有銭、無銭問わず今年に入ってからアプガ現場へと行く機会が多い。

新曲のリリースイベントが、年が明けてからほとんど毎週のように都内近郊で行われているのがその理由だが、しかしこのリリイベも始まった当初は実態のよくわからないものだった。

というのも4月に新曲が発売されることだけは決まっているのに、それが何なのか、そのタイトルすら未定だった。

つまり「4月5日発売 新曲(仮)」というわけだが、そんな実態の判然としないCDの予約を、何ヵ月も前から接触の対価として前金で承っているのだからすごい話である。言うまでもなくこんな商売が平然とまかり通っているのは、世界中見渡してみても日本のアイドル業界だけだろう。

そんなこんなでリリイベとは名ばかりの、本来リリースされるべき新曲が、ずっと歌われない状態が続いていたわけだが、ようやく2月も終盤に差し掛かり新曲の情報が解禁になった。

タイトルは「パーリーピーポーエイリアン」。

2月の終わりに新宿のタワーレコードで初披露され、自分がこの曲を初めて聴いたのはその翌日の汐留店でのリリースイベントだった。

本気で売るつもりがあるのだろうかと問い詰めたくなるようなタイトルだが、近年のアプガの音楽的なキモであるEDMの快楽性を追求したようなサウンドと「パ、パ、パリピ、パリピポエイリアン…」というキャッチーなフレーズが心地よいナンバーである。

曲の出だしで佐保ちゃんがコブシのきいたアカペラを披露するのだが、どう考えてもこのパートが余計で、これがなかったらこの曲のキレと強度はさらに増したような気がする。

しかし、そういったマイナス要素を差し引いても今回の新曲は素晴らしく、発売前の段階で、すでに彼女達の代表曲といえるような風格を備えていた。

そしてその楽曲以上に魅力的なのはこの曲のダンスである。

エグスプロージョンの三件となりの家に住んでいるかのような踊りにも見えるが「ここで笑いがとれれば本望」とばかりに、(仮)マークの入ったサングラスをかけて「人類パリピ化」を目指し、ユニークなエイリアンダンスを披露するアプガのメンバー達。

最近のイベントでは、曲中に客席から観客(主に女ヲタ)をステージに呼び上げて、舞台の上で一緒にダンシングというブルース・スプリングスティーンばりのパフォーマンスも飛び出しているが、楽曲の楽しさにくわえてダンスのインパクト、さらにはメンバーの芸人魂が炸裂とくれば否定する要素はどこにもない。

自分は観に行けなかったのだが、発売日当日のラクーアのステージではDDTのプロレスラーやアイドルネッサンスのメンバーらもステージに登場し、みんなでパリピ化して盛り上がったらしい。

一般的な認識としてアプガというのは、単なる体力馬鹿の集まりのように思われているフシがあるが、YouTube上にアップされているこの曲の振り付けビデオを見ると、彼女達が体力だけの集団ではなく、ダンスの技量にも長けたプロフェッショナルだということがよくわかると思う。言い方をかえれば技術的な裏付けがあるからこそ、あれだけタフなライブを展開することが出来るのだろう。

もうひとつの新曲である「セブン☆ピース」はアプガらしからぬメッセージ性の高い曲で、歌詞の中で「ラブ&ピース」を説く。

歌のテーマとしては「パーリーピーポーエイリアン」との落差が天と地ほどあるが、この曲のメインボーカルを務める関根梓の歌声がシリアスな厳しさに満ちていて、まるで「人類パリピ化などと浮かれ騒いでいていいのだろうか」と他のメンバーやアプガヲタに反省を促しているようにも聴こえる。

思わず「悪かったよ、あず…」と謝りたくなるが、しかし、よくよく考えてみたら君だってさっきまで「きっとみんなエイリアーン!イエーイ!!」とドンチャン騒ぎをしていたではないか。いや、それ以前の問題としてライブを決戦と呼び、アイドル界を破壊すると宣言し、「決めてやんぜ!アッパーカット!」などと物騒な曲を歌っている人達が「愛と平和」を説いているのもどうかと思うがw

長らく続いたこのリリースイベントも昨日でようやく終了した。

自分も新宿、渋谷、吉祥寺、横浜、錦糸町、汐留といろいろと観てまわったが、あとは目標の売上げ枚数である四万枚という数字と3位以内という順位がクリア出来るかどうかだが、正直厳しいのではないだろうか。しかし今のオリコンの順位や、CDの売上げ枚数にどれだけの価値があるというのだろう。

そして、このリリイベ期間中にメンバー最年少の新井愛瞳が高校を卒業した。アプガもこれで名実ともに「大人のアイドルグループ」になってしまったということになる。冷静に考えてみると、これはけっこう深刻な局面に差し掛かってきたといえないだろうか。

今後、アプガが増員したりメンバーが代わったりということは、まず考えられないので、この先、グループ内の新陳代謝が行われることない。つまり彼女達はこのまま大人のアイドルグループとして成熟…、悪い言い方をすればどんどん老いていく。

