「東京大学建築学科 難波研究室 活動全記録」が届いた! | とんとん・にっき

「東京大学建築学科 難波研究室 活動全記録」が届いた!

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アマゾンに注文しておいた「東京大学建築学科 難波研究室 活動全記録」 が届きました。本の帯には、安藤忠雄の推薦文がありました。「何よりも情報量の多さに驚く。建築家を志す若者たちが、この研究室で何を学び、何を組み立てたのか。新しい時代の息吹を感じた」とあります。あれっ、安藤の前に書かれている肩書は「建築家/東京大学特別栄誉教授」となっていて、「東京大学名誉教授」ではないんですね? あるいは誤植ということも考えられますが、その辺に事情は僕にはわかりません。いずれにせよ難波和彦は安藤忠雄の後任だったと思いますが、難波は東京大学工学部建築学科の池辺陽研究室の出身、生粋の東大の血をひく人ですが、安藤は事情はわかりませんが、落下傘の如く東大に舞い降りた人です。ちなみに難波和彦の後任として(かどうかはわかりませんが)、東京大学教授に2009年より就任したのは隈健吾です。


去年は鈴木博之+東京大学建築学科編の「近代建築講義」 という本を今回と同じように「届いた」と紹介しましたが、あれは鈴木博之が東京大学を辞めるときに出された「定年退職本」でした。この本の帯にも「安藤忠雄氏推薦!」とあります。一歳年下の難波和彦が退職したのは今年、2010年3月末、同じように「定年退職本」として出されたのが、ここに紹介する「東京大学建築学科 難波研究室 活動全記録」です。「退職本」、東京大学にはそんな慣例があるのでしょうか、僕には詳しいことはわかりません。たしか安藤忠雄もそれに類した本を出されていたように思いますが、僕は安藤の本はほとんど購入していません。


ふと思い出したのは香山壽夫が出した「建築意匠講義」 という本、たしか持っていると思い本棚を探したら出てきました。1996年11月25日初版、となっています。香山の東京大学での「建築意匠」の講義をまとめたものです。これが香山の退職本なのでしょうか。いずれにせよ1997年に香山は名誉教授になっています。香山の本は、「建築家のドローイング」という本もありますが、これは1994年11月21日初版とあります。香山はその後も著作を出し続けていますが、東大退職後、明治大学、そして放送大学へ移り、2007年に定年退職しています。


いずれにせよ、「東京大学建築学科 難波研究室 活動全記録」 は、研究、教育、デザイン、建築に関わるあらゆる活動を高密度で展開した最高峰、最先端の活動の記録です。大江健三郎が言うように、1章を1か月かけてじっくり読んで、東京大学の建築教育を体感したいと思います。他に「建築の理(ことわり) 難波和彦における技術と歴史」 という本も出されたようですが、アマゾンに注文してあるのですが、まだ僕の手元には届いていません。



難波和彦の略歴を、以下に載せておきます。

1947年、大阪生まれ。1969年、東京大学建築学科卒業。1974年、同大学院博士課程修了。1977年、一級建築士事務所界工作舎設立。1996年、一級建築士事務所株式会社難波和彦+界工作舎代表取締役。東京大学建築学科、早稲田大学建築学科、東京工業大学建築学科講師、大阪市立大学建築学科教授を経て、2003年9月より東京大学工学系研究科建築学専攻教授。2010年、東京大学名誉教授。


さて、「東京大学建築学科 難波研究室 活動全記録」は、難波和彦が東京大学で関わった6年半の活動記録です。安藤が言うように「何よりも情報量の多さに驚く」。この本の目次を、下に載せておきます。


第1章「つくる」

    留学生との協働国際コンペ、海外の大学とのワークショップ。

    研究室の主要活動である建築デザインの記録。

第2章「研究する」

    民間企業との共同研究から、研究プロセスのHP上での公開へ。

    基礎的な研究の活動記録。

第3章「練習する」

    卒業設計の公開講評会から、他大学との合同講評会へ。

    設計教育をグラスボックス化した軌跡。

第4章「読み解く」

    他研究室との「読書会バトル」から、「建築見学会」まで。

    学生たちの自主活動記録。

第5章「聴く」

    サスティナブル・デザインの理論と歴史を紹介する大学院講義から、

    学外講師による特別講義まで。

第6章「書く」

    難波研究室の学生による密度の高い卒業論文・修士論文・博士論文のうち、

    主要論文を紹介する。

第7章「語る」

    東京大学教授就任までの在野の活動からサスティナブル・デザインを

    研究テーマとする経緯まで。難波和彦教授の最終講義。


難波研究室必読書30冊

難波和彦が30~40代に読んだ本だが、少なくても3回以上は読み返したもので、その度に新しい発見があったという。東京大学に就任したときに、学生に読んでもらいたいと思い、「難波研必読書20冊」としてリストアップ、今回10冊を追加しものです。


