記憶の中のイメージについての回想、とクルマのことも。 -3ページ目
iQtoyota
『iQtoyota』


Yahoo!のトップページに出てたトヨタの新型車って何?

軽自動車より小さい「iQ(アイキュー)」のことだと思います。
スイスのジュネーブモーターショーで公開されて、今秋の発売がアナウンスされたばかりです。
正式発表はまだです。
プリウスより環境負荷が小さいと言われています。大人3人+子供1人乗り。
だと思いますが、どうですか?

あーっそうそう、これこれ!!
大きさはスマート と同じくらいに見えるけど…

イメージとしての大きさは同じくらいです。が、実際の大きさは2人乗りのスマートに比べたら、4人乗れるiQはかなり大きめ。
あのサイズで4人乗れるようにしたのが、トヨタらしさです。つまり、そうじゃないと売れない、と。

なるほど。
小型車でプリウスみたいなエコカーは初めてなの?

そうです。さすがに着眼点が違いますね。
基本的にどんな車でも小さい車は環境負荷が小さいですが、結果的にそうなった車種を除けばiQは、トヨタ初のエコを強調したコンパクトカーです。
ポイントはiQがプリウスのようにハイブリッド車ではないことです。

単純な小型車で、勢い低価格なヴィッツやパッソと違い、iQは安くないです。170万円強のスマートほどは高くならないかもしれませんが、それに近い価格設定となるようです。

というのも、エコが金になる時代だからです。逆を言うと消費者の価値観も変化していて、小さい=貧相という既成概念が受け入れてもらえなくなっていることも理由です。

黒塗り革張りに代表されるような贅沢路線から、小さくてエコな車に乗るのがステータスになり始めました。しかし、今まで大きな車だったのに急に小さな車に乗るのは受け入れにくい。だから、車体にも装備にもコストをかけて、高級車から乗り換えても見劣りしない車に仕上げる必要がある。そうなると、同じサイズの車に比べると割高になる、という理屈です。

エコとは違う価値観ですが、小さな車でも高い価値を付与して成功したのはMINI です。いわゆる価値の凝縮です。昔とった杵柄で、アイデンティティーが世界で確立されているMINIを最新技術で蘇らせ、キビキビした走行感覚も再現しました。一般的に大きな車より小さな車のほうが潜在需要が大きいですから、世界で大ヒットです。

世界の自動車業界は今、小型車でも高級を目指しています。環境対応が急務となっている中で世界の車が小型化するのは必至。となれば、単価の下落は避けられない。それをどう食い止めるかに頭を悩ませているのです。

とりあえず、トヨタの最初の答え、というか突破口は“エコ”ということになりそうです。

なるほど、なるほど。

長くてごめんなさい。
ところでなんでこんな質問を?
仕事と何か関係でもありましたか?

ぜんっぜん仕事と関係なかったの。
ⅰQを買いたいって人がいて単純にどんな車か興味があったんだよね。

その人に言ってあげてください。これからiQのライバルになるクルマがたくさん出現するから、早まらないで、と。

新車たくさん出てくるんだ!楽しみ。

でも車内が狭いと、それはそれで残念がる人も…




車体色 モンテベロ・ブルー


東京を走る宇宙船。
ゆったり、夜の幹線道路をくじらが行く。
ワタシ、トウキョウノコト、ヨクシラナイ。
ダケド、ヨルデモアカルクテ、ハシリヤスイヨ。

浮遊しているような感覚。
それが第一印象だった。
ヒタヒタとよく走る、滑る。

重たい車であることは確かだけど、そのゆったりした感じが心地よい。
大きな湖の上を滑る小船のような感じ。
緩やかに体を揺らしながら。

もうひとつの特徴は室内が明るいことだ。
ガラスの面積が広くて、開放感がものすごい。
夜でもまぶしい六本木を通り抜けて感動した。
車内に光が降り注いできたからだ。
それは、とても車に乗っている感覚ではなかった。

郊外へ向かう幹線道路に乗って確信した。
これは宇宙船だ。
ガラスに囲まれて、明るい空間に座って、静かに移動する乗り物。
大海原を回遊するくじらの体内にいるような錯覚を覚えた。

騒がしい外界から隔絶されて、ひとり静かな夜を楽しむ。
街灯もネオンも、夜を明るくして、407SWをタイムマシンにしてくれる。
宇宙と宇宙を結ぶ光速シャトルみたいだった。

操縦してるみたい。
運転じゃない。
ドライブでもない。
移動するような。

運転手は自分なのに、ハンドルを切ってもアクセルを踏んでも、ブレーキを踏んでも、とことん浮遊感がつきまとう。ゆったり、スムーズ、違和感なし。こんなに心を包んでくれる優しい車があったなんて、知らなかった。


西部劇に出てきそうな郊外のレストランでの話。

ホールを見渡せる二階席に着いた。
注文を取りに来たのは華奢な女性だった。
長袖の丸首の襟元に2つのペンが刺さっていた。
それが気になった。
クリップが内側に入って2つ並んで留まっていた。
どうやら色違いの同じものらしい。

「お姉さん、なんでペン2つ刺してるんですか」
「あ、これは注文とか書くときに使うんですよ」

当たり前の答えが返ってきたが、その後がとても印象的だった。



「これ、すっごくかわいいんですよ。ほら」
と、襟元が伸びるくらいに引っ張って2つのペンを外し、テーブルの上に並べる。
「どうして2つ持ってるんですか」
と聞いてみた。

「ハロウィンの…、妹がくれたんですよ」
と、説明しながら彼女はオレンジと紫のボールペンに触れる。
クリップのところに、ミッキーとミニーがいた。
2つで一組。
ペアのボールペン。

