"彼女"との日々
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デート

四月、彼女の娘さんが保育園に入園。




彼女の忙しさは増していった。




週に一回の、午前上がり。




その時間が彼女の唯一の自由になる時間だったが、それも減ってしまう。




それは私と会う時間が無くなる事にも繋がる。




会えない時間。




減っていく、彼女とのやりとり。




いつしかメールは送るばかりになり、彼女からの返信は 週に何通かになっていた。




明らかに疲れている彼女。




たまのtelでも、疲れた声ばかり出していた。




そんな中、彼女から『無理だと思うけど…』と誘われたLIVE。




「いいよ、行こう。」




予定を空けるのは、正直 難しい。




けれど、普段では できる筈もないデート。




無理をするだけの価値はあった。




当日、LIVE会場での待ち合わせ。




仕事の都合で開演してからの合流になったが、それでも充分に楽しめた。




彼女の好きなものに、一緒に触れられる時間。




何よりも嬉しかった。




唯一のカップルらしいデート。




これからも、忘れる事はないだろう。

翳り

仕事と家事の合間を縫って、時間を作ってくれる彼女。




その時間も次第に減っていった。




一時間ほどしか会えない日が続く。




妻が専業主婦で家に居る為、私は常に有給を取り 残業した事にして帰っている。




丸一日を潰して一時間では、割に合わなく思っていた。




その一時間も、彼女の仕事や 家庭の愚痴を聞いて終わる。




当時の彼女の状況では、そうして吐き出す時間すら無かったかも知れない。




それでも、やはり私には不満すぎた。




『あぁもうこんな時間かぁ…




また帰って家事やらなきゃ…』




「そうだねぇ、会える時間が少なすぎるもんな。




も少し何とかなったりしない?」




彼女の顔が曇る。




『だって私、これ以上もう頑張れないよ…』




そう言いながら、涙を流し始めた。




失敗した…やはり言うべきではなかったか。




弁解を始めた私の言葉を遮るように、彼女は言った。




『これから娘の保育園も始まっちゃうと、お迎えやら行事で また時間も減っちゃう。




もう、やめよう?




私だってもっと自分に都合良く会ってくれる人がいいよ。




仕事上がりの五分でもいいから毎日その為になんて、マリオは出てこれないじゃん。』




そんなの当然だよ、家庭もあるんだから…




そう言い掛けた言葉を飲み込みつつ、

「時間はなるべく合わせるよ。




保育園が始まるからって、会えるか会えないかは やってみなけりゃわからないじゃない?




もう少しオレが頑張るから、続けてみよう?」




『うん…




わかった…




もう時間ないから、送って?』




車を走らせてから、着くまでは お互い無言だった。




『ありがと、バイバイ。』




「ううん…またね。」




帰路がやけに長く感じた。




未来に見えた翳り。




一つの分岐点だったのかも知れない。

彼女が仕事を始めてから、三ヶ月が経った。




次第に疲れていく彼女。




話を聞く限り、仕事が終わった後に 家事も全てこなしているらしい。




「少し、旦那さんに任せたら?」




『ぅーん…考えはするんだけど。




自分の思った通りにやってもらえないんだもん。




ストレス溜まるだけだし、自分でやった方がマシだよ。』




任せて教えなければ、結果なんて得られないのに…




そう思いつつも、言葉を飲んだ。




ある日、急に彼女から こんなメールがきた。




『実は、マリオに隠してる事があるの…




けど、これ言ったら マリオは私と結婚なんて、考えてくれなくなっちゃうかも…』




何の事かと思い、聞いてみると




『実は私ね、お金の管理ができないの。




主婦やってて時間があるからって、ネットで買い物ばかりしたりして…




気が付いたら 家の貯金まで使ったりしてて、過去にも旦那から注意されてるの。




…言っちゃった。




もうマリオは、私と結婚なんて考えてもくれないんだろうな。』




「それはマズいよねぇ…




けど お金の管理なんて、できる方がすればいいんじゃない?




事実、今 家の財政管理はオレがやってるんだし。




とりあえずオレと一緒になるんなら、財布のヒモは預けてもらうよ(笑)」




結婚して始まった、見知らぬ土地での生活。




彼女の住んでいた街よりも田舎な、新しい地元。




洋服好きな彼女の格好では、間違いなく浮いてしまう事は明白。




好きな格好で出歩けず、遊ぶ友達もいないストレス。




拍車をかけたセックスレス。




続けてきていた音楽もできないまま残った、『買い物』という趣味。




没頭するには危険すぎた。




彼女この『手に入れたいもの』の多さに気付く、入り口だった。
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