多和田葉子の「地球にちりばめられて」を読んだ! | とんとん・にっき

とんとん・にっき

来るもの拒まず去る者追わず、
日々、駄文を重ねております。

 

多和田葉子の「地球にちりばめられて」(講談社:2018年4月24日第1刷発行、2018年5月22日第2刷発行)を読みました。

 

今年に入ってからですが、多和田葉子の著作を少しずつ読んでいますが、もう6冊読み、7冊目に入りました。これが先の見えない迷路、だんだん訳が分からなくなり、ますます難しくなってきました。

 

多和田葉子の数ある著作の中で、意識して小説ではない、岩波新書の「言葉で歩く日記」をまず先に読みました。多和田を知るために、こちらから先に読むことがわかりやすいかなと思って…。日独二カ国語で書くエクソフォニー作家が「自分の観察日記」をつけた。各地を旅する日常は、まさに言葉と歩く日々。言葉と出逢い遊び、言葉を考え生みだす、そこにふと見える世界とは?作家の思考を「体感」させる一冊とあります。この「日独二カ国語で書くエクソフォニー作家」というところ、その時は何となく素通りしてしまいましたが…。

 

「エクソフォニー」とはなにか?

「エクソフォニー」という多和田葉子の2003年刊行の本をアマゾンに注文しました(「エクソフォニー――母語の外へ出る旅 (岩波現代文庫)」)。いま配送中、今日着くはずです。「地球にちりばめられて」の読解に、なにかの参考になるんじゃないかと思い、読んでみようと注文しました。

 

「著者からのメッセージ」として、(ちょっと長いけど)多和田は以下のように書いています。

言葉をめぐって,世界は常に動いている.その動き全体を把握するのは,太平洋を泳ぐあらゆる種類の魚の動きを同時につかめと言われるのと同じで,ほとんど不可能に近い.初めは「移民文学」「越境」「クレオール」「マイノリティ」「翻訳」などのキーワードを網にして,魚の群れを捕まえようとしてみた.それがどういうわけか,なかなかうまく行かない.そこで,今度は,自分が魚になって,いろいろな海を泳ぎ回ってみた.すると,その方が書きたいことがうまくまとまって捕らえられることに気がついた.そういう書き方の方が,いつも旅をしているわたしの生活には相応しい.というわけで,本来は抽象名詞の占めている場を,町の名前が埋めることになった.わたし自身も魚なのだから,魚らしく海を泳ぎ歩いて,様々な土地の言語状況を具体的に鱗で感じとるのが一番いい.その感触を自分がそれまで読んだことや考えたことや人から聞いた話と照らし合わせながら,この本を書き進めてみることにした.

 

多和田葉子の「地球にちりばめられて」、本のカバーには、以下のようにあります。

留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。

Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。

誰もが移民になり得る時代、言語を手がかりに人と出会い、言葉のきらめきを発見していく彼女たちの越境譚。

 

正直言って、難しい。なかなか一発で理解することは、僕の中身のうすいアタマでは無理というもの。読んでみると、最初は出てくる人それぞれが、あっち向きこっち向き、バラバラの物語、クヌートとHirukoのラブストーリーかと思ったら、そんなわけないよね、でも最終的にはアルルで「国際研究チーム?」として全員集合、しかもナヌークのスポンサーである”おふくろさん”までいるじゃないですか。これは母語の外へ出る旅 、考え方も生き方も異なる人たちが旅をする、という物語と言えばいいのでしょうか?

 

あれれ、”クヌート”って、多和田の著作「雪の練習生」の主人公で、そしてベルリン動物園の人気者だった実在したホッキョクグマの名前だったんじゃなかったっけ?

 

ラストは以下の通り。

「これは旅。だから続ける」とHirukoが嬉しそうに言うと、ナヌークが深くうなずいた。おふくろの姿はいつの間にかその場から消えていた。「それなら、みんなで行こう」と僕は言った。

 

多和田葉子:
小説家、詩人。1960年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ハンブルク大学大学院修士課程修了。文学博士(チューリッヒ大学)。1982年よりドイツに在住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。1991年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、1993年『犬婿入り』で芥川賞を受賞。2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞、2002年『球形時間』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、2003年『容疑者の夜行列車』で伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞、2005年にゲーテ・メダル、2009年に早稲田大学坪内逍遙大賞、2011年『尼僧とキューピッドの弓』で紫式部文学賞、『雪の練習生』で野間文芸賞、2013年『雲をつかむ話』で読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞など受賞多数。2016年にドイツのクライスト賞を日本人で初めて受賞。著書に『ゴットハルト鉄道』『飛魂』『エクソフォニー 母語の外へ出る旅』『旅をする裸の眼』『ボルドーの義兄』『献灯使』『百年の散歩』などがある。

 

過去の関連記事:

多和田葉子の「雪の練習生」を読んだ!

多和田葉子の「飛魂」を読んだ!

多和田葉子の「百年の散歩」を読んだ!

多和田葉子の「犬婿入り」を読んだ!

多和田葉子の「献灯史」を読んだ!

多和田葉子の「言葉で歩く日記」を読んだ!