難波和彦の「メタル建築史 もうひとつの近代建築史」(鹿島出版会・SD選書:2016年11月25日第1刷発行)を読みました。
上に挙げたのは鈴木博之の「建築の世紀末」、書かれたのは1977年、鈴木の「建築史家」として世に出るきっかけになった著作です。難波はこの本に「メタル建築史」を書くきっかけを与えられたという。近代建築以前の建築がどのように近代建築へと展開していったか、「建築の世紀末」は、18世紀から19世紀末にかけてのイギリスとフランスの建築史です。モダニズム建築が否定しようとした過去の歴史様式や装飾芸術の再評価に向かう潮流でした。
一方で、建築家という職能が社会的に成立していった歴史でもある、と難波はいう。その背景として、技術の発展と経済力の拡大、大都市の発生と新しい建築類型の出現がありました。であるならば、技術の視点から「建築の世紀末」を読み解こうじゃないか、と難波はいう。伝統的な建築材料から、金属、つまり「メタル」を取り上げて、歴史を書き換えようとする試みです。
その方法として、難波は「建築の四層構造」、そして「サスティナブル・デザイン」を提唱します。2009年に難波は「建築の四層構造 サスティナブル・デザインをめぐる思考」を出版します。もうここには、難波の基本的な建築に対する考え方や、「メタル建築史」のほとんど、「アルミエコハウス」や「箱の家」等々が収められています。
鈴木博之は1945年生まれ、難波和彦は1947年生まれ、同じ東京大学です。聞くところによると、東京大学の教授に難波を推薦したのは鈴木だったとか?
本の帯には、以下のようにあります。
技術史から見たモダニズム建築。
鋳鉄からアルミニウムまで、メタルによる近代建築史の集大成。材料と構法からエネルギー設備、建築類型から形態と空間に至る総合的な建築デザイン思想を解析。21世紀の建築を見据えたサステイナブル・デザインの提唱。
目次
序章 建築の四層構造
メタル建築史を総合的にとらえるマトリクス
第一章 技術の世紀末
第二章 十九世紀 芸術から技術へ
第三章 モダニズム建築運動 技術の建築化
第四章 盛期モダニズム 技術の世界化
第五章 ポストモダニズムからハイテックへ 技術の成熟化
第六章 ハイテックからエコテックへ 技術のサステイナブル化
補論1 アルミニウム建築 もうひとつのメタル建築
補論2 ミース問題 コンポジションとコンストラクション
補論3 システム化と工業化の目的 構法と機能
難波和彦:
建築家、東京大学名誉教授。1947年大阪生まれ。東京大学建築学科卒業、同大学院博士課程修了。工学博士。大阪市立大学教授、東京大学大学院教授を歴任。現在、難波和彦+界工作舎代表。
主著に「戦後モダニズム建築の極北 池辺陽試論」彰国社、「箱の家 エコハウスをめざして」NTT出版、「建築の四層構造 指すティナブル・デザインを巡る思考」INAX出版、「東京大学建築学科難波研究室活動全記録」角川学芸出版、「新しい住宅の世界」放送大学教育振興会、「進化する箱」TOTO建築叢書、「建築家の読書塾」みすず書房、訳書に「レム・コールハウス・OMA驚異の構築」鹿島出版会ほか。
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難波和彦の「建築の理・難波和彦における技術と歴史」を読んだ!
難波和彦の「建築の四層構造 サスティナブル・デザインをめぐる思考」が届いた!
「建築の理(ことわり)―難波和彦における技術と歴史」
2010年10月10日第1版発行
編著者:難波和彦、伊藤毅、鈴木博之、佐々木睦朗、石山修武、前真之
発行所:株式会社彰国社
「東京大学建築学科難波研究室活動全記録」
発行日:2010年9月25日初版発行
著者:東京大学建築学科難波研究室
発行所:株式会社角川学芸出版
発売元:株式会社角川グループパブリッシング
「建築の四層構造サスティナブルデザインをめぐる思考」
発行日:2009年3月1日初版発行
著者:難波和彦
「建築家は住宅で何を考えているのか」
東京大学建築デザイン研究室編
著者:難波和彦・千葉学・山代悟
発行:2008年9月30日第一版第一刷
定価:本体1400円(税別)
発行所:PHP研究所
「箱の家に住みたい」
著者:難波和彦
発行:2000年9月25日初版発行
定価:本体1800円+税
発行所:王国社
朝日新聞:2017年1月15日