國分巧一郎+千葉雅也の「言語が消滅する前に」を読んだ! | とんとん・にっき

國分巧一郎+千葉雅也の「言語が消滅する前に」を読んだ!

 

國分巧一郎+千葉雅也の「言語が消滅する前に」(幻冬舎新書:2021年11月25日第1刷発行)を読みました。

 

言語が消滅する前に

「人間らしさ」を以下に取り戻すか?

 

人間が言語に規定された存在であることは、二十世紀の哲学の前提だった。二十一世紀に入って二十年が過ぎたいま、コミュニケーションにおける言葉の価値は低下し、<言語を使う存在>という人間の定義も有効性を失いつつある。確かに人間は言語というくびきから解き放たれた。だが、それは「人間らしさ」の喪失ではなかろうか?―情動・ポピュリズム・エビデンス中心主義の台頭、右・左ではない新たな分断。コロナ禍で加速した世界の根本変化について、いま最も注目される二人の哲学者が、深く自由に精緻に語り合う。

 

「本書には2017年以降の私たちの対話が収められている。それぞれは独立して企画されたものであって、五つの対話を貫くテーマが設定されていたわけではない。ところが五つを合わせて読み返してみると、私たち二人がずっと言語を論じていたことが分かった。しかもそこには一貫して、言語が何らかの仕方で消滅しようとしていることへの危機意識が読み取られた」

―國分功一郎「はじめに」

 

「僕たちはここで、たんに主張を交換しているのではなく、ひとつひとつのキーワード、概念について解釈をめぐらせている。それは今や古風とも言えるやり方かもしれず、今後ますます、一単語や引用句にこだわって話をできる機会は減っていくのかもしれない。この対談自体が、古き良き「言語の時代」の記録になるのかもし終わりに

―千葉雅也「おわりに」

 

目次

はじめに 國分巧一郎

第一章 意思は存在するのか

  ―「中動態の世界」から考える

  「する」か「される」かではない行為

  意思という概念の矛盾

  依存症からの問いかけ

  文法には思想的な意味がある

  古典語を勉強する魅力

  勉強には中動態的な良さがある

  法律的発想で取りこぼされるもの

  近代的デカルト方式に対抗したい

  アレントがたどりついた「非合理的な意思」

  「無からの創造」を認めるのか

  プロセスの中にある「中断」

  考えるディスポジションを育てる民主主義

  哲学の役割

  授業は中動態でないといけない

  文法軽視の語学教育

  人間は言葉を使わなくなっている

  道具としての言葉、物質としての言葉

  表現をめぐる折り合い

  勉強することの中動態的喜び

第二章 何のために勉強するのか

  ―「勉強の哲学」から考える

  メタ自己啓発としての「勉強の哲学」

  教わることそのものの重要さ

  Evernoteという「半他者」

  「キモい」と判断するのは誰か

  勉強は孤独と切り離せない

  「権威主義なき権威」の崩壊

  異なる立場を比較し続ける人

  歴史の重々しさにどう触れるか

  キモさからの復帰

  人間以外の教師はあり得るのか

第三章 「権威主義なき権威」の可能性

  ムラ的コミュニケーションの規範化

  エビデンス主義の背景にある言葉の価値低下

  「心の闇」が「蒸発」した社会

  個人の問題でないものが個人の責任に

  貴族的なものの消滅への危機意識

  「内なる声」と水平的な対話

  新たなる貴族への生成変化

  教育はコミュニケーションか

  ネオリベ的主体と行為のコミュニズム

  原理なき判断を再発明する

  人倫、礼、逆転された保守主義

第四章 情動の時代のポピュリズム

  人間はもはや言語によって規定されていない

  直接的な情動喚起の時代

  民主化のパラドックス

  左派ポピュリズムへの疑問符

  物語を失った憲法論

  言語を玩具的に使用する

  遊びとしての無目的性の政治

  なぜレイシズムに引っ張られるのか

  クール、レスネスの遊戯空間

  他者に依存していることを認める

  グローバル資本主義下で問われる「主体化」

第五章 エビデンス主義を超えて

  「炎上」したアガンベンのコロナ発言

  右・左とは違う新たな分割線

  否定性とともに生きていく意味

  エビデンス主義という責任回避

  重層的な時間をどう取り戻すか

  言葉は「魔法」である

  講義は「コンテンツ」ではない

  真理とレトリックの綱引きの中で

おわりに 千葉雅也

 

國分巧一郎:

1974年、千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部准教授。専門は哲学・現代思想。著書に「スピノザの方法」(みすず書房)、「暇と退屈の倫理学」(朝日出版社、第二回紀伊国屋じんぶん大賞受賞、増補新版:太田出版)、「ドゥルーズの哲学原理」(岩波現代全書)、「来るべき民主主義」(幻冬舎新書)、「近代政治哲学」(ちくま新書)、「中動態の世界」(医学書院、第16回小林秀雄賞受賞)、「原子力時代における哲学」(晶文社)、「初めてのスピノザ」(講談社現代新書)など。訳書に、ジャック・デリダ「マルクスと息子たち」(岩波書店)、ジル・ドゥルーズ「カントの批判(ちくま学芸文庫)など。

 

千葉雅也:

1978年、栃木県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。専門は哲学・表象文化論。著書に「動きすぎてはいけない」(河出書房新社、第4回紀伊国屋じんぶん大賞、第5回表象文化論学会賞受賞)、「勉強の哲学」(文藝春秋、増補版:文春文庫)、「メイキング・オブ・勉強の哲学」「アメリカ紀行」(ともに文芸春秋)、「ツイッター哲学」(河出文庫)、「意味がない無意味」(河出書房新社)、「デッドライン」(新潮社、第41回野間文芸新人賞受賞、第162回芥川賞候補)、「ライティングの哲学」(共著、星海社新書)、「オーバーヒート」(新潮社、

第165回芥川賞候補)、「マジックミラー」(第45回川端康成文学賞受賞)など。

 

手持ちの國分巧一郎の本

(これから読む本)

「暇と退屈の倫理学」

新潮文庫

令和4年1月1日発行

令和5年5月30日19刷

著者:國分巧一郎

発行所:新潮社

 

「中動態の世界―意志と責任の考古学」

2017年4月1日第1版第1刷

2023年5月1日第1版18刷

著者:國分巧一郎

発行者:株式会社医学書院

 

「スピノザ―読む人の肖像」

岩波新書

著者:國分巧一郎

2022年10月20日第1刷発行

発行所:岩波書店

 

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