誤解をおそれずにいえば、自分が考えるにアプガの妙味というのは、各メンバーのヴィジュアル的なピークが微妙に、しかし絶妙なタイミングで「ズレて」いる(いた)ところにあると思う。

ひとりのメンバーが旬を過ぎると、他のメンバーがちょうどいいタイミングで台頭してくるという幸運の連鎖によってアプガのヴィジュアルは成り立っていた。

そこで新井愛瞳である。

今回のリリイベをみていて思ったのは、ついに最年少のまぁながグループ内でのヴィジュアルのトップに躍り出たのではないかということ。婉曲にいうのならアプガにも5年の歴史があり、段階的にも「そういう時期」に突入したといえるのかもしれない。

いや、もちろん前からカワイイには違いなかったのだが、最近のまぁなを見ていると、まるで言葉を失うような次元の違った可愛さ、美しさを感じてしまう。

西日本が橋本環奈を差し出すのなら、東日本は新井愛瞳を差し出せばいい。それくらい言い切りたい。

…とまあ盛り上がりっぱなしだが、来週は新宿LOFTでのギグ、その翌週は新宿BRAZE、そしてGWもてんこ盛りとまだまだアプガのパーリーは続く。
ライジングプロダクションが原宿駅前にオープンしたライブ会場が、一部で異常な盛り上がりを示しているという話は小耳にはさんでいた。

そして、そこに出演しているのは、原宿駅前パーティーズというライジングプロ所属の本格デビュー前の女の子達だという。

今回、ようやくチケットが手に入り、遅ればせながらその常設会場である原宿駅前ステージへと行ってきた。

場内に足を踏み入れた最初の印象として狭い会場だなと思ったが、それでもライブハウスのような圧迫感や窮屈さはあまり感じられず、ステージ上のモニターと客席後方までせり出した花道は只ならぬ期待感を抱かせる。

100席程度の客席はいかにも嗅覚の発達した海千山千のヲタで埋めつくされ、ピンチケや女性客は皆無に等しい。いつの時代でも青田買いに走るのは年期の入ったマニアであり、会場内の平均年齢はかなり高いように見受けられる。

自分は「初モノ」を見るときは、なるべく余計な先入観を持たないように、あまり多くの予備知識を得ずにライブに行くよう心掛けている。

今回の原宿駅前ステージも、いくつかのユニットが出てきてパフォーマンスを行うことくらいは知っていたが、各メンバーのプロフィール等は完全にノーマークで参戦した。

ライブの内容は二時間のあいだに4つくらいのグループが出てきて、それぞれが曲に合わせて歌とダンスを披露し、途中で花道を使ったファッションショーが行われたりして、観客を飽きさせないような工夫がこらしてある。

ライジングということで、フェアリーズのようなものを何となく予想していたのだが、それは当たらずといえども遠からずといった感じか。

音楽にしてもダンスにしても、とくに目新しいことをやっている印象はないが、率直な感想をいえば、どのユニットもそれぞれに完成度が高く、非常に見応えのある内容だった。

とくに花道(光るランウェイというらしい)に、メンバーが大勢で出てきて踊る様は圧巻で、自分は下手の最後列(といっても4列目だが)で観ていたのだが、それでも十分に距離は近く、アレを最前列で観たら凄いだろうなと思った。

昨今のアイドルブームは猫も杓子もアイドルを名乗り、中には本当にこれをアイドルと呼んでいいものだろうかと首を傾けたくなるような自称アイドルも少なくはないが、この日、出演していた原宿パーティーズのメンバーからは、まったくといっていいくらいそういう地下アイドル臭は感じられなかった。

ステージ上のメンバーは、きらびやかなアイドル的なオーラに満ちていて、さすが大手プロダクションが厳選して集めたタレントの原石だと思った。これは新生東京パフォーマンスドールを初めて見たときにも感じたことである。やはりアイドルとはこうでなくてはいけない。

個々のメンバーでいえば「ふわふわ」に所属する最年長のコにひかれたが、あまりのめり込まないように気をつけないとねww

今後、この原宿駅前パーティーズがどのように展開していくのかハッキリしたことはわからないが、やはりこの会場を足掛かりにして、メディアに進出したり、CDデビューをはたしたりという流れになっていくのだろうか。

東京パフォーマンスドールのルイードから20年余、再び原宿に磁場が発生するとは誰が予見したか。
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先月末、xoxo(kiss&Hug)というアイドルグループを見る目的で、町田クリスマスフェスティバルというイベントに行ってきた。(ちなみにこのグループ「キスアンドハグ」と読み、面倒なので以下キスハグと略す)

何でこんな無名のアイドルグループを見るために、わざわざ町田くんだりまで出掛けて行ったのかというと、10月に代々木体育館周辺で行われたアイドルフェス(「スポーツ・オブ・ハート2015」)で観た彼女達のライブが予想以上に面白かったので、あれから秘かに行く機会をうかがっていた。(ここでいう「面白かった」というのはまさしく言葉どおりの意味で「笑えた」ということ)

