LIXILギャラリーで「戸田浩二展 ―聖水―」を観た! | とんとん・にっき

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LIXILギャラリーで「戸田浩二展 ―聖水―」を観てきました。筑波大学体育専門学群を卒業後、実業団のサッカー選手から陶芸の道に入った異色の陶芸家です。


展覧会詳細:

LIXILギャラリーでは、2017年4月27日(木)~6月27日(火)の期間「戸田浩二展 ―聖水―」を開催します。
戸田浩二氏は笠間の陶芸家伊藤東彦氏に師事し、2002年より薪窯を築いて制作をしています。その作品は焼き締め技法による装飾を排した端正な花器や水瓶などで、いずれも金属を思わせる重厚な肌合いと仏具を思わせる凛としたかたちが荘厳な雰囲気をもつ作品です。戸田氏は、須恵器や中国の青銅器に魅かれてその作品のモチーフとしています。
2013年からはニューヨークでも定期的に作品展を開催するなど人気の高さが伺われます。本展では、仏教の聖水を入れる、水瓶や水盤、花器など祈りのこころを象徴とした清涼感に包まれた作品10点を展示します。


見どころ
凛として厳かで平らかな花器や水瓶
 
戸田浩二氏は筑波大学体育専門学群を卒業後、実業団のサッカー選手から陶芸の道に入りました。陶芸は自然の中にあって一人でできることが理由のひとつだったと言います。その後製陶所を経て、笠間の陶芸家 伊藤東彦氏に学び、2002年に薪窯を築きました。

戸田氏の作品は焼き締め技法でごく軽く薄く成形され、鋭角的で装飾のない端正なかたちが、仏具や祭具を連想させます。戸田氏は、師から良いものをたくさん見るように教えられて始めた長い美術館巡りの中で、中国の青銅器など、千年以上も昔に神事や祭事の捧げものとして作られた作品に惹かれることに気づきました。本展で展示される作品には、神々への捧げもののような神聖な精神の宿る作品を制作したいとの願いが込められています。
最近では、高度な成形技術のいる球体を制作するなど新たな表現も見られ、さらなる高みを目指し技術に磨きをかけています。
本展のサブタイトル「聖水」は、仏教において高僧が特別な修法で浄化した水のことで、霊性を帯びた水を意味します。本展では、その聖水を入れる瓶、盤、水滴のかたちのような花器「Sphere」など、祈りの心を象徴する10点を展示します。


以下、展示作品


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戸田浩二:略歴
1974 愛媛県西条市に生まれる
1996 筑波大学体育専門学群卒業
1998 伊藤東彦に師事(~2002)
2002 茨城県笠間市に薪窯を築く
個展(ギャラリー曜燿/笠間)
2006 伝統工芸新作展 入選
2007 日本陶芸展 入選
2009 東日本伝統工芸展 入選
2010 個展(祥雲/銀座)
2011 国際陶磁器フェスティバル美濃 入選
個展(アートフェア東京/東京国際フォーラム)
2012 GEMSTONE‐笠間の4人(茨城県陶芸美術館)
個展(東美アートフェア/東京美術倶楽部)
2013 グループ展(MIKA GALLERY/ニューヨーク '14 '15 '16 '17)
個展(アートフェア東京/東京国際フォーラム)
個展(ぎゃらりぃ思文閣/京都)
グループ展(東美特別展/東京美術俱楽部)
2014 個展(東美アートフェア/東京美術倶楽部)
2015 個展(祥雲/銀座)
2016 メイファールアン財団(タイ)にて制作・指導
グループ展(森岡書店/銀座)
2017 個展(アートフェア東京/東京国際フォーラム)


【パブリックコレクション】

 プリンストン大学美術館、デトロイト美術館、イェール大学美術館


「戸田浩二展-聖水-」に寄せて

戸田浩二氏の工房を訪ねると、そこはやきものを制作する作業場というよりも、神社仏閣にいるような深閑とした空気を感じる。それは、きちんと整頓された工房から生まれる清涼感ともいえよう。戸田氏の作品が、みな独特な空気感に包まれているのは、そうした工房の中で制作されているからであり、その清涼感を戸田氏自身が求めて止まないからである。

戸田氏は1974年、愛媛県西条市に生まれた。中学生でサッカーを始め、高校、大学とサッカー一筋、筑波大学体育専門学群卒業後はプリマハムFC土浦(現在、水戸ホーリーホックの始祖の一つ)に入団した。しかし、サッカー選手としての自分に限界を感じ1年でやめ、福島のペンションで住み込みのアルバイトを始めた。その後、笠間の仲田製陶に1年勤め、さらに陶芸家の伊藤東彦氏に師事し、アシスタントとして4年を過ごした。そして、2002年、笠間に薪窯を築いて独立した。

現在のようなシンメトリーで、装飾を排した端正な形の作品が誕生したのは、伊藤氏から「いいものを見なさい」といわれ、美術館に通って須恵器や中国の古い青銅器などを見て回ったことが、いまの自分の造形の基礎になっているという。

例えば、水瓶で思い出すのは、奈良法隆寺の観世音菩薩が手にする水瓶だが、戸田氏の作品を代表する《焼締水瓶》からは、そうした仏教美術が持つ凛とした緊張感を感じる。この玉子形の胴と細い首の微妙なバランスを表現するには、かなり高度な技術を要する。戸田氏の焼締陶は、金属器のように薄く、美しいフォルムを形成している。しかし、その質感は金属器よりも温かくやさしい。その理由は、自分で高萩や桜川から採ってきた土にこだわって、成形しているからであろう。「ただ単に僕が憧れる形を作るのではなく、その中に宿る精神のようなものを表現したいと思っています」と戸田氏は語る。 
最近では《Sphere》(球体)と題した焼締オブジェを制作している。球体を陶で焼成するのは非常に難しい。なぜなら、すぐに形がへたってしまうからである。しかし、敢えてその難しさに戸田氏は挑戦する。それは、子供の頃から繰り返し体に染み込ませてきた、彼のチャレンジ精神なのであろう。

サブタイトルの「聖水」とは、仏教においては高僧が特別な修法・法具で浄化した水のことで、すなわち霊性を帯びた水をいう。戸田氏が制作する《焼締水瓶》はその聖水を入れた瓶であり、《焼締水盤》はその聖水を満たした盤、《Sphere》は聖水の水滴の形を表わした球体ともいえる。今展には、そうした祈りの心を象徴した清涼感に包まれた水瓶、水盤、球体、花器など10点が展示される。

 森 孝一(美術評論家・日本陶磁協会常任理事)


「LIXILギャラリー」ホームページ


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