかぞえる勘定だ」とあります。僕が読んだのは、そのうちの僅か、となります。
さて「あとがき」を見ると、西村賢太を理解する上で重要なことが書いてあります。
「四冊目の『根津権現裏』」は、自身の仕事の重要な柱としている「芝公園六角堂跡シリーズ」の一篇として書いた。この自己の定点観測記は需要があろうがなかろうが、これからも定期的にものする必要がある。むろん、自分の為にである。
「崩折れるにはまだ早い」は、発表時は「「乃東枯(なつかれくさかるる)」との題名であった。初出誌の、旧暦の二十四節気、七十二候を題材に掌篇を書くと云う連続企画に応じた一篇だが、その扱う季節と題名のみは編輯部の方で用意した上でのことだった。短篇の題名として、これはこれで魅力はあるが、単独で切り離すと些かの違和感を覚えたので、この際、自身の思うかたちに改めた。
珍しく、気に入っている内容である。久しぶりにオチを用意しての”私小説の変化球”を意図したが、拙作の中では同人雑誌時代の処女作「墓前生活」や「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」、「芝公園六角堂跡」、「終われなかった夜の彼方で」等と共に、本然の自らの資質によるところの作風が、それなりに表出されたように思う。・・・気に入り過ぎていて、できれば本書の表題作にしたかったと、尚も一抹の未練を抱いているほどである。
小説を読んで、自分でこれ位の文章(書評・感想等)を書ければいいのですが、どう逆立ちしても書けないから仕方がない。自分が思っていたことを言い当てた文章が見つかれば、引用も悪くない。そんなこんなで、久しぶりに西村賢太の小説を堪能しました。で、またぞろ、次に読む西村賢太作品をアマゾンで注文…。
過去の関連記事:
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