ついでにいうと前から町田に食べに行きたいと思っていたラーメン屋があったので、これは一石二鳥ではないかなと。

町田に着いてから、まずは目当てのラーメン屋へと向かう。近年ブレイク中の繁盛店だけあって、店の外で安定の30分待ち。ようやく出てきたラーメンを急いですすり、足早にイベント会場へと向かう。

会場の町田シバヒロというのは何だかよくわからない空き地というか原っぱのようなところで、フェスティバルとは名ばかりの、縁日に毛の生えた程度の屋台がそこには並んでいた。

そしてその原っぱの一角にテントがあり、よく見るとその中にチープなステージが設置されていた。

クリスマスの時期にはまだ早いとはいえ、このイベント自体が盛り上がっているようにはとても思えず、要するにこれは地元の町内会が主催しているお祭りのようなものなのだろうか。

テント内に入ると、最前列におまいつっぽい人達が7~8人。二列目以降にアイドルヲタっぽい客が10人くらい。そして後方には20人程度のアイドルとは無縁と思われる一般人がキスハグの登場を待っていた。マイナーアイドル現場ではよくある光景といえばそれまでだが、何にしても場内の雰囲気は寒々としている。

さてこのキスハグ、グループのコンセプトはズバリ「プログレッシヴ・アイドル」である。

プログレッシヴ・アイドルとはこれまた大きく出たものだが、ここでいうプログレッシヴとは「先進的な」という言葉どおりの意味ではなく、「プログレッシヴ・ロックを歌うアイドルユニット」という音楽的な意味を指している。

今やアイドルというジャンルは歌謡曲に留まらず、テクノ・ポップもヘビー・メタルもパンク・ロックもヒップ・ホップもEDMもすべて飲み込み、もはや音楽的には何でもありの様相を呈している。従ってプログレッシヴ・ロックを歌うアイドルが出現しても不思議ではないが、それにしても何という胡散臭さだろうかww

プログレッシヴ・ロックといっても一般的には、あまりピンとこないかもしれないが、音楽的な特徴でいえばギターよりもキーボードが主体で、クラシックやジャズの影響下にあり、演奏テクニックに長けていて、曲が無駄に長く、コンセプトが大仰なロックといったところか。

日本には熱心なプログレのファンが多いが、ロック史的にはプログレッシヴ・ロックの役割は大昔に終わっていて、現在では自分達の過去のスタイルを再生産するだけの「遺物」と化しているのが現実である。またプログレ好きのロックファンは年齢層が高く、頑固というか保守的な聴き手が多い。

そこでこのキスハグ、そんなプログレッシヴ・ロックに造詣の深い人達が聴いたら、マジで怒りだすか、笑い転げるかのどちらかではないだろうか(運営の人も同じことを言っていた) 。

自分は最初に観たとき、あまりの胡散臭さとアホらしさに、完全にバカ負けして笑いをこらえるのに必死だった。

中でもエマーソン、レイク&パーマーの「ホウダウン」と「悪の教典#9」を合体させたような「Progressive be-bop」という楽曲の破壊力は凄まじく、プログレッシヴ・ロックと地下アイドルの衝突によって生まれた化学反応は、今まで体験したことのない種類の衝撃(というか笑撃)だった。

そして、それが町田の原っぱの特設会場で行われているというシュールさがたまらない。

ちなみにこの曲のCDのジャケ写もELPのパロディになっているのだが(写真参照)、おそらく当のメンバー達は何にもわかっていないように思う。

偶然にもおまいつ客に知り合いがいて、その人にいろいろと現場の状況を教えてもらい、終演後にCDを購入し特典会に参加することにした。

とりあえずは全握だけにとどめておいたが、チェキ撮影会が始まると暇なメンバーがウロウロと歩き回りヲタと談笑していたりするユルさもいい。

こういう現場にいると「ああ、こういう雰囲気って久しぶりだな。最近は地下の現場に行くことも少なくなったし、たまにはこういうのも悪くないな」と思えた。

それから一週間後、今度は神楽坂のTRASH-UP!!に新曲「欝」のリリースイベントに行ってきた。

この「欝」という曲、タイトルはピンク・フロイドだが、楽曲そのものはフルートが導入されていたりして、聴きようによってはジェスロ・タルかフォーカスあたりを思わせる。また音のアンサンブルが非常によく出来ていて一聴の価値はある。

それもそのはず、自分は知らなかったが、この曲でバックの演奏を担当しているのはQuiという実力派の日本のプログレバンドらしい。

ライブハウスでも彼女達のユルさ、胡散臭さは冴え渡り、ライブ中のMCでクリスマスのライブを告知する際、「みんな、どうせクリスマスの予定とかないよね? 予定ある奴、手あげて。(ひとり挙手した人間に)予定って、おカネ払って女の子と接触するとかそういう意味じゃないよwww」というのには爆笑してしまった。

今年のクリスマスはキスハグと過ごすという展開もありかもしれない。