1)『デザインの鍵』 池辺陽:著 丸善 1979
2)『空間・時間・建築』 ジークフリート・ギーディオン:著 太田實:訳 丸善 1969
3)『第一機械時代の理論とデザイン』 レイナー・バンハム:著 石原達二+増成隆士:訳 原広司:校閲 鹿島出版会 1976
4)『環境としての建築』 レイナー・バンハム:著  堀江悟郎:訳 鹿島出版会 1981
5)『建築の解体』 磯崎新:著 鹿島出版会 1997
6)『近代建築への招待』 ユリウス・ポーゼナー:著 田村都志夫:訳 多木浩二:監修 青土社 1992
7)『バックミンスター・フラーのダイマキシオンの世界』 バックミンスター・フラー/ロバート・W・マークス:共著  木島安史+梅澤忠雄:訳 鹿島出版会 1978
8)『パタン・ランゲージ』 クリスリトファー・アレグザンダー:著  平田翰那:訳 鹿島出版会 1984
9)『テクトニック・カルチャー』 ケネス・フランプトン:著 松畑強+山本想太郎:訳 TOTO出版 2002
10)『マニエリスムと近代建築』 コーリン・ロウ:著 伊東豊雄+松永安光:訳 彰国社 1981
11)『隠喩としての建築』 柄谷行人:著 岩波書店 2004
12)『複製技術時代の芸術』 ヴァルター・ベンヤミン:著 佐々木基一:訳 晶文社 1970
13)『錯乱のニューヨーク』 レム・コールハース:著 鈴木圭介:訳 ちくま学芸文庫 1999
14)『エッフェル塔試論』 松浦寿輝:著 ちくま学芸文庫 2000
15)『ゲーデル・エッシャー・バッハ』ダグラス・R・ホフスタッター:著 野崎昭弘+はやしはじめ+柳瀬尚紀:訳 白揚社 1985
16)『精神と自然』 グレゴリー・ベイトソン:著 佐藤良明:訳 新思索社 2001
17)『野生の思考』 クロード・レヴィ=ストロース:著 大橋保夫:訳 みすず書房 1976
18)『暗黙知の次元』 マイケル・ポランニー:著 高橋勇男:訳 ちくま学芸文庫 2003
19)『棒馬考―イメージの読解』 エルネスト・H・ゴンブリッチ:著 二見史郎+横山勝彦+谷川渥:訳 勁草書房 1988
20)『偶然と必然』 ジャック・モノー:著 渡辺格+村上光彦:訳 みすず書房 1972
21)『建築の多様性と対立性』 ロバート・ヴェンチューリ:著 伊藤公文:訳 鹿島出版会 1982
22)『合理主義の建築家たち モダニズムの理論とデザイン』 デニス・シャープ:編 彦坂裕+菊池誠+丸山洋志:訳 彰国社 1985
23)『建築の世紀末』 鈴木博之:著 晶文社 1977
24)『生きられた家 経験と象徴』 多木浩二:著 岩波書店 2001
25)『思想としての日本近代建築』 八束はじめ:著 岩波書店 2005
26)『科学革命の構造』 トーマス・クーン:著 中山茂:訳 みすず書房 1971
27)『基礎人間学 上/下』 ロワイユーモン人間科学研究センター:編 荒川幾男:訳 平凡社 1979
28)『システムの科学』 ハーバート・サイモン:著 稲葉元吉+吉原英樹:訳 パーソナルメディア 1987
29)『薔薇の名前 上/下』 ウンベルト・エーコ:著 川島英昭:訳 東京創元社 1990
30)『20世紀の歴史 上/下』 エリック・ホブズボーム:著 河合秀和:訳 三省堂 1996


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