国立西洋美術館で「マーグ画廊と20世紀の画家たち―美術雑誌『デリエール・ル・ミロワール』を中心に」を観てきました。
フランス北部アーズブルックに生まれたエメ・マーグ(1906-1981)は、南フランスのニームの美術学校でリトグラフを学んだ後、カンヌで刷り師となり、1932年には妻マルグリットと共にラジオや家具も販売する版画工房を開設した。1936年以降、「アルテ」という名の画廊として次第に美術作品を取り扱うようになると、マーグは画商として頭角を現し、ついに1945年12月、パリにマーグ画廊をオープンさせる。同画廊には本展で取り上げる6人の画家以外にも、フェルナン・レジェ、アルベルト・ジャコメッティ、アレクサンダー・コールダーといった20世紀を代表する作家たちが名を連ね、彼らはみなマーグが創刊した美術雑誌「デリエール・ル・ミロワール」(第1-253号、1946-1982年、パリ、マーグ出版)のためのオリジナル・リトグラフを制作した。マーグ夫妻と作家たちの豊かな交流の結果、1964年、ニース近郊のサン=ポール・ド・ヴァンスに、マルグリット&エメ・マーグ財団美術館が誕生する。美術館はマーグ画廊ゆかりの作家たちの重要なコレクションを所蔵し、その広い敷地には、彼らの特別な協力を得て制作された彫刻や壁画などが随所に設置されている。マーグ夫妻の死後、同時代美術の興隆に情熱を傾けた二人の遺志は、長男アドリアン、孫のイザベルとヨーヨらに受け継がれた。マーグ画廊、マーグ出版、そして財団美術館は、現在もマーグ家によって運営されている。
ピエール・ボナール
「パリの生活情景」:上から見た街角、1899年
「インゼル・ポートフォリオ」:大通り、1900年
「ラ・ルヴュ・ブランシュ」誌
のためのポスター(表紙)、1894年
アンリ・マティス
ジョルジュ・ブラック
「小さなキュビスムのギター
(テーブルの上のギター)」1909-10年(1912年発行)
「コンポジション(コップのある静物)」1912年891950年発行
マルク・シャガール
オペラ座、ベルシー河岸、ノートルダムの怪物たち」1954年
ジョアン・ミロ
ワシリー・カンディンスキー
左:「小さな世界」:Ⅰ 右:「小さな世界」:Ⅱ
左:「小さな世界」:Ⅲ 右:「小さな世界」:Ⅳ
「白の上にⅡ」のための習作
「マーグ画廊と20世紀の画家たち」
パリのマーグ画廊は、エメ・マーグとその妻マルグリットによって、第二次世界大戦終結直後の1945年に設立されました。20世紀を代表する芸術家たちと親交を結ぶとともに、若手の芸術家にも積極的に発表の機会を提供することで、マーグ画廊は戦後フランスにおいて同時代美術を牽引する有数の大画廊へと成長を遂げます。
もともとリトグラフの刷り師で、戦前には小さな版画工房を営んでいたエメ・マーグは、出版・印刷事業にも並々ならぬ情熱を注ぎ、1946年に美術雑誌『デリエール・ル・ミロワール』を創刊します。「鏡の裏」という意味を持つこの雑誌は、マーグ画廊で開催される展覧会に合わせて編集された展覧会カタログでもあり、1982年の終刊までに全253号が刊行されました。上質な版画による複製図版や、同時代の名だたる文筆家による詩や評論などが組み合わされ、また芸術家によって同誌のために新たに制作されたオリジナルのリトグラフが数多く収録されました。
本展では、『デリエール・ル・ミロワール』に登場するマーグ画廊とゆかりの深い画家たちの中から、ピエール・ボナール、アンリ・マティス、ジョルジュ・ブラック、マルク・シャガール、ジョアン・ミロ、ワシリー・カンディンスキーの6人を取り上げます。画廊主マーグとそれぞれの画家たちとの関係に光を当てながら、『デリエール・ル・ミロワール』に収録されたリトグラフを含む約50点の作品を通して、新しい芸術表現を目指した20世紀美術の世界をご紹介します。
「国立西洋美術館」ホームページ