千葉雅也の「現代思想入門 人生が変わる哲学。」を読んだ! | とんとん・にっき

千葉雅也の「現代思想入門 人生が変わる哲学。」を読んだ!

 

千葉雅也の「現代思想入門 人生が変わる哲学。」(講談社現代新書:2022年3月20日第1刷発行、2022年4月8日第3刷発行)を読みました。

 

千葉雅也の作品は、芥川賞候補作を二作品を読んだだけです。

そのつながりで買ってはみたけれど、これは言うのも恥ずかしい、

僕のもっとも不明な分野の話です。

 

現代思想の入門書と書いてはあるものの、現代思想って、何?

ここで言う「現代思想」とは、1960年代から90年代を中心に、主にフランスで展開された「ポスト構造主義」の哲学を指しています。フランスを中心としたものなのですが、日本ではしばしば、それが「現代思想」と呼ばれてきました。

その代表者として挙げたのが、ジャック・デリダ、ジル・ドゥルーズ、ミシャル・フーコーの三人です。この三人で現代思想のイメージがつかめる、それがこの本の方針です。

 

本の帯には、以下のようにあります。

デリダ、ドゥルーズ、フーコー、ラカン、メイヤスー・・・。

複雑な世界の現実を高解像度で捉え、

人生をハックする、「現代思想」のパースペクティブ

・物事を二項対立で捉えない

・人生のリアリティはグレーゾーンに宿る

・秩序の強化を警戒し、逸脱する人間の多様性を泳がせておく

・権力は「下」からやってくる

・搾取されている自分の力を、より自律的に用いる方法を考える

・人間は過剰なエネルギーの解放と有限化の二重のドラマを生きている

・無限の反省から抜け出し、個別の問題に有限に取り組む

・大きな謎に悩むよりも、人生の世俗的な深さを生きる

「現代思想」は、秩序を強化する動きへの警戒心を持ち、

秩序からズレるもの、すなわち「差異」に注目する。

それが今、人生の多様性を守るために必要だと思うのです。

 

入門書の決定版、とはいえ、「はじめに」のはじめでもう、訳が分からなくなってしまいました。一応、本の字面は追いましたが、お手上げです。またまたお得意の、目次だけを書いて、お茶を濁すとしましょう。

 

目次

はじめに 今なぜ現代思想か

  今なぜ現代思想を学ぶのか

  入門のための入門

  ポスト構造主義とポストモダン

  構造主義

  二項対立の脱構築

  グレーゾーンに事こそ人生のリアリティがある

第一章 デリダ―概念の脱構築

  独特なデリダのスタイル

  二項対立からズレていく差異

  パロールとエクリチュール

  二項対立立の分析

  非本質的なものの重要性

  近いか遠いか

  脱構築の倫理

  未練り込みでの決断をなす者こそ「大人」

第二章 ドゥルーズ―存在の脱構築

  ドゥルーズの時代

  差異は同一性に先立つ

  ヴァーチャルな関係の絡まり合い

  すべての同一性は仮固定である

  家族の物語ではなく、多様な実践へ

  ダブルで考える

  「すぎない」ことの必要性

  ノマドのデタッチメント

  管理社会批判

  接続と切断のバランス

第三章 フーコー―社会の脱構築

  権力の二項対立的図式を揺さぶる

  「正常」と「異常」の脱構築

  権力の三つのあり方

  規律訓練―自己監視する心の誕生

  生政治―即物的コントロールの強まり

  人間の多様性を泳がせておく

  「新たなる古代人」になること

ここまでのまとめ

第四章 現代思想の源流―ニーチェ、フロイト、マルクス

  秩序の外部、非理性的なものへ

  ニーチェ―ディオニュソスとアポロンの拮抗

  下部構造の方へ

  フロイト―無意識

  精神分析の実践と作用

  無意識と偶然性

  物語的意味の下でうごめくリズミカルな構造

  近代的有限性

  マルクス―力と経済

  すべての人が自分自身の力を取り戻すには

第五章 精神分析と現代思想―ラカン、ルジャンドル

  現代思想の前提としての精神分析

  人間は過剰な動物である

  本能と制度

  ラカン―主体化と享楽

  去勢とは何か

  欠如の哲学  

  つながるイメージの世界と言語による区別

  現実界、捉えられない「本当のもの」

  ルジャンドル―ドグマ人類学

  儀礼による有限化

  否定神学批判

第六章 現代思想のつくり方

  新たな現代思想家になるために

  現代思想をつくる四つの原則

  デリダ―原エクリチュール

  ドゥルーズ―差異それ自体へ

  レヴィナス―存在とは別の仕方で

  四原則の連携

  ポスト・ポスト構造主義への展開

  マラブー―形態の可塑性

  メイヤスー―絶対的な実在とその変化可能性

第七章 ポスト・ポスト構造主義

  二十一世紀における現代思想

  思弁的実在論の登場

  意味づけの外にある客観性

  実在それ自体の相対主義

  内在性の徹底―ハーマン、ラリュエル

  複数性の問題と日本現代思想

  有限性の後での新たな有限性

  複数的な問題に有限を取り込む

  世俗性の新たな深さ

付録 現代思想の読み方

  読書はすべて不完全である

  現代思想を読むための四つのポイント

  原文の構造を英語だと思って推測する

  レトリックに振り回されず、必要な情報だけを取り出す

  固有名詞や豆知識を無視する

  概念の二項対立を意識する

  ケース1:「なんかカッコつけてるな」

  ケース2:「カマし」のレトリックにツッコまない

  ケース3:お飾りを切り詰めて骨組みだけを取り出す

  ケース4:言い訳の高度な不良性

おわりに 秩序と逸脱

 

千葉雅也:

1978年、栃木県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。専門は哲学・表象文化論。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。著書に「働きすぎてはいけない」(河出文庫、第四回紀伊國屋じんぶん大正、第五回表象文化論学会賞)、「ツイッター哲学」(河出文庫)、「勉強の哲学」(文春文庫)、「思弁的実在論と現代について」(青土社)、「意味がない無意味」(河出書房新社)、「デッドライン」(新潮社、第41回野間文芸新人賞)、「ライティングの哲学」(共著、星海社新書)、「オーバーヒート」(新潮社、「オーバーヒート」第165回芥川賞候補、「マジックミラー」第45回川端康成文学賞)など。

 

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朝日新聞:2022年7月2日