西村賢太の「けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集」を読んだ! | とんとん・にっき

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西村賢太の「けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集」(幻冬舎文庫:平成25年9月25日初版発行)を読みました。本の帯には「愛すべき落伍者・北町寛多の鮮烈なる逸脱。」とあります。「自選だからさらに濃い!」と続きます。


本のカバー裏には、以下のようにあります。

十代半ばにして人生に躓き、二十代で本格的に路頭に迷い、三十代では風格さえ漂う底辺人間となった北町寛多。酒を飲めば嫌われる。女への情愛は狂気に化ける。だが、彼が望んでいたのは人並みのささやかな幸せだけだった。十六歳で初の馘首を経験して以降三十年余りにわたる、刮目すべき全力の蠢動を描く、私小説六篇。


帯の裏には、6篇の概要が以下のようにあります。

・貧窶の沼

 17歳の寛多が、アルバイトで雇ってもらった恩も忘れて店主に激昂。

・墓前生活

 狂凍死した私小説家・藤澤淸造に傾倒した貫多は、菩提寺から墓標を譲り受ける。

・けがれなく酒のへど

 ソープランドの女に入れあげる貫多。大金を騙し取られる。

・焼却炉行き赤ん坊

 同棲している女が溺愛するぬいぐるみ「たのすけ」に貫多の怒りが爆発。

・腋臭風呂

 穴場的銭湯に出没する腋臭男をきっかけに、かつてのデリヘル嬢を回想。

・落ちぶれて袖に涙のふりかかる

 無名私小説作家として生きてゆく、諦念と覚悟を赤裸々に吐露。


六角精児の解説が、的確でかつ素晴らしい。

衝撃的に面白かった。

孤独な中卒青年の心の悲鳴が下品にそして滑稽に、束になって襲い掛かって来る。明らかに、これまで読んだことのない類の小説だった。それ以来、すっかり西村賢太氏の小説の虜になった僕は、文庫化されていた彼の作品をすべて読み漁り、西村氏の分身であろう北町寛多に頗る感情移入し続けたのである。

北町寛多は一般的にみて最低の男である。中卒であることにタチの悪いコンプレックスを持ち、親に金をせびり、プライドが高く、女性を物扱いする。そして極めて自分本位な考えの基、気に入らない人間には罵倒の限りを尽くす。友人がいないのも当然である。この「けがれなく酒のへど―西村賢太自選短篇集―」は、そんな社会的不適合者、北町寛多の悲哀や絶望がたっぷり詰まった作品集だ


西村賢太:
1967(昭和42)年7月、東京都江戸川区生れ。中卒。2004(平成16)年に同人雑誌発表の「けがれなき酒のへど」が、『文學界』に転載されてデビュー。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂、解題。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『暗渠の宿』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『廃疾かかえて』『随筆集 一私小説書きの弁』『人もいない春』『苦役列車』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『小説にすがりつきたい夜もある』『一私小説書きの日乗』『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『随筆集 一私小説書きの独語』『(やまいだれ)の歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『痴者の食卓』『東京者がたり』等がある。


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