LIXILギャラリーで「滝口和男展」を観た! | とんとん・にっき

とんとん・にっき

来るもの拒まず去る者追わず、
日々、駄文を重ねております。

taki17

LIXILギャラリーで開催している「滝口和男展」へ行ってきました。


LIXILギャラリーでは2016年5月10日(火)~6月28日(火)の期間「滝口和男展 -無題から-」を開催します。 滝口和男氏は、1980年代より張りのある曲線フォルムをもつ抽象作品「無題」を代表作として数々の賞を受賞してきました。そして2000年頃からは「とうげいずかん」や「ものじてん」など言葉をモチーフとした具象物の小品を制作しています。「無題」と「言葉」は対極にあるようでいて、2つは作家の根幹で繋がっています。そして、この春、滝口氏は新しい作品を制作しました。 本展では、2種類の土を練り合わせたマーブル模様の抽象造形作品「無題」(2016)、新作8点を展示します。



以下、展示作品

taki14

taki12 taki11

taki5 taki4

taki3 taki2

taki1

「滝口和男展 無題から」

京都に窯を構え、国内外で活躍する陶芸家。1枚の土板の四隅を起こしてふっくらと丸みのある造形に仕上げる「無題」シリーズで知られる。今展では、2種類の土を練り込み、マーブル模様にした「無題」の新作8点を展示する。

朝日新聞:2016年5月24日


taki15


「滝口和男展-無題から-」に寄せて
滝口和男の<無題>作品は、5ミリほどの厚みのある一枚の土の板から起される。張りのあるふっくらとした曲面、左右の鋭い突起、底部の三方に突き出た足の膨らみ、そして上部に作られた不定形な口、それらのすべてが、土からかたちを構築していく中で必然的に生まれたフォルムである。彼にとって、板起こしの技法とそれによって生まれるフォルムとは、じつは分離不可能な〝技術〟と〝かたち〟なのである。
滝口は、土をやきものを作るための単なる素材ではなく、もっと深い意味での〝大地〟という概念で捉えようとしている。大地である土を立ち上げることによって生まれるフォルム、そのフォルムの中に包み込まれるものは、もはやうつろな容器ではなく、内部を充たしている存在によって膨らんだ外形といってもいいだろう。
30歳代の滝口は、こうした様々なフォルムをもつ抽象作品によって、1985年には日本陶芸展外務大臣賞、86年には中日国際陶芸展準大賞、89年には日本陶芸展秩父宮賜杯グランプリ、90年にはMOA美術館岡田茂吉賞展優秀賞、91年には五島記念文化賞美術新人賞および日本陶磁協会賞を受賞し、若手陶芸家のホープとして注目された。
ところが、五島記念文化賞により留学した英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでの英語を中心とした生活体験の中で、いままで疑うこともなく自分が日本語でものを考え、作品を作ってきたことに気付いた。その「人間は言葉で考え作品を構築している」という再認識が、のちの言葉を起点とした独自の小作品の制作へと発展する。しかし、帰国した滝口がまず制作したのは、これまでの食器の概念に捉われない、言葉をもった色とりどりの器たちであった。言葉を起点とした小作品を本格的に制作するのは、99年の「とうげいずかん」、2000年の「ものじてん」からである。滝口は、技術によってではなく、言葉をモチーフにすることによって、従来のやきものの常識から解放された。その作品がどれも懐かしく愉しいのは、それが滝口の心象風景ともいうべき記憶(言葉)から生まれ、その作品を通して、また見る側の記憶(言葉)へと伝えられていくからである。
この言葉を起点とした小作品の対極にあるのが、作品から言葉を排除することによって生まれた一連の<無題>作品である。この沈黙の淵から生まれた抽象造形は、自身の内面をフォルムによって表現したものであり、同時に滝口の心の肖像でもある。そして、言葉を起点とした小作品の背景には沈黙があり、その対極にある<無題>は沈黙の淵から生まれた作品であり、この2つは共に表裏一体の関係にある。滝口の<無題>は、無地の抽象造形から出発し、やがて器体の表面に小紋のような模様や様々装飾を試みるが、今展の作品は、2種類の土を練り込んだ陶土からかたちを構築していく中で必然的に生まれたマーブル模様であり、内部に充満した空気圧によって破裂したような力強い口造りとなっている。この〝かたち〟と〝模様〟の融合によって、滝口は新しい局面に至ったといってもいいだろう。
森 孝一(美術評論家・日本陶磁協会常任理事)

「LIXILギャラリー」ホームページ


過去の関連記事:

LIXILギャラリーで「伊藤慶二展<つら>シリーズ」を観た!

LIXILギャラリーで「西野康造展 Space Memory」を観た!

LIXILギャラリーで「酒井稚恵展 ほうき星、あらわる」を観た!
LIXILギャラリーで「磯野迪子展」、「渋谷英一展」を観た!
LIXILギャラリーで「藤井秀全展」、「毛塚友梨展」を観た!

LIXILギャラリーで「一ッ山チエ展」、「村上愛展」を観た!
LIXILギャラリーで「吉田夏奈展」、「都丸篤子展」を観た!
INAXギャラリーで「堂東由佳展」、「村田彩展」展を観た。」
INAXギャラリーで「桝本佳子」展、「今野朋子」展を観た。

INAXギャラリーで「加藤大介展―今は見える―」を観た!
INAXギャラリーで「ガレリア セラミカの夏 器・小さなオブジェ・道具展」を観た!
INAXギャラリーで「進藤環展―クロックポジション―」を観た!

INAXギャラリーで「西村伊央展」、「甲田千晴展」を観た!
INAXギャラリーで「三井美幸展」と「窪愛美展」を観た!
INAXギャラリーで「中山明日香展」、「松元久子展」を観た!
INAXギャラリーで「松井亜希子展」、「田中礼展」を観た!
INAXギャラリーで「英ゆう展」と「黒川徹展」を観た!
INAXギャラリーで「青木千絵展」と「高柳むつみ展」を観た!
INAXギャラリーで「若江漢字展」と「森庄平展」を観た!