おねぇ、これあげるよって、くれたんです。彼と使ってねって。でも別れちゃったんですよね。
妹には、あっ、いい、いい!もらうよっ、ありがと、って言いましたけど。

彼女はそう矢継ぎ早に話すと、黙ってうつむいてしまった。
そして

「さみしっ!!さみし~~~~!!!」

そう叫びながら運んできたメニューを抱きしめて、階下へ駆け下りていった。
なにも、声を発することができなかった。



もこもこした暖かそうなブーツ。
後ろ束ねたブラウンの柔らかそうな髪。
透き通った白い素肌。
抱きしめれば折れそうなほど華奢な彼女。
少しずつ、声のトーンが落ちていく。
視線は下がり、瞳は遠くを見つめる。

ふと我に返って、僕に向けた精一杯の笑顔。
瞳は少し、うるんでいた。








「お店に戻ります? それともバイバイします?」
不動産物件を内見した帰り道、彼女は何気なくそう言った。

自然だった。実に。
で、ノックアウト。
試合終了。


日曜の夕方、日も暮れた頃に入った駅の近くの不動産屋さんで
「今からでも物件見せてもらえますか」
と言って、すぐに外に連れ出してもらった。
案内してくれた彼女は手提げかばん一つでお店の外に出るなり
「あ、外寒いですね。コートとってきます」
と言って、すぐにお店の中に舞い戻った。

寒いですけど、大丈夫ですか?
そう言ったつもりだったけど、聞こえたかな……。

コートを手に持って裏口から出てくるなり、
手提げかばんを持ちながら、どうにかしてコートに袖を通そうとしている。
「持ちますよ、かばん」
私は合いの手を出した。
でも彼女は
「大丈夫です。よいしょっと」
と言うか言わないかの間に、コートを着てしまった。
そしてまた言い放った。
「紳士ですね」

物件に到着したら今度は隠してある鍵の場所がわからない。
彼女は、この物件を見るのは初めてだという。
あっちのフタを開け、こっちのフタを開け、どたばたしているうちになんとか発見。
ようやく部屋の鍵を見つけて、
「だめですね、私って。たよりない案内人でごめんなさい」
とんでもない。と、心の中で叫ぶ私……。

部屋に入って、一言。
「こじゃれてますねー」
収納を見て一言。
「一人暮らしには十分な広さですねー」
その言葉の端々にかすかな距離感を感じた私は帰り道に聞いてみた。
「ひとり暮らしじゃないんですか?」
彼女は言った。
「そうですよ。娘もいます」

冒頭のことばは、住宅街を二人で歩く帰り道、駅に近づいた頃に彼女が言ったものだ。

バイバイって、赤ちゃんことば?
そうか、彼女はママか。

さっぱりしてる。
でも天然…。
緊張感のなさが、愛くるしい。
果てしなく。

でも、もう会うことはないだろう。
彼女は、その日が最後の勤務日だった。
旦那の転勤で、日本の反対側(?)へ引っ越してしまうという。

お店に戻ると、営業時間を過ぎていた。
つまり、私が最後の客。
「あの物件、ずっと見たかったんです。最後に見れてよかったです。ありがとうございました」
優しい笑顔だった。

こちらこそありがとう。
完全にKOされた一日だった。
まさか、「バイバイします?」なんて言葉にやられるなんて。









車体色  ハラマブラック


勝手にスマートになってもらっても、かえって扱いづらいもんだが、
アルファが目指す方向性ははっきりと伝わってくる。
ただ単純に、もっと熟成が必要だと思った。

Alfa 147の姉のような顔つきで、より洗練された後姿が印象的だ。
流し目で僕の横を通り過ぎて、伸びやかで近代的なシルエットが脳裏に焼きつく。
GTと呼ぶには少し、若い。

運転席に乗り込むと、トンネルに放り込まれたような気分になる。
遠くに明かりが見えるようだ。
果てしなく長く、深いトンネルを突き進む妙な乗り物に乗せられている気がした。

アクセルペダルを踏み込むと軽快な音を響かせて、GTは速度を上げる。
2ペダルでも動力伝達はダイレクトで、スピードはアクセルペダルに連動する。
しかし、自動変速が生む間はGTとの距離を遠くに感じさせる。

加速したくても息切れが訪れ、また急に加速する。
それこそクルマがロボットに勝手に操られているようだ。
運転しているのは自分なのに。
それは手動変速に切り替えてみても、大きな変化は生まれない。
どこかでエネルギーが吸収されているような妙な後味の悪さが残る。

それが無くなったのは気持ちよくアクセルを踏み込んだときだった。
大胆な操作でGTは反応を変える。
ギアのつながりも素直で、減速時にも自動で回転を合わせながら気持ちのいいエンジンブレーキを利かせる。
ステアリングの反応も巡航時には落ち着きの無いレーサーかと思わせたが、勢いよくコーナーに飛び込めば強烈な一体感を感じさせてくれる。

いつもは眠いヤツでも、打てば響く厄介なクルマ。
優等生でも何でもない。
なんとなく乗っていたのでは、GTの良さは分からない。
アルファらしく、元気に走らせてやらなければGTの横顔も魅力的な後姿も色あせてしまう。
そして表情を変えた一瞬も遠くなる。

誰にでも笑顔を振りまくわけじゃない。
長くつきあって、どんな人間か理解できた相手にだけ本当の自分を見せる。
GTから降りるときに、あとどれくらい走ればGTを理解できるのか、想像もつかなくなった。