色々と辛いことが重なって、海にも行けずなかなかブログの更新ができなかった。
 久々に早朝海へと向かうと、数日前からの急激な寒気に見舞われ、夜明けの海辺は凍えるような冷気で思わず身震いする。
 ひとり凍れる浪しぶきを眺め、遠くに淋しい冬の海の光を感じつつ、私は憂愁の絶えない孤独に戦慄を覚える。



 澄み切った大気に凛と輝く曙光にも冬の訪れを感じる。
 波は穏やかでまるで冬の湖のよう。かじかんだ手でジグを投げ続けても、当たり前のように生体反応はない。



 心が沈んだままなので、気晴らしに大阪寿司をネットで注文する。


 約1年ぶりの吉野鮨。
 押し寿司なのでお腹がいっぱいに。二日かけて食べ切った。



 極度に寒さに弱いかんたろうはストーブの前から離れない。おまけに湯たんぽを抱いて寝ている。


 逆にトンは寒さを感じないのか、昼間はひとりで走り回って遊んでいる。



 いつものかんたろうと、トン。
 「仲よき事は美しき哉」 実篤


 おやすみ、かんたろう。
 もうすぐ師走。寒さはこれからだ。


 ここ数日やっと波は落ち、穏やかな海が戻ってきた。
 

 夜明けとともに、漁港から大船団が現れ、遙か沖に向かっている。


 最近の早朝、夜明け前の一瞬、たまに強烈な当たりがある。しかしほとんどフッキングしない。
 この日やっと掛かった70㎝のメジロ。久しぶりの大物でよく引いた。


 刺身にして当日と翌日食べてみたが、脂が乗ってなく、味が薄い。
 まだ少し時期が早いのか。


 残りは、バターたっぷりのムニエルに。
 これは絶品だった。パンでもご飯でも、お酒にもビールにも合う。


 やはり、この時期美味いのは脂の乗った戻り鰹。
 ついつい買ってしまう。



 今年に入って沖磯の石鯛釣りは五月に一度しか行っていない。二年前に仕事を辞め、この小さな海辺の町に住んでから、めっきり石鯛釣行の回数が減ってしまった。
 まだ仕事も家庭もあった頃は、忙しい中、予定をやりくりしながら、一年を通して月2回以上のペースで石鯛を狙って夢中で磯へ通っていた。


 今は毎日が休日で、渡船屋までも近くて何時でも行けるとなると、何故か沖磯への腰が重くなる。
 暑いので止めよう、波が高い、ウネリが収まってから、寒い、風が強いのでは、潮が悪そう・・・などと言い訳のように自分の中で行けない条件や理由を色々探し、納得させ、結果、足が遠のいてしまう。

 何かのせいにして前に進まない・・今までの私の人生と同じか。

 五月に釣れた45㎝の石鯛。



 それでもどうしても石鯛釣りの気分を味わいたくて、近くの地磯で竿を出してみる。餌は冷凍のカニや赤貝、磯についているジンガサなど。


 何も釣れないと分かっていても、竿を出すと胸は高鳴りワクワクと興奮状態になる。
 孤独な磯上での自然との対峙。そして浪漫溢れる、豪快無比な石鯛釣りの味を久しぶりに思い出して、武者震いが止まらない。


 絶好の秋晴れでとても気持ちがいいので、嬉々として竿先を見つめていると、何と突然揺れ出し、一気に舞い込んだ。
 「嘘だろう」と驚愕しながらも、慌てて思いっきり合わせると、とても軽い引き。
 上がってきたのは30㎝ほどのブダイ。
 上出来だ。早速、煮付けにしよう。





 一昨年の年末。夜の公園でのかんたろう。
 いつも、呼ぶとすぐに出てきた。 
  同じ頃の昼間の公園。
 帰ろうとしてもストーカーのようにいつまでも、ずっと着いてくる。
 可愛くて、愛おしくて・・後ろ髪を引かれる思いで、なかなか帰れなかった日々。 
 
もうすぐこの海辺の小さな町でかんたろうと暮らし始めて二度目のクリスマス、大晦日、そして正月を迎える
 今年はトンも一緒で賑やかだ。


 午后の温かい陽だまりで気持ちよく寄り添って眠るふたり。
 おやすみ、かんたろう、トン。
 来週はついに寒波がやってくるそうだ。
 もう、冬の到来か。  


 秋は深まり、日々同じことの繰り返しの中で、ただ時だけが静かに過ぎてゆく。


 寂寥感漂う夜明け前の海に、サーファーたちの小さな黒い影が波間に哀しく浮かんでいる。
 この日、離婚してちょうど二年が経った。


 相変わらず波は高く、釣りづらい日々は続く。一体魚はどこに行ったのか。


 昼間はぽかぽか陽気だったので、冷凍のバナメイエビをつけ、近くの岸壁でちょい投げ釣り。


 岸壁きわきわの落とし込みで何故か40㎝ほどのタカノハダイが釣れた。
 いつもなら当然逃すのだが、「秋のタカノハは美味くて祭りには欠かせない」と昔通っていた磯渡しの船頭が言っていたのをふと思い出し、試しに持って帰って捌いてみた。


 丸ごと刺身に。
 綺麗な身。血合いが弱くピンク色。身は白濁し非常に脂が乗っていて美味かった。石鯛に近いがそれよりもあっさりしていて上品さがあった。


 何故かワタリガニも釣れたので酒蒸しに。
 殻を割りしゃぶりつきながら熱燗で流し込む。


 別の日。
 ストックしてある冷凍カマスの一夜干しを、酒を加えてふっくらと蒸し焼きにしてみた。
 ご飯も、お酒も進む。



 隣の老夫婦から種無し巨峰を戴いた。
 まさに秋の味覚。ありがたい。
 滅多にないけど、また魚がたくさん釣れたら持って行きます。



 或る朝のかんたろうと、トン。


 本当に仲良くなった。


 毎日のことだが、見ていて、思わず笑ってしまう。
 そして自然と笑顔がこぼれ、幸せな気持ちになれる。


 二年前に穿たれてしまった私の心の空洞を急速に埋め戻してくれる、このほのぼのとした情景。
 そして晩秋の、繰り返す日常の淋しさと虚しさをすっかり忘れさせてくれる。
 もう、大丈夫だ。


 まさしく二年前の晩秋、公園での哀愁溢れるかんたろうの哀しき姿。
 寒さにも孤独にも耐え、よく頑張った。


 おやすみ、かんたろう、トン。

 いつも、一緒だ。