青谷明日香というシンガー・ソングライターを知ったのは、俳優の六角精児さんの、あるテレビ番組での「推し」がきっかけでした。三年前のこと。CDをすべて購入して、すっかりファンになってしまいました。

ぜひともナマ演奏に接したかったのですが、コロナ禍があったりして、すぐにとはいきませんでしたが、やっと一年ほどしてライブに行く機会もありました。その後の二度目は、ちょうど、一年前。

その六角サンとの協演となれば、聞き逃すわけにはいかず、昨日、下北沢のライブハウス「ラ・カーニャ」に駆けつけました。実を言うと、たぶん、下北沢という町自体に来たのが、初めて。スマホをたよりに、なんとか、会場に到着。

御覧のとおり、「SOLD OUT 完売」です。席数は、60。地下一階のライブハウスに、階段を降りていくと、ぎっしりとお客サンで埋まっています。満席のライブ。いいですねー。

※もしも、六角さんのファンの方が、このブログをご覧のようなら、この後、青谷さんの話ばかりになってしまいます。ごめんなさい。

 

六角精児さんと、彼のバンドのギタリスト佐藤克彦さんとの演奏のあと、青谷さんの登場。昨日、歌った青谷さんの曲は、以下。

 

帰っておいで

甘噛みサルーキ

みなみかぜ

弟よ

会いたい人はお空の上

異端児の城

大気圏で押し問答

何はなくとも、何もなくても

さようならくじらぐも

 

ほとんどが六角さん目当ての(と思われる)お客さんを前に、自分というものを一通り知ってもらうための、選曲だったそうです。

「弟よ」は、実際に、弟さんの披露宴で歌った歌なんだそうです。知らなかった。そして、「弟」に続けて「おじいさん」ということで、「会いたい人はお空の上」が歌われて、この「人」が祖父のことだったと、これも初めて知りました。自転車に載せてもらって、ぐずって隣町まで缶コーヒーを買いに行かせたというエピソードの意味がよく分かりました。かわいい孫に精一杯つくしてくれた、老齢の祖父への、感謝の歌だったんですね。

 

いずれも、久しぶりに聴くナマの歌声で、感激。佐藤さんの冴えたボトルネックギターの伴奏が、オリジナルとは、また違った味わいを出しています。そして、全体を通じて感じたのは、年齢のことをいうのは、迷惑というか、失礼なのかもしれませんが、きっと、青谷さん御本人が出産・子育てなどを経験なさり、人生を重ねて、歌に深みが増したこと。吹き込み当時の、ピンと張り詰めたような歌唱も魅力的ですが、昨日のような、より余裕をもたせた語り口が、特に人生を噛みしめるような曲に、味わいを増しています。これから、青谷さんが、歌い続けていく中で、新曲も、むろん楽しみですが、持ち歌が、どのように変化していくのかも楽しみです。

 

ところで、六角さんと協演とのことで、二人が歌うとすれば、「大気圏で押し問答」だろうな、あの宇宙人のキャラは、六角サンにぴったりだから、と思っていたら、ドンピシャリで笑ってしまいました。これは、想像通り、オリジナル以上の出来でした。六角さんの歌は、「呑み鉄」のバックに聴いたことがあったくらいで、ほとんど初めてでしたが、コミカルだったり、しみじみしていたり、なかなか、ありそうで、ない、味わいのある曲と歌でした。そして、曲と一体化しているような、六角さんのキャラと語りで楽しませてくれます。

「何はなくとも、何もなくても」を、青谷さんと交互に歌う場面では、青谷さん本人を前にして、緊張しているのが分かって、微笑ましかったです。青谷さんの世界を自分が再現できるのか、というか、その世界に入っていけるのか、挑むような気持だったのではないでしょうか。真摯で見事な歌唱だったと思います。

 

青谷さんの歌に聞き惚れ、六角さんの語りに笑い、本当にあっという間の二時間でした。