長く続いてきた週刊「さとりをひらいた犬」も今回で最終回です。

 

(本篇)

第1章「旅の始まり」

第2章「三つの存在」

第3章「恐れ」

第4章「エゴ」

第5章レグードゥの森

第6章女神シャーレーン

第7章最後のたたかい

 

 

前回は…

 

 

(66)最後の冒険へ

 

あの闘いから二週間が経ち、人間たちがいなくなった森に平和が戻ってきた。

 

 

「また会おう、ジョン。そのときはお前の話もゆっくりと聞かせてくれ」

 

ゾバックは数日前に大きな背中をゆさゆさとゆすりながら、マリウスたちを連れてベレン山へと帰っていった。

 

別行動をする犬たちは、あの闘いからすぐにそれぞれの思うところへ出発したようだった。

 

そして今日は、僕が出発する日。

 

透明な朝日がキラキラときらめき、ルーン湖に反射している。

 

朝露に濡れた草を踏みながらシーザーが近づいてきた。

 

 

「ジョン、君にはいろいろと世話になった。

 

次に会うとき、私ももう少し理解が進んでいると思う。

 

私も君に負けないように『魂の声』を聴き、いずれハイランドへと向かうつもりだ」

 

 

「シーザー、勝ち負けじゃないから“負けないように”は余計だよ」

 

「ああ、そうだな。まだその癖が直っていないようだ」

 

シーザーはばつが悪そうに笑った。

その笑顔は、以前の硬い感じはなくなり、柔らかさと落ち着きが感じられた。

 

「シーザー、シャーレーン様を頼む」

 

「ああ、安心しろ、任せてくれ」

 

 

ヴェルキンが言った。

「ジョン、いつの日かまたこの森に来ることがあったなら、魂の友として語り合おう。

そのときを楽しみにしているぞ」

 

 

シャーレーンがいつものように、やさしく僕の心に語りかけてきた。

 

(ジョン、あなたとの出会いは、恩寵であり僥倖でした。

 

ほんとうにありがとう。

 

ここからひと月ほど西へ向かうと、ウルム山という険しい山に出会います。

 

その山の中腹にシルシュの大杉といわれる大きな杉の木があります。

 

その大杉の下にレドルクという年老いた狼が住んでいます。

 

彼がハイランドへの行き方を、教えてくれるでしょう)

 

 

 

「レドルクじいさんによろしくと伝えておいてくれ」ヴェルキンが言った。

 

「知り合いなの?」

 

「ああ、じいさんは私が子供のころからじいさんだった。

 

私の父が子どものころも、じいさんだった。

 

私の祖父が子供のころもじいさんだったらしい。

 

うわさによると、百年以上じいさんだとか…」

 

「へえ~…」

 

 

 

僕はシャーレーン、ヴェルキン、シーザーたちと目を合わせ、ゆっくりと会釈をしてから顔を上げて言った。

 

「じゃあ、行ってきます」 

 

「ジョン、がんばれよ!」

 

「うむ、『魂の声』に従って行くのだぞ」

 

(ジョン、行ってらっしゃい)

 

 

 

 

レグードゥの森を出発して二週間、視界の前方に切り立った鋭い山が見えてきた。

 

あれが、ウルム山…

天に突きさすようにそびえ立つ鋭鋒を見ながら、その中腹に住んでいるという老狼を想像する。

 

 

どんな狼なんだろう?

 

ハイランド…ハイランドとは、いったいどんな場所なんだろう?

 

きれいな場所かな? 

 

どんな仲間たちがいるんだろう?

 

 

僕は自分が今まで見た美しい景色を想像しながら、ハイランドのイメージを重ねてみた。

 

 

そういえば…ダルシャの言葉を思い出した。

 

「俺みたいな狼族だけじゃない。

お前さんみたいに人間に飼われていたやつらも、心の自由に目覚めてやって来る」

 

 

コウザの言葉も思い出した。

 

「ハイランド…そこはワシらやおぬしのように、ほんとうの自分に目覚めた者たちが目指す場所。

ほんとうの自分を探す旅…ほんとうの自由を見つける旅…それがハイランドへの旅なのじゃ」

 

 

そしてコウザが言っていた言葉を、さらに思い出した。

「ハイランドを目指して旅をしても、全ての者がたどり着けるわけではない。

ほんとうの自分、ほんとうの自由を理解できた者のみがたどり着く場所、それが『ハイランド』なんじゃ」

 

 

ほんとうの自分、ほんとうの自由…

 

果たして僕は、ハイランドへたどり着くことが出来るのだろうか?

 

僕にほんとうの自分、ほんとうの自由が理解できるんだろうか?

 

いろんなことがたくさんあった。

 

素敵な出会いがたくさんあった。

 

そう、僕は変わった。

 

僕はもう人間に飼われていた頃の僕じゃない。

 

心の深いところからふつふつと力が湧いてくるのを感じた。

 

 

いま、僕の目の前にはごつごつと固そうな岩石に覆われた鋭い山が立ちはだかっていた。

 

ここの中腹に、シルシュの大杉があるんだな、そこにレドルクじいさんがいる。

 

よし、行こう!

 

~連載終わり~

 

(著者より)

長い間「さとりをひらいた犬/ブログ連載」をお読みいただきありがとうございました。

 

今回の連載は今日でおしまいです。

 

ジョンの冒険も残すところ最終章のみとなりました。

 

さてさて、レドルクとは?

 

そして、このあとジョンはハイランドへたどり着くことが出来るのでしょうか?

 

そこでどんな冒険が待っているのでしょうか?

 

この物語の最終章は、ぜひ本でお読みくださいね(^-^)

 

ではでは!

 

 

【お知らせ】

●9月末に「ほんものさがし」という YouTube 番組に出演させていただきました。

全部で3回収録をしていただきまして、その第3回目が公開されました。

 

(第1回)

(第2回)

 

●「さとりをひらいた犬」が Audible になりました。

ジョンやゾバック、クーヨやシャーレーンなどのキャラクターたちが、音声になって飛び出してくるということを想像するだけで、言葉にできない思いが湧き上がってきます。

 

https://www.amazon.co.jp/dp/B0C14MS2HY?fbclid=IwAR3tEScdMPLC8bdwxuL06a3lIxd4HT_gJ_Au7M9kXeFKn2s9Jm6c6N3k-8A

 

●こちらも素晴らしいです。

ご覧になっていない方は、ぜひ一度ご覧ください。

【動画・英語版/翻訳動画(各回約10分)】

(最新動画)

 

 

(予告編/1分半)

 

(エピソード1)

 

(エピソード2)

 

(エピソード3)

 

エピソード4

 

●オンラインサロン

ガンの方を中心に、みんなで支え合いながら前に進んでいます。

ガン等や人生についてお悩みの方、僕たち仲間と一緒に支え合って前に歩いていきましょう。やはり仲間は『力』です(^-^)

入会・退会自由です(1か月のしばりはありますが)

https://www.leela-salon.fants.jp/

 

●オススメのお水やお茶など

よくご質問いただくので、以前書いた記事をリンクしておきます。

おすすめのお茶や飲み物など

サプリなど

オススメの本①(読むと元気になる)

おススメの本②(劇的寛解事例)

おススメ本③(生還者たちの体験記)

おススメ本④(食事関連)

 

 

にほんブログ村 病気ブログ 肺がんへ
にほんブログ村