難波和彦の「建築の四層構造 サスティナブル・デザインをめぐる思考」が届いた!
難波和彦の「建築の四層構造 サスティナブル・デザインをめぐる思考
」(発行日:2009年3月1日初版発行、発行所:INAX出版)については、ほぼ1年前に出たことは知っていました。やっとアマゾンに注文したというわけです。パラパラとめくってみましたが、とりあえずここで紹介しておきます。鈴木博之の退職記念本「近代建築論講義」をここで紹介したときに、鈴木博之は1945年東京都生まれで、この本をとりまとめた難波和彦は鈴木の1年後輩にあたり、従って、来年には定年退職ということになります、と書きました。その難波和彦もこの3月で定年退職しました。現在、退職記念本を執筆中だとか。
難波和彦とはどんな人か? この本の奥付には、以下のようにあります。1947年生。建築家。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授。(株)難波和彦+界工作舎主宰。作品=なおび幼稚園、「箱の家」シリーズなど。著書=「建築的無意識」(住まいの図書館出版局/1991)、「戦後モダニズム建築の極北―池辺陽試論」(彰国社/1999)、「箱の家に住みたい」(王国社/2000)、「『箱』の構築」(TOTO出版/2001)、「箱の家―エコハウスをめざして」(NTT出版/2006)など。
目次は以下の通り。
第1部 現代住宅の諸問題
第2部 建築的無意識
1 「エイリアン」と「タイムレス」
2 ハイテック・マトリクス
3 機械としての建築
4 建築的無意識
5 無重力についての思考実験
6 機能主義・再考
第3部 サスティナブル・デザイン論
1 建築の四層構造
2 モデュールの現在
3 クリストファー・アレグザンダー再考
4 建築的無意識・再論
5 技術と歴史
第4部 「アルミエコハウス」と「箱の家」の実践
1 アルミエコハウスの開発と実験
2 「箱の家」の展開
昨年、難波和彦は「建築家は住宅で何を考えているのか」という新書版の本をとりまとめました。僕は難波和彦と同年代なので、その時代時代に難波の書いたものはだいたい読んでいました。この「建築の四層構造―サスティナブル・デザインをめぐる思考」は、過去の論考を並べ直し、それに新たに「建築の四層構造」を加えた、難波和彦の建築活動の集大成のような本です。「これからの建築のあり方を、サスティナブル・デザインの視点から検討する試み」と、難波は述べています。
第一部では、サスティナブル・デザインの視点から、現代の住宅デザインに於いて解決しなければならない問題がリストアップされ、それらの問題にどう取り組むべきかが論じられています。第二部では、1980年代に難波が書いた論文の再録で、難波の試行の出発点になったものが網羅されています。第三部では、第二部で考えた一連のテーマをさらに広い視点から検討したもので、サスティナブル・デザインの問題を理論的に体系化することを試みています。第四部では、アルミ合金を主構造とする「実験住宅アルミエコハウス」と、1995年から今日まで難波が継続して取り組んでいる「箱の家シリーズ」について詳細に紹介されています。第三部まではサスティナブル・デザインの「理論編」なら、第四部はサスティナブル・デザインの「適用編」となるわけです。
最近では取り上げられることも少なくなりましたが、日本で唯一、盈進学園東野高校を設計したことのある、クリストファー・アレグザンダーの幾つかの論文について纏めていることは、ここに特筆しておきます。また、映画「エイリアン」についても詳細な検討がなされており、映画好きの難波の面目躍如と言えるでしょう。しかし、結果としてそうなってしまったのでしょうが、彼の恩師である池辺陽の存在が大きいと思われます。池辺陽の敷いたレールを忠実にしかも着実に進んで来たのが難波であり、そのレールからほとんど一歩も踏み出さなかったとも言えます。歴史にもしもということがないのは言うまでもありませんが、住宅だけでなく、もっと数多くの建築の設計に携わってもらいたかったとも思います。難波に言わせれば、「これからだ」と言いながら、帽子を被り、背中に「タイムレス」と書かれたジャンパーを着て、神宮前あたりを闊歩しているかもしれません。
「建築家は住宅で何を考えているのか」
東京大学建築デザイン研究室編
著者:難波和彦・千葉学・山代悟
発行:2008年9月30日第一版第一刷
定価:本体1400円(税別)
発行所:PHP研究所
「箱の家に住みたい」
著者:難波和彦
発行:2000年9月25日初版発行
定価:本体1800円+税
発行所:王国社
「建築的無意識・テクノロジーと身体感覚」
著者:難波和彦
発行:1991年4月1日第一刷
定価:1860円(本体1806円)
発行所:住まいの図書館出版局